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ダンジョン・デバッガー清掃員 〜世界の不具合を修正してたら神の領域に到達しました〜  作者: やはぎ・エリンギ


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第13話 触れない壁

ダンジョン下層。

通路の途中で、探索者たちは立ち尽くしていた。


「……進めない」


目の前には、何もない。

壁も、扉も、障害物も見えない。


だが、一歩踏み出せば――

確かに“何か”にぶつかる。


「くそっ!」


剣が振るわれ、

魔法が放たれる。


だが、手応えはない。

斬撃は空を切り、魔法は霧散する。


「透明な壁……?」

「当たり判定が、おかしい!」


探索者の誰かが叫んだ。


物理、魔法、衝撃。

すべてが無効。


「突破不能だ……」


その声の背後から、足音が近づく。


「……失礼します」


作業服姿の男が、ひょいと前に出た。


「清掃員です」


探索者たちが振り返る。


「は? 今それどころじゃ――」


カイ・シノハラは、壁の前で立ち止まった。


見えない境界。

だが、彼には“ズレ”が見えている。


「当たり判定……固定されたままですね」


掃除機を下ろし、ノズルを壁に当てる。


「ちょ、何する気だ!?」


スイッチが入る。


ゴォ……。


吸うのは、物質ではない。

衝突判定そのもの。


【SYSTEM LOG】

【Collision Flag:一時停止】


カイは、一歩前に出た。


――すり抜ける。


探索者たちは、口を開けたまま固まった。


「……え?」

「通った?」


カイは振り返らない。


「一時的に、衝突判定をオフにしました」


淡々とした声。


「長くは持ちませんので……」


そう言って、さらに奥へ進む。


「え、待て! どういう――」


「壁の向こうも……汚れていますので」


カイの背中が、見えなくなる。


探索者たちは、透明な壁の前で立ち尽くしていた。


理解が追いつかない。


剣も魔法も通らないはずの場所を、清掃員は“通った”。


「……どうやったんだ」


誰かが呟いた、その時。


「ねえ」


軽い声が、背後から飛ぶ。


リサ・カミシロが、腹を抱えて笑っていた。

「もうちょっと頭使ったら?」


探索者たちが振り返る。


「斬る前に考える。

 撃つ前に仕様を疑う。

 それ、探索者の基本でしょ?」


誰も、返せない。


「まあ、無理か」


「考えるのが仕事なのは、清掃員だけみたいだし」


そう言い残し、彼女はカイの後を追って歩き出した。


透明な壁の向こうで、

清掃は――すでに終わっている。

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