第18話 終わらない戦闘
剣が振られ、魔法が炸裂する。
モンスターが崩れ落ちた。
――次の瞬間。
同じ咆哮。
同じ初動。
同じ光景。
「……あ?」
探索者の一人が声を漏らす。
だが疑問を抱く間もなく、身体は次の行動に移っていた。
倒す。
戻る。
また倒す。
何度も、何度も。
【SYSTEM LOG】
【Time Loop:Active】
回数を重ねるごとに、探索者たちの顔から表情が消えていく。
疲労だけが、確実に蓄積していった。
「……もう……何回……」
戦場の端で、カイ・シノハラは静かに周囲を見ていた。
「時間が巻き戻っているわけじゃありません」
淡々と。
「同じ処理を、繰り返しているだけです」
カイはコードレス掃除機《虚無を喰らう竜》を下ろす。
ノズルの先に、見えない負圧が展開された。
「ループの参照点……捕捉」
空間の歪みが、引き寄せられる。
「強制終了、かけます」
スイッチを入れる。
ゴォォォ……!
【SYSTEM LOG】
【Loop Process:Force Terminate】
世界が一瞬だけ引き延ばされ、
次の瞬間――先へ進んだ。
モンスターは倒れたまま。
探索者たちはその場に崩れ落ちる。
「……終わった?」
「戻ら……ない……?」
「清掃、完了です」
カイは掃除機を背負い直した。
用務員室。
シャワーブースの扉が閉まる音がする。
カイが工具を片付けていると――
突然、後頭部に強烈な衝撃。
「見るなバカ!!」
リサ・カミシロの回し蹴りが、寸分違わず決まっていた。
「い、いえ、見てません!」
「見てたら殺してるわよ!!」
リサはそのままブースに戻り、
数分後、作業服に着替えて出てきた。
「……で?」
腕を組み、いつもの毒舌モード。
「ループ、終わった?」
「はい、完全に」
「……無茶、してないでしょうね」
「はい」
「……べ、別に心配してたわけじゃないから」
「仕事が増えると面倒なだけ……にゃん」
カイは、少しだけ微笑んだ。
「ありがとうございます」
「はぁ!? 違うって言ってるでしょ!」
掃除機の充電ランプが、静かに点灯する。
「次の現場よ」
「はい」
探索者たちは何が起きたか思い出せない。
残ったのは、
自分たちが何かに完敗したという感覚だけ。
清掃は終わった。
仕事は、続く。




