第65話 事前連絡しろって言ってんの!!
東京ダンジョン管理局・用務員室。
カイ・シノハラは、いつも通り掃除機の充電をしていた。
【SYSTEM LOG】
【Void Eater : Charging 83%】
コーヒーを一口。
雑巾を畳む。
平和な朝。
――そのドアが、勢いよく開いた。
「カイ!!」
リサ・カミシロだった。
保護メガネはズレ、髪は跳ね、完全に戦闘モード。
「聞いてない!!」
「何の話ですか?」
「本部よ!!」
リサは端末を突き出す。
【SYSTEM LOG】
【Maintenance Schedule Updated : 10 Minutes Ago】
【Cleaner Assignment Changed】
「現場変更!」
「装備制限!」
「薬品搬入ルート再構成!!」
「全部“さっき”決まったってどういうことよ!!」
カイは静かに読む。
「……本当ですね」
「作業開始五分前の仕様変更です」
リサ、机を叩く。
「だから言ってんの!!」
「次やったらぶん殴るから!!」
「や・る・前・に!!」
用務員室の壁が震えた。
廊下の探索者が一斉に立ち止まる。
カイ。
「リサさん、落ち着いてください」
「落ち着けるわけないでしょ!!」
「こっちは命かけて清掃してんの!」
「デバッグ現場で“サイレント修正”とか正気!?」
その時、奥のロッカーから声。
「笑わしてもろたで〜」
ナカニシ・コウイチ。
たわしを肩に乗せて出てくる。
「関西やったらな」
「事前連絡なしは戦争や」
リサ、即指差し。
「でしょ!?」
ナカニシ。
「普通、根回し三回は入れる」
カイは静かに頷く。
「現場に通知なしで仕様を変えるのは」
「清掃効率を42%落とします」
【SYSTEM LOG】
【Operational Trust : Degraded】
リサ。
「ほら!!数値で殴られてんじゃない!!」
管理局スピーカーが鳴る。
『えー、急で悪いんだけど……』
リサ、即割り込む。
「悪いって思うなら先に言いなさいよ!!」
沈黙。
数秒後。
『……すみませんでした』
リサは腕を組む。
「次からは事前共有」
「三日前」
「最低でも前日」
「破ったらグーパン」
ナカニシ。
「実費請求もな」
カイ。
「あと、報告書二倍です」
【SYSTEM LOG】
【Rule Added : Pre-Notice Mandatory】
リサは深く息を吐く。
「……よし」
「これでいい」
そしてカイを見る。
「ごめん、怒鳴って」
少し間を置いて。
「……にゃん」
カイ。
「いえ。正しい怒りです」
ナカニシ。
「ほな仕事戻ろか」
三人はそれぞれ装備を取る。
今日も世界は散らかっている。
でも、
現場のルールは一つ増えた。
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Standby】




