第6話 遊びと
程なくして私たちは外へ出かけた。平日の日中。だが、私は私服で隣には大学生くらいの男性。ちょっと童顔の女子大生とでも思われるだろう。
「平日に遊びに出るなんて悪い事してる感があってちょっと気分がいいですね。」
「そんなこと言うのなら学校に行けばよかったのでは?」
「ふふ、忘れてますか?私は今家出中の非行少女でついでに言えば学校の荷物なんて制服含めて全て家に置いて行ってしまいました。それなのに学校行ったところで意味はないでしょう。」
「それもそうですね。では、本日は何をお望みで?」
何をして遊ぶか。そんな事考えていなかった。
「そうですね、カラオケとかクレーンゲームとかして時間潰したり、映画もいいかもしれませんね。」
「随分と等身大の女の子のような要望ですね。」
そう答え微笑んだ彼の顔は一瞬だけ酷く哀しそうに見えた。
彼との遊ぶ時間は過ぎるのが早かった。でも、彼の行動の節々に兄の影を感じてしまった。だからだろうかまだ終わりたくないと思うのは。だからだろうか、居心地の良さを感じるのに胸が痛いのは。
「私、初めてだったんです。こんな一日中遊んだりするの。」
「そっか。」
「それだけですか、結構深刻な告白だと思うんですけど。どうしてとか聞かないんですか?」
「僕からは何も言えないので。それに聞いたところで何かが変わるわけでもないでしょうに。」
そうだ。これはただの自己満足だ。紡ぐ言葉に中身はないし、そこに詰まっているとするならば自分に対する諦観と否定だけだ。
「けど、僕は貴女の笑う顔を見るのは悪くなかったですよ。」
「ぷっ。なにそれ、口説いてます?」
「まさか、僕は貴女を通して、いえなんでもありません。」
ああ、この人も同じなのか。今ので理解した。彼は私だ。きっと私たちは出会ってはいけなかったのだろう。だからこそ私は言わないといけない。
「私は貴方を通して兄を見ていました。きっと貴方も同じなんですね。」
彼の待とう雰囲気が変わった。冷たく、諦めに満ちたモノに。
「貴女が答えたなら僕も、いえ俺も答えなければいけない。俺は君を通して妹を見ていた。」
「やっぱり、私たちはお互いに代わりでしかないんでしょうね。互いに都合のいい幻想を見るためのフィルターでしかないようです。」
「怒らないんですか?」
「私に怒る権利があるとでも?自分がしている事で相手を怒ろうなんて意味わからないでしょう。」
そうだ、私に怒る資格なんてない。私は彼を兄の代わりとして見て勝手にそういう役割を自分の中で押し付けた。そんなことをしている人間が誰かを非難するなど間違っている。
「それにしても私は兄を」
「俺は妹を」
「お互いに役割を押し付けていたと考えると愚かですね。そんなことをしても虚しいだけなのに。」
そうだ、そんなことをしても本物は手に入らない。こんなことに正しさなんてない。でも、
「それでも、都合がいいでしょ。お互いにとって。」




