第45話 フードデッドロック
最初に止まったのは、配送だった。
コンビニの棚が空になる。
スーパーの冷蔵ケースが消灯。
炊き出し所に人が殺到する。
【SYSTEM LOG】
【Food Supply System : Deadlock】
【Distribution Nodes : Locked】
「パンが来ない!」
「倉庫が開かねぇ!」
街全体の物流が完全停止していた。
カイ・シノハラは非常用搬入口の前に立つ。
「食料システムが相互待機状態です」
「完全なデッドロック」
リサ・カミシロが腕を組む。
「つまり?」
「誰も先に動けなくなってるってこと」
後ろから声。
「腹減った街ほど、厄介なもん無いで」
ナカニシ・コウイチ。
掃除機を背負い、腰のたわしを回している。
【SYSTEM LOG】
【Cleaner ID : KANSAI-BRANCH / BLUE-RANK VERIFIED】
「関西でも似たのあったわ」
「暴動一歩手前やった」
通路奥から異形のモンスターが湧く。
腐った穀物と肉塊が融合した集合体。
「うわ、キモッ!」
リサが即発砲。
浄化弾で外殻を剥がす。
ナカニシがたわしを蹴る。
「ほな解体や」
回転したたわしが核を貫通。
崩壊。
残りも数十秒で消えた。
「カイ、今!」
リサが前に出て射線を切る。
カイは中央制御盤へ。
【SYSTEM LOG】
【Deadlock Source : Multi-Queue Conflict】
「供給・加工・配給が全部互いを待っています」
掃除機のノズルを差し込む。
ゴォォォ……。
詰まったデータフローを吸引。
内部に絡まった参照パスを引き剥がす。
ナカニシが横から言う。
「優先順位つけたれ」
「一番上は“人間の胃袋”や」
カイが頷く。
【SYSTEM LOG】
【Priority Rewrite : Human Survival First】
回路が再接続される。
冷蔵庫が起動。
配送ドローンが動き出す。
炊飯器が一斉に蒸気を吐く。
【SYSTEM LOG】
【Food Supply : Normalized】
街に匂いが戻った。
パンの焼ける匂い。
スープの湯気。
人々が座り込んで食べ始める。
リサが腰に手を当てる。
「はぁ……」
「空腹って、ほんと厄介ね」
ナカニシが笑う。
「アホくさっ。腹減ると人間、すぐ獣や」
カイはログを見る。
【SYSTEM LOG】
【Global Food Authority : Accessible】
「世界の食料配分にアクセスできます」
「使う気?」
「使いません」
「だよね」
ナカニシが掃除機を担ぐ。
「ほな、さいなら」
「次は給食バグでも呼んでや」
リサが背を向けながら言う。
「……今日の晩ご飯、ちゃんと食べなさいよ」
「……にゃん」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】
街は救われた。
三人は、何も言わず次の現場へ向かった。




