第53話 娯楽無限複製
街の大型スクリーンが、同じ映像を流し続けていた。
笑い声。
拍手。
同じ台詞。
一時間後。
誰も笑っていなかった。
【SYSTEM LOG】
【Entertainment System : Infinite Duplication】
娯楽データが無限複製され、価値が消失。
「またこれかよ……」
通行人が呟く。
動画、音楽、配信。
全部同じ。
違いが消え、刺激が死ぬ。
リサが画面に向かって言う。
「量産すれば面白くなると思ってんの?」
ナカニシが鼻で笑う。
「アホくさっ。笑いまで工場製やな」
カイは掃除機《虚無を喰らう竜》を起動。
ゴォォォ……。
複製ログが吸引される。
【SYSTEM LOG】
【Duplicate Cluster : Locked】
だが再生が止まらない。
同じ動画が再生成される。
カイ。
「複製元が停止していません」
リサ。
「根っこ叩けばいいのね」
ケミカルショットガン発射。
制御回路を溶解。
ナカニシが残留データをたわしで蹴る。
「ほな、消えとき」
カイが吸引強化。
【SYSTEM LOG】
【Replication Core : Destroyed】
スクリーンが暗転。
数秒後。
街に自然音が戻る。
誰かの笑い声。
違う笑い方。
別の声。
リサ。
「やっと人間っぽい」
【SYSTEM LOG】
【Entertainment System : Restored】
裏ログが変化。
【SYSTEM LOG】
【World Entertainment Access : Granted】
カイは掃除機を背負う。
「複製は、便利です」
「でも、残るのは本物だけです」
ナカニシ。
「ほな、さいなら」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】




