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番外編『サーモンボアの肉やで!』

「なあなあ!美晴!このサーモンボアの肉、どうすりゃあいい?」

キングが海から帰ってくるとごっつい見た目のオーロラ色を放つ魚を持ってきた。見た目には慣れているので肉判定として話を進める。


「それ…肉?魚?」

もう美晴には魔物は食べるものとして定着していた。するとリリが言ってくれた。

『北半島では刺身というもので食べられてはいますが肉として食べることも可能ですよ!ですがサーモンボアは臭みが多く、少々扱いにくいです。』


日本でのサーモンと同じようなもんなんだ。期間限定のサイコロステーキとしてやってみようかな。

『良いですね!』

うん。それじゃあ…!


「キング、もっとこれ狩ってきて!」

「あいよ!」

キングは海へ戻って行った。

「さてと。サーモンボアの肉には醤油ベースのタレがいいよね。んじゃあ手軽に醤油とみりんでいいかな。ちょこっとニンニクと生姜入れて…よし!自家製醤油タレ完成!」


生姜のとろとろさが加わってマイルドな味に。それにニンニクのパンチの効いたピリ辛焼肉のタレになった。

リリ、どお?

『良いですね!すごいです!マスターの故郷のタレですか?』


そうだよ。

「これとともにサーモンの切ったやつに一緒に入れて持ってって……できた!試作品1号!キング…はまだ帰ってきてないな。じゃあヨシリ、いる?」

いる?という問いにピクリと反応しソワソワとやって来る。そして微かな声で囁いて来た。


「いいん…ですか……?お寿司…さーもん……」

こ、怖……。

「い、いいよこれサイコロステーキだよ。サーモンボアの。」

よだれを垂らしそうな勢いでヨシリはあっという間に平らげる。


「う、うまかったです…リリさん…なんでこんなに美味しいんですか…?」

「え、いやぁサーモンボアが美味しかっただけだよ。これ期間限定で商品化するんだ。」

スキルで新しいメニュー表を作る。180枚あたり作るとキングが海から帰って来た。


「はぁ…疲れた…。海でいろんな人から焼肉くいーんの従業員やね?言うて問われたで。」

「おつかれ。もう大人気だもんね…ははは…。」

何か異変を感じたのかキングは鼻をクンクンさせて私の顔をじっと見つめて来た。


「…美晴。」

「な、なに?」

「ん。」

そう言ってキングが手を出して来た。意味がわからず困ってるとキングが地団駄を踏んだ。


「ん!ほんとに分からん?なんか作ったんやろ?ワイの…ためやないんか…?」

あ、それのこと。やべキングの分のけてないや。

「ほんとごめん!忘れてた!でもその代わり後で一緒に食べよ?」

「…わかった。」


歯を食いしばって自分を抑制するようにジェスチャーする。

「……待って?なんで外ガヤガヤすんの?今何時?!……やっば!大遅刻!急げ急げ!みんな、開店時間だよ!リリ、サーモンボアの皮とか剥ぐ専用ドローン出して!」

こうやって今日も異世界焼肉くいーん、開店です。


「あんちゃん!このサーモンボアのサイコロステーキ?をくれ!常連だがこんなの初めてだ!サーモンボアの肉って食えんのか!臭いのにやっぱここはすげぇな!」

「あいよ!」

サーモンのような色を放つ肉を筋を切らずに丁寧に切っていく。サイコロ状に切れたら熱したフライパンに乗せる。


「その間にソースを……」

タレを皿に入れて焼き終えたサーモンを同じ皿に盛り付ける。パセリを少し乗っけて完成。

それをお客さんに渡すと目を輝かせた。

「おうっ!なんだこれ…!く、臭くねぇ!このタレなんだ?うっめぇ!」

「私にもそれちょうだい!」

「俺にもくれ!」


それからもサーモンボアの注文は止まらなかった。注文が落ち着いたころのことだった。

「俺は道場破りの破門 寿一はもん としかず!ここで勇者ヨシリが負けたとの朗報でやって来た!一番強い奴はどれだ!」

空手着を着た茶髪の男の人がドアを蹴り開けた。

え、誰…?名前からして日本からの人なんだろうけど…。道場破りって異世界にもあるの?


『いえ!道場破りは存在しません!まずそもそも剣道や空手は存在しません!…とはいえ行かないんですか?』

え。私が一番強いの…?ここにいる冒険者の皆さんの方が強いでしょ……。

そう思っていたが冒険者のみんなを見ると恐る恐る美晴を指差した。


「店長が強いだろ!」

「勇者様を倒した実力だもんな!」

え、なんか話盛り上げられてる…。倒してないのに……。なんか勝手に相手がこうべ垂れて負けましたって言ったのになぁ…。


すると寿一はポカンとしている私に一歩づつ歩み寄る。近くに行くと右でを出して封筒のようなものを出して来た。それには……


『果たし状』


「へ?」

私ののまぬけな声が出た。さらに読み続けるとこう書いてあった。


––––––––


『果たし状』


勇者ヨシリを倒した実力の持ち主よ。その実力を見込んで俺は決闘を貴殿に申し込む。

俺と対食をしてくれ。以上だ。


––––––––


「へ?」

タイショクって何…?

『向かい合って食事をすると言う意味を持っているみたいですが…これは意味が違いそうですね。』

とりあえず断らなきゃ。


「え、えっと…私そんな強くないですよ…勇者さんを倒したわけじゃないし…」

「いや!そちらの殿方が証明してくれる!」

そう言ってヨシリの方を指差す。


「はい!時透様は偉大な方です!」

え、これってもう確定な感じ…?


「ルールは簡単!料理の腕前で決闘だ!」

「へ?」

また声が出た。

料理…?空手じゃなくて?


『変な人ですね。』

ね。空手着着てる意味なんなんだろ。…それより決闘とか言うやつやんなきゃいけないのか……。冒険者さんがすっごいやる気だし。

「ハァ…わかりました。一応言っておきますが私五つ星レストランでコックとして働いてましたからね……。それと負けたから下に着くとかなしです。」


分かった!と元気に返事して早速厨房に入る。

「では!制限時間は40分!審査員は見た目:リリ、味覚:ヨシリ、作りやすさ:キングです!では、よーい、スタート!」

リリのスタートと共に美晴と寿一は冷蔵庫を開けて必要な食材を探していった。



「終わりです!手を止めてください!」

リリがドローンを使って身動きを取れなくした。

「では、審査員が審査いたします!」

ドローンが作った料理をキングたち審査員の元に持って行った。


ちなみに美晴はカルボナーラ、寿一はローストビーフを作っていた。

両方見た目も香りも最高で見分けがつかない。すると、採点し終わったのか審査員がこっちを向いた。


「では!発表します!時透 美晴対破門 寿一の料理対戦の結末は?!」

ドラムロールの代わりに冒険者さんたちが机を太鼓代わりに叩いた。

「……優勝は…!……時透 美晴、50点満点です!残念ながら破門 寿一さんは49点でギリギリ届かずです!」


え?私五つ星レストラン行ってたんだよ?寿一さんって料理強…。

「………貴殿。時透と言ったな。俺が負けたのは初めてだ。さすが勇者ヨシリを倒した女だ。俺は諦めて帰る。ではまた。」

少し寂しそうな表情で寿一は帰っていく。


「寿一さん!いつでも来てくださいね!お待ちしています!」

私は寿一に手を振りながら言った。

すると寿一は振り返って大声で叫んだ。


「ありがとな!時透 美晴!また会おう!」

寿一は手を振って帰って行った。

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