ヘルシア:プリフィカツィオーネ
初めまして、作者です。
この物語は、ジャカルタを舞台にしたダークファンタジーです。
楽しんでいただければ幸いです。
第一話:カジノの台での静脈切開
この部屋の匂いは、冷や汗、高い葉巻、そして熱せられた硬貨の鉄の臭いが混ざっている。カジノ「ルクスリア」は、ジャカルタの高級ホテルの地下三階にある。ここには窓がない。緑色のカジノ台を照らすクリスタルのランプがあるだけだ。台の上では、紙幣と硬貨が素早く動いている。しかし、エンヴァ・エラリーに見えているのは金だけではない。彼は、部屋にいる全員の首に巻き付いている黒い糸を見ている。
エンヴァが入ってきた。彼の髪は真っ黒で、青白い顔の一部を隠すほど重そうに垂れている。彼の歩みは遅い。部屋の中央には、違法な貸し付けで数千人の人生を壊したマネーロンダリングの加害者、ブラマンティョが座っている。
ブラマンティョは笑っているが、その声は壊れた機械のようだ。彼の腹は不自然に膨らんでいる。シルクのシャツから突き出た腹の皮膚は薄く、透けている。その皮膚の裏側で、鋭い何かが動き回り、内側から筋肉の組織を引き裂いている。
「ブラマンティョ」エンヴァは無機質な声で言った。
ブラマンティョが振り向いた。彼の目は血管が切れて赤い。「誰だお前は?ここから出て行け!」
エンヴァは止まらない。二人の大柄な用心棒が彼に襲いかかった。エンヴァは避けない。彼は突然カミソリのように鋭くなった自分の爪で、左手首の静脈を切った。
シュッ!
黄金の血が噴き出した。その血は熱く、粘り気がある。血は床に落ちず、レーザーの鞭のように伸びた。エンヴァが手を振ると、黄金の血が二人の用心棒の足を切り裂いた。彼らは筋肉に光る火傷を負って倒れた。
その脅威を見て、ブラマンティョの腹の中にいるMAU(金の悪霊)が反応した。ブラマンティョの腹が突然内側から破れた。赤い血ではなく、数千の鋭い銀貨と黒い液体が吐き出された。
その開いた腹の穴から、二メートルの怪物が現れた。その体は皮膚のない赤い筋肉の束でできており、ナイフのように硬くて鋭い紙幣の層で覆われている。顔には目がなく、額の中央には回転し続けるスロットマシンのような大きな穴が開いている。
MAUは驚異的な速さでエンヴァに向かって跳んだ。金属の破片でできた爪を持つ怪物の手が、エンヴァの胸に向かって振られた。
エンヴァは後ろに跳んだが、金属の爪が彼の肩をかすめた。傷口からは赤い血ではなく、黄金の蒸気が出た。エンヴァは痛みに声を漏らした。彼は静脈にエネルギーを集中させた。
「お前は命を食べ過ぎた」エンヴァが言った。
エンヴァは前に突き進んだ。彼は怪物の金属の腕を掴んだ。人間の皮膚と熱い金属が擦れる音がした。MAUは黄金の針の破片でできた牙でエンヴァの首を噛もうとした。エンヴァは素早く右肘を怪物の顎に叩きつけ、それを硬貨の破片に変えて粉砕した。
怪物は叫んだ。その声は数千の硬貨がコンクリートの床に落ちる音のようだった。それは自分の尾を振った。それは人間の脊椎を銅線で巻いたものだった。尾がエンヴァの脇腹を直撃し、彼はカジノ台に叩きつけられた。
紙幣が散らばった。エンヴァは咳き込み、口から黄金の生命のエッセンスを吐き出した。彼は右手の静脈が激しく腫れ始めているのを見た。すぐに終わらせなければならない。
エンヴァは素早く立ち上がった。MAUが再び襲いかかってきたとき、エンヴァは避けなかった。彼は怪物の左手が自分の右手のひらを貫通するのをあえて許した。
「捕まえたぞ」エンヴァは囁いた。
手が突き刺さった状態で、エンヴァは怪物の腕を強く掴んで逃げられないようにした。彼は左の静脈から出た残りの黄金の血を、怪物の額にあるスロットの穴に直接流し込んだ。
「プリフィカツィオーネ(浄化)!」
その接触点から黄金の光が爆発した。MAUは激しく痙攣した。皮膚を作っていた紙幣が燃えて剥がれ落ちた。肉に埋め込まれていた金属は溶け、聖なる黄金の液体となって床に滴り落ちた。エンヴァは怪物の核心である、脈打つ銀貨の心臓を無理やり引き抜き、粉々に握りつぶした。
怪物は崩れ去り、錆の臭いがする黒い煙となって消えた。腹が裂けたままのブラマンティョは、意識を失いかけて床に倒れた。
エンヴァはその前に立った。息が荒い。穴の開いた彼の右手はゆっくりと閉じ始め、黄金に光る傷跡に変わった。彼の黒い髪は一センチほど伸びていた。これは生命力が大きく削られた証拠だ。
エンヴァは黒い液体の中で死にかけているブラマンティョを見つめた。この瞬間、現実が遅くなった。空気中に「ニュートラル・ルーム(中立の織機)」の光の線が現れた。
「ブラマンティョ」エンヴァは冷たい声で始めた。「浄化は完了した。お前の寄生虫は消えたが、お前はもう戻れない。三つの選択肢がある」
ブラマンティョは残った力でエンヴァを見た。
「一つ目、今すぐ死ぬことだ。お前の体はお前の罪の価値に応じた金に変わる。お前は塵となって消え、お前を知るすべての人はお前の存在を忘れる。お前に関する記憶は完全に消去される」
ブラマンティョは、自分の存在が消える恐怖に震えた。
「二つ目、プルーフェン(試練の地)で永遠の後悔の中で生きること。お前は残りの人生を、自分が壊したすべての人を思い出しながら完全な孤独の中で過ごす」
「三つ目、私の奴隷になることだ。お前の魂は『証人の硬貨』に入り、他の人間を浄化する私の手助けをする。任務が終われば、お前は安らかに死ぬことができる」
ブラマンティョは周囲に散らばる金を見た。彼は愛する妻と子供を思い出した。しかし、彼らの贅沢が他人の命から来ていることに気づいた。自分が犯罪者として生きることで、彼らに恥をかかせたくなかった。
「私は……怪物として覚えられたくない」ブラマンティョは囁いた。「私を消してくれ」
エンヴァは頷いた。彼はブラマンティョの額に手のひらを置いた。「受け入れた」
直後に、ブラマンティョの体は崩れ始めた。骨と肉が砕け、十万ルピア紙幣の山と数千の黄金の硬貨に変わって床に落ちた。十秒後、彼の姿は消えた。残ったのは血生臭い金の山と、空へ飛んでいく白い塵だけだった。
ある豪邸では、机の上の結婚写真が突然真っ白な紙に変わった。座っていた妻は、目の前の椅子に夫が座っていたことをもう覚えていなかった。
エンヴァはブラマンティョのエッセンスの残りである一枚の銀貨を拾った。突然、部屋の温度が下がった。腐った死の臭いが漂ってきた。
「優しすぎるぞ、エンヴァ」影の中からマクセンの声がした。
エンヴァは振り向かない。「彼は選んだんだ」
「彼は苦しみから逃げただけだ」マクセンが黒いスーツ姿で現れて答えた。彼は床から紙幣を一枚拾い、それを握りつぶして黒い膿を出した。「次の標的は用意してある。彼は選択する暇もないだろう。お前が着く前に、私が彼を闇の中で粉砕してやる」
マクセンは冷たい笑い声を残して消えた。エンヴァは静かなジャカルタの雨の中へと歩き出し、さらに重くなった黒い髪の重みを感じていた。
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