第60話 未対応フォーマット
最初に降ってきたのは、光だった。
東京上空。
雲を裂くように、巨大なリング状構造体が出現する。
街が止まる。
警報。
悲鳴。
【SYSTEM LOG】
【Unknown Entity Detected】
【Format Type : Unsupported】
空間が歪み、無数の発光体が地表へ降下する。
探索者たちが武器を構える。
魔法詠唱。
スキル展開。
――全部、弾かれた。
【SYSTEM LOG】
【Attack Rejected】
【Damage Calculation : NULL】
「効かねぇ!?」
発光体は人の形をしていない。
概念も質量も曖昧。
触れた建物が“抜け落ちる”。
存在ごと削られていく。
リサが叫ぶ。
「これ、モンスターじゃない!」
ナカニシ・コウイチが歯を鳴らす。
「世界の規格外やな」
カイ・シノハラは静かに端末を見る。
【SYSTEM LOG】
【External Protocol Invasion】
【Local Physics Not Applied】
「この世界の仕様で処理できません」
「未対応フォーマットです」
地下中枢。
現実変換レイヤーが赤く点滅している。
【SYSTEM LOG】
【Reality Parser : Overflow】
発光体は“敵”じゃない。
ただ、違う規格で存在しているだけ。
リサ。
「つまり?」
カイ。
「向こうは悪意すら持ってません」
「踏んでるだけです」
ナカニシ。
「宇宙版バグ侵入か」
「アホくさっ」
カイはバケツに水を汲む。
床へ流す。
水面に浮かぶ、異常座標。
「存在形式を書き換えます」
モップを構え、座標ラインを拭き取る。
【SYSTEM LOG】
【Entity Format Conversion Initiated】
発光体が揺れる。
輪郭が生まれる。
質量が発生。
“当たり判定”が生成される。
リサが即座に動く。
化学散弾。
浄化薬剤。
連続射撃。
発光体が崩れ落ちる。
ナカニシがたわしを蹴る。
回転したブラシが核構造を破壊。
「ほな、さいなら」
残骸を掃除機が吸い上げる。
ゴォォォ……。
【SYSTEM LOG】
【External Entities : Cleared】
空が元に戻る。
街が再起動する。
人々は呆然と立ち尽くしていた。
リサが言う。
「侵略とかじゃなくて」
「仕様違いで世界壊されるとか、迷惑すぎ」
ナカニシ。
「宇宙人もマニュアル読めや」
カイは掃除機を背負う。
「異文化交流は」
「事前にフォーマット確認が必要です」
リサ。
「覚えときなさい」
「次来たら入国審査からやるから」
「……にゃん」
【SYSTEM LOG】
【Planetary Integrity : Stable】
【Cleaning Complete】




