7話 朝チュン
「ふわぁ……うぅん、眠り姫の事あんまり分からなかったなぁ」
リリンはあくびをしながらそう呟いた。
そういえば太陽が沈んでからもうかなりの時間が経っている。
時間帯でいえばだいたい深夜ぐらいだろう。
おおよそ子供が起きていていい時間では無い。
「あ、じゃあさじゃあさ……」
リリンは尚も質問を続けようとするが、これ以上起きているのは体に悪いだろう。
俺はリリンの質問を遮って、ベットの上に座っているリリンを無理やり押し倒す。
「ふぇっ!? な、なに!?」
「あうあう……」
ぺたんと倒れ込んだリリンの上に毛布をかぶせ、その上をぽんぽんとする。
良い子はもう寝る時間だぞ、という事だ。
「あ、いっけない、そうだった、明日も早いんだから早く寝なきゃだよね」
「あぅ?」
「ん? あぁ、明日もお仕事があるからさ! 太陽が出てからちょっと経ったらもう出発しなきゃ行けないんだー!」
……なんということだ、こんな幼い子がそんな早い時間から働いているだって?
それに帰ってくる時間も遅かったし、それに環境も劣悪だ。
これが現代日本であれば即児相案件だ。
……何とかしたいところだが、今の俺も幼女の体であることに加えアンデッドという事もあり何か助けになりそうなことは出来なそうだ。
児童相談所のような所があればいいのだが…………。
1日歩き回った感じでいえば恐らくここら辺は中世ヨーロッパのような場所……または異世界か何かなのだろう。
そんな所に子供の人権保障とかそういったものがきちんとあるとは思えない。
寝転がっているリリンを見ると、なんとも無垢な瞳でこちらを見つめ返してくる。
「んー、どうしたのぉ?」
リリンは眠いのか、うとうとした様子でそう言った。
俺はリリンの横に寝転がり、頭をトントンと撫でてやった。
そうするとリリンは気持ちよさそうな表情を浮かべながら眠りについた。
俺はそうしながら思考を巡らせる。
今は何よりも現在の状況を把握し、何とかして眠る方法を見つける、これが目標だ。
これは何よりも優先される。
だからこそ、今は何とかしてリリンを助けようかと思う。
理屈は簡単だ。
ここら辺に居る人間はリリンだけであり、今頼れる人間はリリンだけである。
そのため、リリンを助ければ巡り巡って自分の助けになるのだ。
情けは人の為ならずってやつだ。
頭を撫でてやると幸せそうな顔をしながら微笑みすやすやと眠るリリンを見つめながら俺は夜が明けるのを待った。
…………まぁ、このままの状態で寝たら…………寝つきが悪くなりそうだからってのもあるけどな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「んぅ……んぁ、眠り姫、おはよぉー」
「あうあぅ」
リリンが起きたと同時に俺もベットから出る。
リリンは起きてすぐに顔を洗ったりご飯を食べたりしていた。
シャワーなどはなく、部屋の中に貯めてあった水で体などを拭いたりしていた。
ご飯も質素なもので、パンの中に干し肉のようなものを挟んで食べていた。
「あ、眠り姫も食べる?」
リリンは俺にパンを差出しながらそう言った。
俺は手を前に突き出し首を横に振り、丁重に断っておいた。
リリンは育ち盛りなんだ、俺はなんでかお腹が減ったりはしていないからリリンに食べて欲しい。
そうすると、リリンは遠慮しなくてもいいのにー、と言いながらも俺に差し出していたパンをむしゃむしゃと食べていた。
……やっぱりお腹がすいてるんじゃないか。
美味しそうにパンを食べていたリリンは突然何か思い立ったように俺に話しかけてきた。
「そうだ! 今から仕事をするんだけど、もし良かったら眠り姫も一緒に来る?」
「うー、あうあう。」
リリンが何をしているのかは気になってはいた。
子供でもできる仕事なんて限られていると思うし、危ない事や変な事で稼いでなければ良いんだが……。
何か出来る訳では無いが、ついて行くだけついて行ってみよう。
「おっけー、じゃ、ついてきて!」
そういうとリリンは家の奥の瓦礫が崩れている場所の隙間に入っていく。
子供じゃなければ入れなさそうなほど小さな隙間だ。
リリンはその隙間を慣れた様子で通り抜けていく。
大して俺はと言うと体もうまく動かないのだからもちろん上手く通れるはずがなく、リリンよりも体が小さいにも関わらず瓦礫の隙間に引っかかって身動きが取れなくなっていた。
「あぅ、あぅー」
俺は必死に声を出してリリンに助けを求める。
「あっ、引っかかってる……もぉー、しょうがないなぁ、私が連れて行ってあげる」
そう言ってリリンは俺の手を引いて瓦礫を通りやすいように誘導してくれた。
瓦礫を通り抜けた先には地下へと向かうための階段があった。
この家に地下室は無いものだと思っていたけど、単に埋もれて見えなくなっていただけだったのか……。
リリンはここに何回も来ているのか、抜けて直ぐにスタスタと奥へと進んでいってしまう。
慌てて着いていくと、そこは、地上からの光が壁の隙間から漏れ出ている幻想的な空間だった。
壁や床一面に色とりどりの花や草のような植物が映えており、非常に美しい。
ただ、これが仕事と言われると少し疑問に思ってしまう。
もしかしてお花屋さんとかなのか? いや、けどそれにしては地味な花が多すぎる。
俺が訝しげに思っていると、リリンは胸を張ってこういった。
「ふっふーん、どう? ここが僕の薬草畑だよ!」
「……あぅ?」
「僕はね、お薬屋さんなんだ! すごいでしょー!」
…………おっと?