第52話 教育オーバーフロー
教室の時計が止まった。
いや、止まったのは思考だった。
黒板に書かれた数式が、ただの模様に変わる。
「……読めない」
教師が呟く。
教科書は白紙。 タブレットは応答なし。
【SYSTEM LOG】
【Education System : Overflow】
街中の学習端末が沈黙した。
知識データが飽和し、参照不能。
覚える前に、溢れた。
リサが教室の床を蹴る。
「頭に詰め込みすぎたのね」
ナカニシが天井を見る。
「知識の食べ放題かいな」
カイはモップを床に当てる。
「教育キャッシュが上限を超えています」
「理解前に格納しています」
リサ。
「無理やり流し込んだってこと?」
カイは頷く。
「処理待ちです」
モップで床のラインを引く。
【SYSTEM LOG】
【Knowledge Buffer : Flushed】
黒板の文字がゆっくりと再構築される。
タブレットが再起動。
生徒が目を瞬かせる。
「……分かる」
教師が息を吐く。
リサが言う。
「覚えるってのはね」
「詰めるもんじゃないの」
「残るもんなの」
【SYSTEM LOG】
【Education System : Restored】
だがログが変化する。
【SYSTEM LOG】
【World Education Access : Granted】
カイはそれを確認する。
何も言わない。
教室の床を拭く。
「放置すれば、また溢れます」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】




