第35話 本部からの応援
異変は、背後から来た。
ゴンッ。
鈍い衝撃と同時に、モンスターの胴体が内側から弾け飛んだ。
「……?」
カイ・シノハラが振り返る。
そこにいたのは、見慣れない作業服の男だった。
腰には大量のたわし。
肩には清掃員用掃除機。
男は軽く手を振る。
「わて、関西支部から来たナカニシ・コウイチや」
【SYSTEM LOG】
【Cleaner ID:KANSAI-BRANCH / BLUE-RANK VERIFIED】
青ランク。
同格のベテラン清掃員。
「おたくらが東京の現場か」
「笑わしてもろたで〜」
次の瞬間。
ナカニシは足元のたわしを蹴った。
バシュッ。
圧縮デバッグデータをまとったたわしが回転し、別のモンスターの核を貫く。
崩壊。
さらに二本、三本。
まるでサッカーのような動きで、次々とモンスターが内部破壊されていく。
リサが目を細める。
「……なに勝手に入ってきてんのよ」
ナカニシは最後の一体を蹴り飛ばし、掃除機を起動。
ゴォォォ……。
残骸と核データを一気に吸引。
【SYSTEM LOG】
【Foreign Cleaner Override】
【Target Cleared】
ナカニシは掃除機を肩に担ぐ。
「ほな、さいなら」
そのまま振り返りもせず、通路の奥へ消えていった。
数秒の沈黙。
リサの額に青筋が浮く。
「……は?」
「はぁ〜〜〜!? なにアイツ!!」
残されていたたわしが一本、床に転がっていた。
リサはそれを思いきり蹴飛ばす。
「アホくさっ!!」
キィン、と乾いた音。
たわしは壁に当たり、跳ね返った。
次の瞬間。
ゴスッ。
「――っ!!」
カイの股間に、完璧な角度で直撃。
「……ぁ……」
カイは無言のまま崩れ落ちた。
「……」
探索者たちは、呆然。
【SYSTEM LOG】
【Cleaner Down:Temporary】
【Critical Area Impact Detected】
数秒後。
カイは床に転がったまま、小さく息を吐いた。
「……清掃は……終わってます」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】
こうして東京の現場に、
“関西の風”が吹き込んだ。
しかも、かなり痛い形で。




