第41話 交通デッドロック
首都高。
全車線が止まっていた。
クラクションだけが鳴り続ける。
交差点。
信号は青のまま変わらない。
【SYSTEM LOG】
【Traffic System : Deadlock】
【Vehicle State : Frozen】
運転席の男。
「動かねぇぞ!」
バスの車内。
「降りられない!」
配送業者。
「全部止まってる!」
街の移動が完全に遮断されていた。
カイ・シノハラは高架の縁に立つ。
下には数百台の車。
リサ・カミシロが横に来る。
「これ全部、進路待ち?」
「はい」
カイは道路中央へ降りる。
モップを構える。
【SYSTEM LOG】
【Intersection Priority : Circular Wait】
「全交差点が互いに待機しています」
「典型的なデッドロックです」
リサが言う。
「つまり?」
「誰も先に行けません」
カイはモップの柄をアスファルトに突き立てる。
交差点制御ノードへ物理接触。
【SYSTEM LOG】
【Manual Override Initiated】
モップの柄を回す。
信号制御が一瞬ブラックアウト。
【SYSTEM LOG】
【Deadlock Resolver : Executing】
青が消える。
全方向赤。
次の瞬間、一方向だけが青になる。
一台の車が動いた。
続いて二台。
三台。
【SYSTEM LOG】
【Traffic Flow : Restarted】
渋滞がほどけていく。
エンジン音が連なり始める。
バスが進む。
救急車が走る。
街が再び流れ出した。
リサが言う。
「棒一本で都市動かすとか、どうなの?」
カイは信号機を見る。
内部ログが一瞬走る。
【SYSTEM LOG】
【Traffic Authority : Accessible】
「交通信号に直接アクセスできるみたいです」
「使う?」
「使いません」
リサは言う。
「でしょうね」
カイはモップを肩に担ぐ。
「止まるのも汚れです」
【SYSTEM LOG】
【Traffic Deadlock : Cleared】
【Cleaning Complete】
都市は再び動き始めた。




