第72話 削除された項目
東京ダンジョン管理局。
探索者用安全マニュアルの更新が行われていた。
リサ・カミシロは端末を操作していた。
「……ん?」
スクロールを止める。
目次。
・モンスター対処
・崩落対応
・毒ガス処理
リサの眉が動く。
「カイ」
「これ見て」
カイ・シノハラが端末を見る。
探索者用安全マニュアル。
だが、ある項目がない。
本来あるはずの章。
「清掃員対応」
カイ。
「削除されています」
リサ。
「ありえないでしょ」
探索者マニュアルには必ず書かれている。
「清掃員の指示に従うこと」
それが消えていた。
リサがログを開く。
【SYSTEM LOG】
【Document Edit History】
更新履歴。
削除操作。
リサの指が止まる。
「……これ」
編集ID。
管理局職員ではない。
政府管理アカウント
ナカニシ・コウイチが端末を覗く。
「おいおい」
「えらい大物やん」
削除された文。
カイが復元する。
そこにはこう書かれていた。
> 清掃員はダンジョン構造およびバグ処理の専門職である。
探索者は必ず指示に従うこと。
リサ。
「これ消したらどうなるか分かってる?」
ナカニシ。
「探索者が勝手する」
カイ。
「事故率が上がります」
【SYSTEM LOG】
【Risk Projection : +38%】
リサが腕を組む。
「わざとね」
「清掃員の権限を弱めてる」
ナカニシが笑う。
「政治やな」
カイはマニュアルを静かに修正する。
削除された章を戻す。
【SYSTEM LOG】
【Manual Restored】
リサが言う。
「ログ残ってるんだから」
「隠せないわよ」
ナカニシ。
「上の連中、焦るで」
カイは掃除機を背負う。
「現場は」
「マニュアルより現実で動きます」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】
東京ダンジョン。
探索者マニュアルの
消された一章は、
静かに元へ戻った。




