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・ナナシの組織について


 住宅街を少し抜けた先で街を見下ろす。街は火で覆われ建物は崩壊していた。これは、一体……?


「仏谷さん……この街で、何が起きているんですか……?」


 背負っていた高田先生を地面に寝かせ、仏谷さんは一息つきながら話し始めた。


「ふぅ……切っ掛けは三年前、街が崩壊したことから始まる。一部の人々は互いに殺し合い、手当たり次第に建物を壊すものも居た。また、廃人になる者や熱に浮かされたように笑って人を殺す者も居た」


「それが……?」


 急に何の話だ……?


「それから数ヶ月、大阪にある一つの街が崩壊した。さらに数ヶ月、今度は東京の街が。段々と崩壊する街が増えていく中、一人の警察官の家族が惨殺されたんだ。その場には血の文字でナナシの組織からのメッセージが書かれていた。内容は、街の崩壊は自分たちがやった事だと、そして……異能力者の殺害による全異能力者の撲滅が目的だという事」


「なっ……!?」


 それが、あいつらって……そんなこと。


「今回の奴らがナナシの組織であるのなら、やはり矛盾を孕んでいる。そもそも、異能力者の殺害をどうして異能力者に任せるのか。いや、意図は分かるが……しかしそれでは本末転倒ではいのか?」


「仏谷……さん?」


「失礼、独り言が過ぎたな。それと……伝えるべきかは迷うが、家族が惨殺されたという警察官は、先ほどまで私が背負っていたそこの高田だ。最近様子がおかしいとは思っていたんだが、まさかあんなに思い詰めているとは知らなかったな。結果として、先走ってしまったが」


 まるで自嘲するかのように話す仏谷さんを見て俺は少し言葉に詰まってしまう。


「そう……です、か」


「最初の質問に戻るが……この街で起きているのは恐らく、東京や大阪などで起きた事と同じモノだと思われる。最近鳴りを潜めていると思っていたが、嵐の前の静けさだったと言うわけだ」


 知らなかった。いや、知ろうとしなかった? 違う。多分だけど、警察が情報を隠していたんだ。意図的に。

 じゃなきゃ、街の崩壊がテレビでニュースにならない訳がない。街が崩壊したとか、そんなニュースを見ていないってことは、テレビでは流れなかったという事だ。

 思い返してみれば……一時期、自然災害や事故によって一部の町が崩壊したというニュースがあったように思う。けれど、その原因が異能力者によるモノだなんて思いもしなかった。


「貴方は……いや、貴方達は一体何者なんだ?」


「言っただろう? 私達はAKCの者だよ。正式名称は異能力保全取締機関いのうりょくほぜんとりしまりきかん。abilityからA、keepからK、controlからC。それぞれ三つの頭文字を取り、AKCと呼ばれている。と言っても、十数年前にできたまだまだ新しい組織だがね」


 知っている。学校に入ってから授業で何度も聴いた、入る前にも将来はAKCに所属するんだって決まっていた。けど、そんな組織がどうして……。


「どうして、この街に……?」


「たまたまだ、とは言えないな。一応、理由があるんだ」


 理由?


「それは一体……?」


「……言えない。というより、言ってはいけない。そういう決まりだからな」


「そう……ですか」


 そんな時、仏谷さんはポケットから携帯を取り出した。どうやら震えているようで手で操作したあと、耳に当てる。着信があったみたいだ。


「もしもし……どうした? ……なんだと!? ――が!? 分かった、今から行く! 増援を連れて行くから、それまで堪えてくれよ!?」


 ピッ、と電子音が鳴る。


「何か、あったんですか?」


「今からAKCの支部に行く。そこで君は大人しくしてくれ。分かったな?」


「は、はい……」


 何も聞くな、そんな有無を言わせない圧を感じて俺はそう言うしか無かった。それからまた仏谷さんは携帯を操作しどこかに電話を掛けた。恐らく、今言ったAKCの支部だろう。


「もしもし……あぁ、そうだ。高田ともう一人、――――を連れて今から戻る。――が――――そうだ。他の支部にも伝えてくれ、……――――だとな。頼む。準備しておいてくれ。……行くぞ」


 所々聞こえなかったものの、仏谷さんは携帯をポケットに戻して俺に目を向けた。そして転がしておいた高田先生を背負い走り出す。その後ろを俺はただ付いていくだけだった。



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