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春の陽とことり  作者: きの子ちゃん


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2/15

第1話②再会


再会(陽視点)

メイクが終わると、陽は鏡の中の自分を見て固まった。


「……誰だ、これ」


「春川くんだよ! めっちゃ可愛い!」


演劇部の女子たちは大盛り上がりだ。

陽は苦笑いを浮かべるしかない。


ひよりは少し離れた場所で、

陽の姿を見てそっと目を伏せた。


(……似合ってる。けど、大丈夫かな)


そんな心配を胸にしまい込みながら、

ひよりは衣装の裾を整えるふりをして距離を保った。


やがて本番が始まり、

陽はライトの中へ押し出される。

眩しさに目が慣れないまま、

歩いて、笑って、

気づけば出番は終わっていた。


幕が閉じた瞬間、陽は大きく息を吐く。


「お疲れ! 春川くん、ほんと可愛かった!」

「写真撮ればよかった〜!」

「ねえ、うちの部入らない? 女役いけるよ!」


まただ。

また“押し”が始まる。


「いや、その……今日だけって……」


「えー、もったいないって!」

「絶対向いてるよ!」


陽は曖昧に笑う。

断りたいのに、強く言えない。

そのときだった。


「……私は、反対……かな」


静かな声が、輪の外から落ちてきた。

ひよりだった。


強くもない。

きつくもない。

ただ、柔らかくて、でも芯のある声。


「春川くん、困ってるよ」


その一言で、空気がふっと止まる。


「え、そう? 春川くん、困ってる?」


「……まあ、ちょっと……」


陽が苦笑いすると、

ひよりはほんの少しだけ目を細めた。


「……嫌なら、断っていいと思うよ」


その言葉は、陽の胸にすっと入ってきた。


「あ、うん。やっぱり……入部は遠慮しとくよ」


「そっかー、残念! でも今日はありがとう!」


演劇部の輪が解けていく。

陽はほっと息を吐いた。


「……助かった。小鳥遊さん、だよね?」


声をかけると、ひよりは一瞬だけ肩を揺らした。


「……うん。気にしなくていいよ」


それだけ言って、ひよりは少し距離を取る。


(……なんでだろう)

陽はひよりの横顔を見ながら思った。


(名前を呼ばれたとき……なんか、懐かしい感じがした)


でも、その記憶にはまだ手が届かない。



(ひより視点)

陽が「助かった」と笑った瞬間、

ひよりの胸はぎゅっと締めつけられた。


(……変わってない)


困ったときの笑い方も、

断れなくて曖昧になるところも。


(気づかないよね。私のこと)


陽の視線は、ひよりを素通りする。

それが少しだけ痛い。


(でも……助けたかったから)


好きだった気持ちは、

時間が経っても消えていなかった。


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