リキリア王国の勇者は癖強?
「美晴〜狩ってきたで〜。あっそれとこの金使えるん?」
と言って見せてきたのはでっかい竜の死体と日本円で2000円札だった。
美晴はへ?と拍子抜けた声を漏らした。
「ん?どうしたん?」
数秒間の沈黙の後、美晴は悲鳴を上げながら言った。
「ヒェェェェェエ!りゅ、竜ぅぅう!2000札はどうでもいいの!それよりこの竜なんなのよぉ?!平然とどうしたん?じゃないの!」
「ん?ただの最下級ドラゴンやで?Aランク冒険者が立ち向かえば殺れるぞ?」
それでただのって言えるんだ……。Aランクって上から4番目だよね…?下からは6番目……。キングってこんなに強かったの…?あ、そうだ。
「…このお肉って美味しいの?」
「ここではドラゴンの肉を食う習慣はないけん、ちょっとおかしく思われるで。まあ美味いんちゃうか?」
そうなんだ…味見しよ。
美晴は店に入り、新品のキッチンにキングから貰ったミスリルとかいう包丁で端だけを切り取り皮を剥がし刺身のように切った。
「お肉は噛み答えがあるように少し分厚くっと。で、切り込みをっと。ふぅ…前世で切り方を習っててよかった。血抜きの方法とかも分かってやりやすいな。…よしっ!早速お肉焼いてみよう!」
一番近い和室にお肉を持って行って網にお肉を並べていく。
ジュゥゥウゥゥウ…
あまりにもいい匂いに釣られたのか、キングが店の扉を開けた。
「…いい、匂い…美味そう…」
「…あっ。キング食べてく?」
「い、いいの…?」
…なんかたまにキングって女の子っぽく話すよね。それに仕草は必ず女の子の仕草だし。なんでだろ…?
不思議に思っていながら焼けたお肉をキングに渡した。
「あ、ありがとな…」
あ、今度は男の子に戻った。洗い物をしていると、キングがおかわりを示してきた。
「うんまぃ!な、なにこれ!これ、本当にあの生臭いドラゴンなん?!おっかわり!」
「はいよ!」
次は山盛りの肉を渡した。約2kgあたりの量だった。だが、それもすぐにキングはツルツルと飲み込んでしまった。
「おかわり!」
「はいよ!」
それの繰り返しだった。ドラゴンはあっという間に皮だけになってしまった。
「あ…。私の分無くなっちゃった……。しょぼん…。」
それを聞いたキングは気まずそうに言った。
「あ…つ、つい平らげちゃった…す、すまん…」
…まあいいか……。黒毛和牛食べれば満足するよね…
「まあいいよ…明日残った黒毛和牛食べるから…」
明日は開店だもん!こうしちゃいられない!
「ほら!明日のために働くよ!私は街に食器とかチラシとか色々やりに行くからお肉のスライスとかしといて!」
急に元気になった美晴にびっくりして飛び跳ねた。
「ひゃっ!お、おう!」
美晴はすぐに店を出てすぐに店を作った時に得たスキルを唱えた。
「詠唱端折らせるのは初めてだけど…やってみなきゃ!……スキル《自由生成》焼肉屋オープンのチラシを100枚生成。」
美味しそうな網の上でジュージュー音を立ててるお肉……。文字はメインにしないでお客さんの興味を絵に…!あっ場所も記入しなきゃ!リキリア王国丘の上異世界焼肉くいーん第一店舗っと!これでいいかな!
すると、たった数秒で美晴の身長をとうに超える量のチラシが目の前に出てきた。
「はぁ…今度はこれを配るのか……」
どうにかして…と風に嘆くとそれに応えるかのように風が強く吹いた。その風力で山のようにあったチラシが一気にあちこちへと飛んでいった。
「美晴。風魔法使えんの?」
そうか。風の正体はキングの風魔法か。
「え、でもこれなんかの罪なったりしない…?」
「大丈夫やで。ここは無法地帯や。なんでもしていい。個々で規則を作っているところは禁止やけど街にはないで。戦闘も可能や。」
意外と日本って発展してて平和だったんだ…
「この量やと東半島に届かんで。もっと作らんのん?」
「え?い、いやまずはリキリア王国だけでいいかなって思ったんだけど……。」
キングは深くため息をつきながら言った。
「繁盛せんで?客をより多く引き込まないでどうするん?」
そうだけど…まずは様子見…
「うわっ!ヒ!ヒヒヒヒヒヒ、ヒャハハハ!や、やめて!キング!」
キングが美晴の後ろへ回り込み、こちょこちょを始めた。それを止めようともがくが意外に力が強く抜け出せない。そんな周りからはイチャイチャしていると思われる行動を取っていた美晴にリリが警告した。
『楽しそうな所、すみませんがマスター。前方から人の気配がします。』
「え?あ、もう来客しちゃったかな…?」
『いいえ、異世界人です。』
私と同じ異世界人…?あ、ミカミさんかな。
キングに事情を話し離してもらうと目の前に大きな目が。思わず叫びそうになるがそれをその人が私の口をギュッと閉じさせる。
「んぐっ!ングググ…グググッ(誰…?ミカミさんじゃない…?)」
「すみません。こちらのチラシを見かけて…もう食べられないかと思ってた料理…が明日、提供されるんですよね…?」
その人は私から手を離して喋れるようにしてれた。
異世界から来たのは本当っぽいな…
「焼肉…知ってるんですか?」
「ええそれはもう!あ、そうでした。まだ名乗っていませんでしたね。」
客人はキリッと姿勢を変え、貴族のように足をクロスさせ敬礼した。」
「リキリア王国に召喚されし勇者が一人、加藤 ヨシリと申します。ところで…そちらの料理はどこから考えが…?」
勇者…私と違って王国から召喚された人か…。あっ私も自己紹介!
「えっと…時透 美晴って言います。出身…東京に住んでました。アイデアはちょっと…」
ってか勇者召喚されないんじゃ。
『勇者は一年につき一回召喚されてるんです!』
そーなんだ。
名前を言うと、ヨシリは何かを決意した表情になった。
「……あの有力次期大統領の時透殿…いや、時透様ですよね!!!ぜ、ぜひ私と決闘を!時透殿が勝利した場合、従者となりましょう!敗北した場合、私はすぐにでもお引き取りいたします!」
「は?」
えこれどゆこと?!よくわからない…
『手を抜けばいいのでは?』
でも痛いのやだな…せっかく異世界来たのに。
「ちなみにです!手を抜くのはNGです!では行きます!スタートです!」
と、とりあえず…!聖属性魔法!ヒール?で全部直さなきゃ倒すにはどうすれば…うわっ!
ヨシリがアタックしてきた。
「では!行きます!我ら地人に力を与えよ。精霊の加護よ、緑の雫よ、かの者に安らかな死を与えよ。ウォーターボール!」
すると、真上にものすごくでかい水の塊が浮かんでいた。
「よ、よくわかんないけど防がなきゃ!…とりあえず《爆発》!」
威力が強すぎて発動時に目をつぶっていたが大きな爆発が止まると、ヨシリの声が近づいてきた。
「さすがです!では約束通り従者となりましょう。美晴様!なんでもお申し付けください!」
「え、別にいいんだけど……。」
ヨシリが美晴にひざまづいていてどうすればいいのかわからず立ち尽くす美晴。その時、リリが良すぎる案を出してくれた。
『マスター。この者を働かせるのはどうでしょう。勇者…だけど。』
そう…だね。勇者…だけど。うん。勇者を働かせるってことあるかな。ない…よね。…かといってそのまま返すわけにもいかないし…あーもういいや!
「わかったよ!でも様付けはなし!今日は泊まってって!服従関係じゃなくて友達関係ね。働いて欲しいから暇な時に来て。あと作業服の採寸とかする日があるから連絡…あ、スキルでスマホ作れるよね。……できた!これスマホだからこれで連絡してね!」
ヨシリはあっという間にことが進んでびっくりしていたが美晴の呼びかけで温泉に入り疲れを癒しながら寝落ちした。
次回は1月31日です。
「フォローして見逃すでないで!」
とキングが言ってます(笑)




