ひかりのそばに
澪は、薄暗い部屋の隅に小さく丸まっていた。胸の奥にぽっかりと空いた穴が広がり、現実と遠く離れていく感覚に囚われていた。
ドアのノックの音が、静かな部屋に響いた。澪は動けず、声も出せなかった。しばらくして、優しい声が聞こえた。
「澪?わたし、ユリだけど…会いに来たよ。」
ユリは、澪の昔からの友人だった。澪が辛そうにしていることを知って、何度も連絡を試みていたが返事はなかった。やっと今日、澪の部屋の前に立つことができた。
「ねえ、開けて。話したいの。」
少しずつ、ユリの声が澪の心に届いた。澪は重たいまぶたを開け、震える手でドアを少しだけ開けた。
ユリの目は、暖かな光をたたえていた。無理に笑顔を作るでもなく、ただ「ここにいるよ」と伝えてくれていた。
「大丈夫?無理しなくていいからね。」
澪は涙をこぼした。言葉にできない不安や孤独が、溢れ出してしまった。
ユリはそっと澪の手を握り、静かに寄り添った。
「君は一人じゃないよ。ゆっくりでいい。一緒に歩いていこう。」
しばらく沈黙が続いたあと、ユリはバッグから小さなボードゲームを取り出した。
「これ、一緒にやろうよ。簡単だから、気分転換になるかも。」
澪は戸惑いながらも、ユリの誘いに少しだけ頷いた。
ゲームの駒を動かすたびに、二人の間に少しずつ笑顔が戻ってきた。澪の震えていた手も、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「負けた!…けど、楽しいね。」
ユリの言葉に、澪は小さく笑った。心の深い闇の中に、ほんの少しの温かい光が差し込んでいた。
「ありがとう、来てくれて。」
「こちらこそ。いつでも来るよ。大丈夫、ゆっくりでいいんだよ。」
部屋の暗さの中に、ひと筋の光が差し込んだ気がした。