第75話 危険手当
東京ダンジョン管理局・会議室。
巨大モニターに企業ロゴが並ぶ。
探索者スポンサー企業の代表たちが集まっていた。
「清掃員の危険手当は高すぎる」
「探索者の利益を圧迫している」
「削減するべきだ」
資料が映る。
清掃員危険手当:削減案
リサ・カミシロが机を叩く。
「ふざけないで」
ナカニシ・コウイチが椅子に寄りかかる。
「現場見たことあるんか?」
企業代表が笑う。
「掃除でしょう?」
「探索者ほど危険じゃない」
その瞬間。
会議室のモニターが乱れた。
数字が暴走する。
【SYSTEM LOG】
【Corporate Server : Overflow Detected】
企業代表が慌てる。
「何だこれは!?」
株価表示。
売上データ。
顧客情報。
すべて桁が狂い始める。
売上
999999999999
負債
-999999999999
ナカニシが笑う。
「来たで」
リサ。
「タイミング良すぎ」
カイ・シノハラは端末を見る。
【SYSTEM LOG】
【Financial Data : Overflow】
「数値処理が破綻しています」
企業の技術者が叫ぶ。
「止めろ!」
「サーバーが落ちる!」
データセンターが赤く染まる。
企業代表がカイを見る。
「直せ!」
カイ。
「清掃員の仕事ですね」
リサが腕を組む。
「掃除でしょ?」
企業代表が黙る。
カイは掃除機を起動する。
サーバーデータ層。
暴走した数値データを吸い込む。
ゴォォォ……。
【SYSTEM LOG】
【Overflow Data Removed】
カイはモップを床に当てる。
「データ型変更」
【SYSTEM LOG】
【INT → LONG】
数値が安定する。
モニターが正常に戻る。
企業代表たちが息をつく。
沈黙。
リサが言う。
「で?」
「掃除は危険じゃないって?」
ナカニシが笑う。
「ほな手当カットするんか?」
企業代表は言葉を失う。
カイは掃除機を背負う。
「作業終了です」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】
会議室の資料。
危険手当削減案は、
静かに画面から消えていた。




