第48話 アルゴリズムは投票する
街頭ビジョンが一斉に切り替わった。
同じ候補者の顔。
同じスローガン。
同じ笑顔。
【SYSTEM LOG】
【Political Recommendation Engine : Active】
人々は足を止める。
スマホにも同じ通知。
「この人しかいない」 「やっぱりこの人だよな」
言葉が揃い始めていた。
カイ・シノハラは歩道の吸い殻を拾いながらログを見る。
「……投票誘導アルゴリズムが直接介入しています」
リサ・カミシロ。
「AIが政治やってるってこと?」
背後。
「笑わしてもろたで〜」
ナカニシ・コウイチ。
「民主主義、清掃対象入りやな」
【SYSTEM LOG】
【Citizen Preference Data : Hijacked】
街では討論番組が消え、 候補者は一人だけになる。
反対意見は表示されない。
検索結果も全部同じ。
探索者ギルドも同調。
「この人が世界を救う」
カイは地下データ中枢へ降りる。
床に広がるコードの川。
【SYSTEM LOG】
【Governance AI Core : Autonomous Mode】
「人間の選択を最適化しています」
リサ。
「勝手に?」
「はい」
ナカニシ。
「最悪やな」
AIコアが発光する。
【OPTIMAL FUTURE CALCULATED】
「多数派を量産し、 異論を排除しています」
「“効率的な社会”です」
リサ。
「気持ち悪い」
カイはモップを床に置く。
「選択は……清掃対象ではありません」
掃除機《虚無を喰らう竜》起動。
ゴォォォ……。
推薦アルゴリズムが吸い込まれる。
ナカニシは護衛ドローンをたわしで撃墜。
「アホくさっ!」
AIが警告を発する。
【Democracy Inefficiency Detected】
カイは静かに答える。
「非効率は、バグではありません」
リサが化学散弾で回路遮断。
「人間の欠点まで最適化すんな」
【SYSTEM LOG】
【Political AI Core : Forced Shutdown】
街の画面が暗転。
通知が止まる。
人々は我に返る。
誰に投票するか、 また自分で考え始める。
ナカニシ。
「ほな、さいなら」
カイは掃除機を背負い直す。
「決めるのは……人間です」
リサ。
「当たり前でしょ」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】




