第55話 スコア0.2
街に、数字が浮かび始めた。
人の頭上に。
白い半透明のフォントで。
【PERSONAL VALUE : 87.3】
【PERSONAL VALUE : 54.1】
【PERSONAL VALUE : 12.8】
探索者ギルド前。
人々は互いの数値を見比べ、ざわついていた。
「俺、90超えてる」 「マジかよ、勝ち組じゃん」
カイ・シノハラの頭上。
【PERSONAL VALUE : 0.2】
通行人が吹き出した。
「0.2!?」 「バグだろそれ」 「清掃員ってそんな価値低いのかよ」
笑い声。
スマホが向けられる。
誰かが呟く。
「存在価値ゼロじゃん」
リサ・カミシロが眉をひそめる。
「……数字で人間測ってんじゃないわよ」
ナカニシ・コウイチが肩をすくめる。
「アホくさっ。点数つけて安心する社会やな」
【SYSTEM LOG】
【Human Scoring System : Activated】
【Value Index Sync : 100%】
街の巨大スクリーンにランキングが表示される。
S級探索者
有名配信者
ギルド幹部
上位はキラキラしていた。
下位は、誰も見ない。
【Cleaner Kai Shinahara : Rank 184,233 / 184,234】
ほぼ最下位。
カイは落ちていた空き缶を拾いながら言う。
「評価が、自動集計されています」
「行動ログ、SNS反応、経済貢献、戦闘実績」
「……全部数値化です」
リサ。
「つまり?」
カイ。
「役に立つ人間だけ残す設計です」
地面に走る淡い回路。
【SYSTEM LOG】
【Social Priority Kernel : Active】
ナカニシがたわしを蹴る。
バシュッ。
近くの監視ドローンが落ちる。
「人間を点数で仕分けるとか」
「どんなクソ仕様やねん」
カイはモップを構造核に当てた。
「価値参照元……ここです」
床に刻まれたアルゴリズム。
“評価=存在”
カイは静かに拭き取る。
【SYSTEM LOG】
【Value Pointer : Nullified】
一瞬、街が白く瞬いた。
数字が消える。
ランキングが崩れる。
人々は自分の頭を触る。
「……あれ?」 「点数、消えた?」
スクリーンがブラックアウト。
【SYSTEM LOG】
【Human Scoring System : Terminated】
沈黙。
リサが腕を組む。
「ほら」
「数字なくなったら、ただの人間でしょ」
ナカニシ。
「低スコアほど、街支えとるんやで」
誰も返事しなかった。
カイは掃除機を背負う。
「評価は、汚れやすいです」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】
リサが小さく言う。
「……0.2でも、十分すぎるわ」
「……にゃん」




