第43話 ブラックアウト
東京全域。
一斉に灯りが消えた。
ビルの窓。 信号機。 地下鉄構内。
すべて真っ暗。
【SYSTEM LOG】
【Power Grid : Overflow Failure】
【Global Electricity : Offline】
駅のホーム。
「止まった!?」 「スマホも死んだ!」
自動ドアが開かない。
非常灯だけが赤く点滅する。
カイ・シノハラは変電施設の前に立っていた。
掃除機《虚無を喰らう竜》を下ろす。
リサ・カミシロが横に来る。
「オーバーフローね」
「溜め込みすぎて、全部吐き出したタイプ」
カイが端末を覗く。
「電力バッファが反転しています」
「過剰エネルギーが遮断トリガーを起動しました」
リサが言う。
「つまり?」
「電気が多すぎて、ゼロになりました」
吸引口を高圧ラインに向ける。
ゴォォォ……。
不可視のエネルギー流が掃除機へ吸い込まれる。
【SYSTEM LOG】
【Excess Energy : Collecting】
変電器の唸りが止まる。
配電盤の警告灯が消える。
【SYSTEM LOG】
【Overflow Flag : Cleared】
数秒後。
遠くでビルの灯りが戻る。
信号が点灯。
地下鉄の走行音。
【SYSTEM LOG】
【Power Grid : Restored】
街が再起動した。
リサが腕を組む。
「電力ってさ」
「人間の我慢と同じなのよ」
「溜めすぎると、壊れる」
カイは掃除機の内部ログを見る。
【SYSTEM LOG】
【Global Power Authority : Accessible】
「……世界の電力制御にアクセス可能です」
「それで?」
「使いません」
リサは即答。
「当たり前」
「こんなの振り回してたら、寝る暇なくなるでしょ」
カイは掃除機を背負う。
「清掃範囲外です」
リサが歩き出す。
「ほら、次」
【SYSTEM LOG】
【Overflow Bug : Resolved】
【Cleaning Complete】
街に明かりが戻った。
だが誰も、清掃員の名前を知らない。




