第14話 倒れても終わらない
ダンジョン深層。
探索者たちは、巨大なボスの前で息を切らしていた。
「……やったぞ!」
崩れ落ちる巨体。
核は砕け、装甲は剥がれ、確かに“撃破”したはずだった。
だが――
ズルリ、と肉が戻る。
砕けた部位が逆再生のように結合し、目が再び光る。
「……は?」
次の瞬間、ボスは立ち上がった。
「蘇生……?」
「いや、違う……倒しても戻る!」
ゾンビのように、何度でも。
倒すたびに、より速く、より雑に。
「くそっ、キリがねぇ!」
そこへ、足音が一つ。
「……復帰フラグ、解除されてませんね」
作業服の男が、前に出た。
カイ・シノハラはモップを構え、踏み込む。
近接。無駄のない動き。
薙ぎ、突き、絡め取り――“立ち上がる前”を潰す。
「え……清掃員が、前に?」
ボスが再起動しようとした、その瞬間。
――ドンッ。
天井から、影が落ちた。
「遅いじゃない」
宙返り。壁蹴り。
着地と同時に、水鉄砲が火を噴く。
シュゴォォ!
外見は玩具。
中身は、散弾銃。
空中で体勢を変えながら、正確無比の連射。
弱体化した箇所に、液体が叩き込まれる。
「遠距離、こんな動きで……!?」
ボスは再生を試みるが、今度は戻らない。
【SYSTEM LOG】
【復帰参照:切断】
【核:抽出可能】
カイが掃除機を当てる。
吸引。終わり。
探索者たちは、言葉を失った。
「……俺たちが、何度も倒して……」
「倒した“つもり”だっただけよ」
リサが肩をすくめる。
「金しか脳のないヘタレども」
探索者たちは、俯いた。
カイは静かに言う。
「清掃、完了です」
二人は背を向け、先へ進む。
倒しても終わらない敵はいる。
でも――
直せば、終わる。
それが、清掃員の仕事だった。




