第5話 気になってしまう理由
第5話 気になってしまう理由
学園祭が終わって数日。
陽は、講義のたびに小鳥遊ひよりの姿を探すようになっていた。
(……ひより)
その名前を見たとき、
胸の奥が一瞬だけざわついた。
(同じ名前……でも)
陽の記憶にある“ひよりちゃん”は、
夕方の校庭で笑っていた明るい子だ。
今の小鳥遊ひよりは、
静かで、控えめで、
声も小さい。
……別人だよな)
思おうとしたのに、
胸のざわつきは消えなかった。
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講義後
「あ、小鳥遊さん」
陽が思わず声をかけていた。
ひよりは驚いたように振り返る。
「……春川くん?」
その声の響きが、
陽の記憶の奥をかすかに揺らした。
(……似てる。誰かに)
でも思い出せない。
________________________________________ひより視点
(名前……覚えてるよね、はるくん)
(でも、気づかれたくない)
ひよりは胸が苦しくなった。
陽の声は、
昔と同じで、
優しくて、
ひよりの心を簡単に揺らしてしまう。
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(陽視点)
(小鳥遊ひより……)
(名前も苗字も同じ。でも……違うよな)
陽は自分に言い聞かせるように歩いた。
(
でも……なんでこんなに気になるんだろ)
答えはまだ出ない。
でも胸の奥で、
ずっと眠っていた記憶が少しずつ動き始めていた。




