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ダンジョン・デバッガー清掃員 〜世界の不具合を修正してたら神の領域に到達しました〜  作者: やはぎ・エリンギ


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第7話 邪魔なモブ

 東京ダンジョン中層。

 ダンジョン配信者レイヴンのカメラは、赤いランプを点けたまま宙を漂っていた。


『さあ来ました! 本日のメインイベント!

 登録者二百万突破記念、バグモンスター討伐!』


 派手な防具、誇張された身振り。

 視聴者数はすでに十万を超えている。


「っと……おい、なんだよあれ」


 画面の隅に、作業服姿の男が映り込んだ。


『は? 誰?』 『邪魔なんだけど』 『モブ入ってきたw』


 レイヴンは露骨に顔をしかめる。


「おい兄ちゃん、配信中なんだけど?

 どいてくれない?」


「……清掃中ですので」


 カイはそう言って、モップで床の汚れを拭いていた。


『清掃員www』 『ここダンジョンだぞ?』 『モブの自覚ないの草』


 レイヴンは鼻で笑い、視線を前に戻す。


「よし、気を取り直して――来い!」


 現れたのは、紫のノイズを纏う巨大なバグモンスター。

 攻撃が放たれる。


 ――通らない。


「……え?」


 剣も、魔法も、必殺技も。

 すべてが、触れた瞬間に無効化される。


『ダメージ0!?』 『無敵じゃね?』 『フラグ立ってるだろこれ!』


 レイヴンの声が裏返る。


「お、おい! どうなってんだこれ!」


 パニック。

 コメント欄は荒れ、視聴者数だけが増えていく。


 その横で、カイは静かに首を傾げた。


「……観測、されすぎですね」


「は?」


 カイは近づき、宙に浮かぶ配信用カメラに手を伸ばした。


「ちょ、なにすんだよ!」


 だがカイは、無言でレンズを雑巾で拭いた。


 視界が一瞬、白くなる。


「……あ」


 紫ノイズが揺らいだ。


「無敵フラグ。

 “常に見られている”前提で固定されてました」


 カイはモップを置き、掃除機を構える。


「観測者の認識エラーですね」


 次の瞬間。


【SYSTEM LOG】

【無敵フラグ:解除】


 攻撃が――通った。


 バグモンスターは崩れ、核が露出する。


「……え、えええ!?」


 吸引音。

 紫の光が消え、ダンジョンは静まり返った。


 配信コメントは、爆発した。


『今の何!?』 『清掃員が直した!?』 『神業じゃん!!』 『邪魔なモブどころじゃねぇ!!』


 炎上と称賛が同時に巻き起こる。


「お、おい兄ちゃん! 今の――」


 カイはすでに背を向けていた。


「レンズ、汚れてましたよ」


 それだけ言って、次の現場へ歩き出す。


 その夜、配信は切り抜かれ、拡散され、伝説になった。


 だが本人は、

 いつも通り用務員室で掃除機を充電していた。


「……今日も、汚れましたね」


 世界修正率が、ほんの少しだけ上がる。



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