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第五話「人は七日食を取らずに生きてけるが、彼は一星の芸術に一秒未満と飢えている!!」


 

 金の装飾が施された黒い制服に、召喚獣との契約を示す手のひらの剣印。


 背丈は人並みよりに低い方で本人は若干気にしているらしい。

 しかし戦場で名を上げた英雄であり、原作キャラだからと忖度なしで尊敬できる人だ。

 本作では使用人や母上とは違ってしっかり登場している父上。


 特に面白かったのがフレンドシステム。

 

 主人公は旅の中で知り合った人と友達になれたり、なんなら絶縁もできる。


 基本的に人垂らしなのでクエストをクリアしていれば、他のキャラは割とあっさり友達になってくれた。

 だからこそ、しみじみと現状に味がしてくるというものだ。


 実際には召喚術に類似した契約、その関係でクロウルと友達になるのは作中ではかなり難易度が高かった。

 なにせ友情を高め合うクエストもない。冷徹な雰囲気を纏う双剣の剣士。選ぶ言葉を間違えれば二度と目の前に現れなかった厳格者。


「父上?」

「は、はい!」


 それが今や…………なぜ背筋がピンっと伸びているのだろう。

 英雄クロウルがまるで悪いことをした子供みたいだ。


「やっぱりご主人様って鈴鹿様似ですね」

「声色が一番似てるっすよね」

[髪型では?]

「坊ちゃんの髪は割とツンツンしてるけど、くしで伸ばせば瓜二つですかね?」

「……可愛い私の子よ。当たり前」


 外野はスープやらサイコロステーキやらを口に運んで呑気に絶賛しているが、はて。


「……そのね、えと……」


 しばらく食事の手を止めて目を泳がせる父上。すると母上が首を僅かに傾けた。

 これは私が説明しましょうかというジェスチャーメッセージだろうか、空気を読んだシュレイドがこほんと咳をする。


「すみません。少しよろしいでしょうか?」

「あ、ああ!何かな!?」

 ちなみに彼の輩(シュレイド)は食事時でもフルアーマーは外さぬ騎士の鏡である。


「坊ちゃんが今回お越し頂いたお方から不快な視線を受けたらしく、どなたがいらっしゃったかお聞きになっても良いでしょうか?」

「…………不快!? そ、そうか、覚えとこ。ええ、今日いらっしゃったのは四大貴族であるスターリー様の側近。名前は…………」


 名前は忘れたのか話の最後に上を向いたり項垂れ、口を布で拭く母上がこう言った。

「アラスカ」

「そう、その人が来たんだ。いつもありがとう鈴鹿」


 僕様はいつの間にか皿の上にあったトマトを口の中に運び、記憶の中からアラスカに関連する情報を引き出した。

 すると、矢継ぎ早に歪な骨董品や芸術的な壁画が心に浮かんでくる。ひとまず貴族のモデルが芸術家だからだろうか。


 原作において権力者とはいえど世界の頂点に立つ人間はいない。

 理由は簡単。

 この世界に存在する【厄災】が強すぎるからだが、現状にてこの話はいいか。

  

 けれども、ある分野にて特化した者たち。


 戦闘力において英雄には及ばないが、地位や権力では限りなく優位的なグループはある。


 例えば僕様が公共の場で「三星生徒会!四大貴族!神都探索隊!誠に遺憾だが貴様らのお役目は終わりだ!僕様が寛容に滅ぼす!!」などと叫んでみれば、ギロチンが走ってくるほど。


 この土地の所有権は父上が納めているが、その上司は四大貴族の一人だ。貴族を超えた貴族であり漏れなく変態気質がある四大貴族。

 その従者がアラスカなのだ。

 とある学園内では彼に関する文献が幾つかあり、数々の偉業をこなしてきた立役者だったりする。


「ん? アリス、お前のトマト少なくないか?」

「気のせいです」

「そうか? そうだな」


 それにここがゲームの中だとは理解しているが、ついに作中にて活躍した人物が訪れたのだ。

 心がざわめいて床から足が浮く。

 父上は父上なので、ゲームの中の人物という認識は知識程度の存在感だが。


「まあ、できれば変態とは関わりたくないな!」

「ぶふっ、けほっ、けほっ、ふはははははは!はは!げぼ!はっははははははは!」

「……………………?」


 本当に意味不明に隣で肉を吐き出すアリス。

 ハンカチで口を隠して一生懸命に抑えようとしているが、まるで止まることはない。

 なんだか仕方なく背中をゆすってやるもアリスは涙が出るほど、肩を揺らして愉快に笑っていた。


「す、すっませははははははは!!ははははははははははーっけほ、けほ」

「とにかく! 

  話を伺うにその方と何かしらの約束事をしたと!?」

 

 僕様はアリスの笑い声に負けない声を張るも、なぜか顔色が悪い本人のサムズアップは頼りなかった。

 …………なんか変なこと頼まれたなこりゃ。


「じ、実はね!!」

「はい!!」

「その!」

「はい!?」

「パーティーの誘いが来たの!!」

「本当ですか!!? やったーーーー!!!」

「誘われたのはアリスなんだ!!!」


 数秒……………食卓の音が思考を支配した。

 ピタッと肩の震えが止まるアリス。

 立ち上がるほど歓喜した挙句の予想外な展開だが「ええっとね、あと。■■■■には家でお留守番してて欲しいの!!」どうにも僕様を椅子に座らす気がない父上である。


「だからごめん!! アリスと離れ離れは寂しいよね!!」


 先ほどピタッと笑いが収まったアリスは下に俯いたままだ。

 ……………いや別にコイツと離れるのは助かります。

 ふと気づくと僕様と父上の話に耳を傾けた大半は、笑いを堪えながらご飯を楽しんでいた。


「どどドストレートおぉほほほほほ、だ、旦那様容赦ないっすね…………」

「しっ………………き、気づかれるよ。ふふははは、いやでもあんな顔する坊ちゃん久々だぁ…………」

「悪戯とかしてみたいっすよね」

「アリスちゃんが知らない誰かと恋をしていた、とか、そんな……………あ、こっちみてる」

「「……………」」


 はて、僕様の耳の良さを忘れてはなかろうか。

 どうにも母上さえハンカチで笑みをすっと隠しているが、机越しにこんな看板を真顔で掲げてくるイレイナ。


[絶対守護!]

[ご主人様、安心してください]

[お風呂とか一緒に!]

[迫り来る障害は私が徹底的に排除します]

[抱きしめる許可を!!]


 あれは別に気にしなくていいやつだからいいけど。

 すかさず「イレイナは我が愛しい息子の護衛さ!」と声を投げ飛ばしてくる父上。

 両者とも冷や汗すらかいていないのを見るに、大いに些細なことなのだろう。

 だが、なぜだ。

 パーティー内の煌びやかな装飾は眩しいけれども「僕様はダメでなんでこの”メイド失格”はいいんですかー!!」あそこはダンスも楽しいし、いるだけで心地がいいのである。


 なによりアリスご指名が解せない!!

 

「アリスのバイオリンの腕を見込まれたんだ。パーティーのダンス会場を盛り上げて欲しいんだってさ。

  しかもスターリー様直々の指名なんだよね」

 

((((((((((((((((((((((((((((((((

 

 Q アリスは凄い?

 A ない

 Q 本当に?

 A ない。でもバイオリンは毎晩欠かさず練習してる。

  

 気がつけば、夜の闇の中で頬杖をかきながら日記にそんなことを書いていた。

 時刻は夜の11時。

 部屋の中で山と積まれた本は既に読み終え、すらりとした黒猫がベットの上に倒れ込むが、どうにも撫でる気分にはなれなかった。


 ただ外で一人、風に揺られる草原の上で立つ少女が気になっている。


 空に流れるのは満月にも黄金にも負けない艶々の長い金髪。

 細い両目は夜海に沈む月の如きサファイヤ。

 肌はシルクのようで、バイオリンを真っすぐな姿勢で演奏する少女を身を包むのは村人が着るような質素な服とロングスカート。


 その凛々しい姿はいつもの馬鹿とは似ても似つかなかった。


 季節は爪先が痛くなる頃だし、風も寒いだろうし、なんで外で一人演奏をするのかわからないし、声を掛けなければ始まらないし。

 そう思っても少女が奏でる幻想的な音楽の腰を折るのには躊躇しか生まれない。


「…………誕生日プレゼントの………あのバイオリン本番も使うんじゃないだろうな…………」


 アリスは原作には登場しなかった、いうなればモブだ。

 どこかの王女様ではないし、本当のほんとに楽器の腕を練っているおっちょこちょいな専属メイドである。

 しかし結局、数時間、彼女の演奏が終わるまで座ることもできなかった。


 壁に体重を預けてペラペラと本をめくっていく。


 イメージ力の訓練に没頭していた僕様もまだ幼いし、少女の演奏はまだ粗削りで音程が外れることもしばしば。

 ただ、時間が経つごとに上達する時間はとても気持ちがよかったと思う。


 時計は午前一時を指している。


 ひと区切りついたアリスが部屋のベッドで就寝する頃、まるで怪盗みたいに窓の縁から窓の縁に飛び移っていく僕様。

 いずれ窓の開いたアリスの部屋に音もなく着地した。


「窓を閉めん馬鹿がどこにいるんだ。風邪引くぞ…………」


 呆れたため息をついて、睡眠不足を和らげる回復魔術を金髪の少女にかける。

 何百回と繰り返した習慣だ。

 月の明かりに照らされた夜はいつもこんな感じなのだ。


「世話の焼け…………、」


 それゆえに帰り際、目を見開くほど驚愕して二階の窓から落ちてしまった。

 ギラギラと怪しげな熱を帯びる両目を閉じる。

 山の出入り口に繋がる外庭、そこから這うように出てきた泥だらけの男を五感センサーが捉えていた。


((((((((((((((((((((((((((((((


「いやもーーーーちょーーさいこーーーーーー!!!!!!」


 化粧を塗り白くなった肌と長いまつげ。

 豪華だが軽いシャツとジャケット服装は長い背丈を覆い、花で飾られた船長帽子と悪そうな笑みが印象的。

 マナーは良い方で姿勢はピンとしており、紅茶をすする音は一切聞こえない。


 富と名声と力は一国を堕とすほどであり、隣に在している帝国への抑止力でもある。

 ここに滞在する理由なんて王様に借りがあるとか飯が美味いとか、難攻不落の迷宮を攻略するためとか「この国は他の国と違っていい音が聞こえるの」とか。


「そうですか」「いい音ですか?」


 時刻は朝の6時、アリスと僕様は姿勢を正してお茶を飲んでいた。

 昨夜に訪れた不審者と、である。


 あんな時間に来るなんてナンセンス。


 常識外れなのは四大貴族らしい。


 大人しく王都に拠点を構えている理由はあるけれど、自分のやりたいことをやる、が基本のスタンス。


 その領分が強いのが彼『スターリー・A・フェスタ』である。

 ちなみに、これは偽名だ。 

 原作においても本名は憶測の域を出ず、偽名の由来はたしか。


「サフラン色の船長だったっけ…………小説だったかな」

「ご主人様、なにか言いましたか?」

「寝不足でな。声が漏れるんだ」

「夜更かしはいけませんよ」

「お前がいうな!」

「ふふ、聞こえてるわ……サフラン色の船長ねぇ」


 ああ。もう勘弁して……。


「貴方も愛読してるの? そうだとしたらエクセレント! そう! 私が貴方たちに出会えたのはまるで運命! そして航海の日々だった!」


「ははははははハイ最高です!」


「ご主人様?」


 ……………一回でいいのだ。一回だけでいいから帰って欲しい。

 原作では主人公の活躍を耳にした四大貴族の一人がちょっかいをかけてくることもあったのだ。

 無論、挨拶から暴走気味でビックリ。

 なのにアリスはノリにのって身を乗り出している。それに瞼を閉じることに専心した僕様でした。


 こんなんでも武闘派なのだ、スターリーは。


 僕様の『瞳』なんて見られたら、と僅かな殺気でカップにヒビが走った。

 主人公がレベル60になっても瞬殺されていたのを思い出す。

 だがアリスが無礼な態度を取るとは思えないし、スターリーは情緒こそ不安定でも人格破綻者ではない。

 

「……」


 とにかく、戦って勝ち目はあるけど被害が大きすぎるから。

 僕様はティータイムにて応じるのみ。

 昨夜から風呂に案内させられたり、食事を一緒に作ったり、質問攻めされた苦い経験を横目で凌ぐしかないのだ。


「いやね、これは運命って感じたの。本当は自然の音を味わうために散歩してたんだけどお昼時にね……私の勘が!この方向に!!『本物の天使がいる!!』って叫んでたのよ~☆そうと決まればと三日三晩は直感に従って歩いたわ。ええ、その分私行方不明扱いだったけどそれがなにか? でも部下が余計な気を使ってきたみたいね。ごめんなさい。彼ちょっと不器用なだけなの。ああ私の傷を心配してくれてるのねありがとう。でも大丈夫よ。後始末は大変だったけど、天使ちゃんに出会えたもの!!!!!」


「はえー」


 懸念点があるのか馬鹿なのか、アリスは自分のことを天使ちゃんだと言われてピンと来てないらしい。

 …………音楽を嗜む者なら卒倒するのが普通だぞ。

 途中、うちの酒泥棒が出した紅茶を忘れて目をぱちぱちさせていたアリス。

 

「失礼。坊ちゃん、なにか出した方がいいっすか?」

「帰れ。かえって寝ろ」

「き、機嫌直してくださいっすよ。昨日一人っきりで話を任せたのは謝りますから」


 さて、話の脱線は戻った。

 近くで待機しているライオットは小指程度の増援にはなるが、スターリーの目的が大体読めてきたので僕様は待つだけだ。

 

「貴方のバイオリンを聞いて私ときめいちゃった☆ という訳で! ■■■■ちゃん、アリスちゃんに演奏を任せてもらっていいかしら?」

「本人確認」「え、拒否できるんですか?」

「できる! けどそうねえ、これを機にアリスちゃんには将来的に私が運営する学園に来てほしーの!! 天空都市って言えばわかるかしら!?」


 …………昨夜から興奮談のマシンガンを飛ばされて一睡もできてないのだ、僕様は。

 でも初めてみるアリスの表情で目が覚めた気がした。

 

(((((((((((((((((((((((((((((((


 なんてことがあって、少し考えるふりをしたアリスは了承した。

 四大貴族が辺境まで訪れオファーをするのは史上初。

 あの”スターリー様”の招待となれば港が騒ぐ騒ぐ、となるわけで一応の処置を条件とした。


『スターリー様の招待、という名目は伏せてください。嫉妬に狂った人間になんやかんやされるのは避けたいので。あと、』

『ふむ、んーーーっおっけーー!! みんなに伝えとくぜ! じゃあ握手しよ!■■■■ちゃん!』


 スターリーが僕様に欲しかったのは”了承”と”握手”らしい。

 なぜ握手と考えても判らなかったので保留。

「じゃあクロウル、鈴鹿、ライオット、イレイナ、シュレイド、■■■■、アリスちゃんを借りてくわね~~~!!」


 パーティーの舞台裏にまで続く馬車に足をかけるアリス。

 馬車の内部は天井も壁も床も派手だ。眩しくてたまらないので右手で両目に影を作っておく。

 …………そのつもりだったけれど。


「おい」


 アリスの見た目は、まあ貴族のお嬢様がハッとするくらい綺麗だと思う。

 …………開いた瞳は硬直したままだが。

 常に気丈に振舞ってはいる。だが内心緊張で一杯らしいので、万人の視線より強く一言一言に力を入れてこういった。


「お前はどこまでいっても能天気な間抜けだ。

  皿は割るし、洗濯は下手。人一倍努力して他人と同程度だ。舞台で失敗して、けなされたらとか怯えるなら今降りろ」

「…………」

「だが行くなら何があろうとお前が全力で楽しめる状況を作ってやる」


 じゃあな、と加えてその場から去る。

 少女の答えは知らないし逃げたのか気合入ったのか、もしかしたら言い過ぎたかなとも思った。

 やがて……………………一斉に、である。


「ご主人様かっけえっす」

「でも、もっと小さい声でいうべきだったわ」

「坊っちゃん抜け出す気満々ですね」

「あ、危ないから!! さ、最近は”魔女の使徒”が暴れてるからホント止めて!!人混みだと心配だからやめて!!■■■■お願いね!アリスの安全は保証するから!!」

「…………」


 アリスを見送った父上たちは肩に手を置いてきたり、頭を優しく撫でてきたり、滝みたいな汗を拭ったり、圧のかかった視線を向けてきた。

 まさに”お願いだから此処にいて”といわんばかりだ。


「……」


 とりあえず安心させるように落ち着いた笑みをつくった。

 皆から数歩離れてくるくると回る僕様。

 また晴れ晴れとした空にかざした手を、まるで空気を掴むように握ったのだ。


「いい天気には遊びたくないか?鬼ごっこしよう。イレイナ」


 まもなく柔らかな息が漏れる音がした。

 旅行中にふと家のガス栓を閉め忘れたことを思い出して、頭が白紙になる感じ。

 視線だけで人を射止める氷の国のお姫様みたいなイレイナだが、


「鬼役な、お前」


 今回ばかりは肝が冷えるほどの速度で手を伸ばしてきた。

 だが、その手が届くことはない。

 天に伸ばした掌にはB級冒険者を示す権利紙がくしゃりと握られている。


 すると空の模様が変わっていた。


 漫画のコマ跳びみたいに。


 それ故に。

 

 屋台でじゅうじゅうと肉を焼く音がした。

 歩音やらで脳内に流れる音楽をリズミカルに変えてくる。

 レンガ造りの白塗り家。

 人が通った影響で傷ついた地面のタイル。

 老若男女が溢れんばかりにごった返す商店街。

 鼻腔では嗅いだことのない植物を楽しんだ後、親しみのない人の匂いを遮断した。


 喉奥から愉快が溢れて足の力が抜けていく。


 閉じた瞼は光を刺す路地裏を映しており、心臓がスキップするように脈拍していく。

 まるで初めて理科の実験に成功した瞬間のようだ。

 しかしイレイナの奴め、今頃どんな恐ろしい顔をしているのだろうか。

 

「くく、くはははははは!!!」

 

 踵が弾けるように歩き出した。

 転移に合わせて頭から被っていた灰色のローブが、浮くほどの風が吹き上がる。

 まるで心すら舞うように路地裏から人混みに紛れていく僕様。


 此処は道姫都クリザリア。

 アリスの初舞台となるホールはここにある。


 無論、屋敷の奴らはここにはいない。

 ここは暴力と音楽の街から、馬車で三日かかる距離に在した大都市なのだ。僕様の元へ瞬間移動できる人もいない。


「原作で使ったことあるけどこれがB級冒険者の特権その一か、いいなー、いいなー!あははははははははは!!」


 八歳の誕生日で受け取ったB級冒険者認定書。


 潜った経験のある迷宮の近くに転移することができる優れものは、気付かぬうちに浮き足を立たせてくる。

 冒険者気取りで木剣を振っていた二人の少年や、子供を肩車した大柄の男に留まらず、僕様は物珍しい目を集めていた。


 …………秘密道具の使い方はこうでなければ。


 しかしこれは片道切符である。

 ご注意ご注意。

 乱雑に扱うと痛い目を見るので本当に使ってこなかったのです、今までは。

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