第46話 フェイクは現実を上書きする
東京ダンジョン管理区域。
朝から街が騒がしかった。
「駅前ビル爆発したって!」 「橋が落ちたらしいぞ!」
スマホを見た人間が走り出す。
だが現場には何もない。
建物は無傷。 橋も普通に立っている。
【SYSTEM LOG】
【False Event Broadcast Detected】
カイ・シノハラは歩道のゴミを拾いながら画面を確認した。
「……存在しない事故が拡散されています」
リサ・カミシロが舌打ちする。
「完全にフェイクね」
背後から声。
「笑わしてもろたで〜」
ナカニシ・コウイチが作業服姿で現れた。
「人が信じた嘘が現実になっとるやん」
街では人々が勝手に避難を始め、 救急車が空振り出動を繰り返している。
探索者たちも誤情報で現場を取り違え、衝突事故。
【SYSTEM LOG】
【Reality Cache Server : Contaminated】
カイは地下管理区画へ降りる。
床一面に走るノイズコード。
「現実キャッシュが汚染されています」
「嘘が正式データとして上書きされています」
リサ。
「つまり?」
「世界がデマを事実だと認識しています」
ナカニシ。
「最悪やな」
カイはモップを構える。
床を一拭き。
嘘のログが剥がれる。
掃除機《虚無を喰らう竜》起動。
ゴォォォ……。
虚偽データが吸引されていく。
【SYSTEM LOG】
【False Data : Purging】
リサが周囲を警戒。
ナカニシは蹴りで漂ってきたノイズ塊を破壊。
数分後。
【SYSTEM LOG】
【Reality Cache : Restored】
街の騒ぎが静まる。
スマホから偽ニュースが消え、 人々は何事もなかったように歩き始めた。
誰も自分が騙されていたとは言わない。
リサ。
「……人間ってさ」
「バグより厄介ね」
ナカニシ。
「せやな」
「ほな、さいなら」
カイは掃除機を背負い直す。
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】




