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4話 薬


まずとりあえず外に出てみた。

目的はただ1つ、寝ることだ。

寝たいのになんで外に出るのかと思うかもしれない。

だが、これには理由がある。

具体的に何がしたいかと言うと、睡眠薬、または麻酔薬が欲しいのだ。

そう、この体は死んでしまっているからか睡眠ができない。

しかし、死体といっても元々は人間の体だ。

そういった薬によるアプローチはもしかしたら有効かもしれない。

それか、もしかしたら俺以外にもゾンビになっている人がいるかもしれない。

そういった人が見つかれば俺が寝るための方法を教えてくれるかもしれない。

そう思い、俺はすぐさま行動を起こした。

廃屋の外に出てみると眩しい日差しが差し込んでいた。

屋内ではよく分からなかったが、どうやら今は昼間のようだ。

某サバイバルゲームではゾンビは日に当たると燃えてしまったりするが、実際には特にそういうことはなく、普通に外に出ることが出ることが出来る。

ふと、先程まで居た廃屋を見てみると、元々は相当の豪邸だったようで、手入れの形跡が無くなり、廃墟となってしまっている今でも当時の荘厳さが現れている。

そういえば俺が来ていた服もボロボロではあるものの多少煌びやかな面影を保っているややお高そうな服だ、もしかしたらこの死体は元々結構いいところのお嬢さんだったのかもしれない。

まぁ、どちらもこんなにもボロボロになってしまっては意味が無いけどな。

周りを見渡してみると、俺がでてきた家よりかは豪華では無い割と普通の廃屋が立ち並んでいた。

どれもなんというか日本っぽくない見た目をしていた。

人の気配は無く、閑としている。

………希望は薄そうだ。

恐らくここら一体は廃村となった場所か何かなのだろう、どこを見ても手入れした様子はなく廃れてしまっているし、薬屋の残骸か何かがあればもしかしたら目当ての薬品があるかもしれない。

それに賭けるしか無さそうだ。

俺は少し気を落としながらも廃屋を一つ一つ調べていった。

まぁまぁ広い村みたいだし、探していればいずれ見つかるだろう、そう思い俺は注意深く調べていくが、時間だけが空虚に流れていく。


「………あぅ…。」


先程まで燦々と俺の事を照らしていた太陽が身を隠し、辺りが闇に包まれた時、遂に俺は諦めた。

何故なら、ほぼ全ての家を調べ尽くしたからだ。

どこを見ても人の気配は無く俺のようなゾンビもいなかった。

それに加えて目当ての薬のようなものは一切なかった。

というか、よく考えてみればあったとしても薬の知識なんて一切無いためわかるわけが無い。

ラベルかなにかにでかでかと睡眠薬とでも書かれていればいいのだが、あいにく俺はこの世界の文字が一切読めない。

俺は肩を落として大きな溜め息をついた。

何一つ手がかりのないまま1日が終わってしまった。

俺はとぼとぼと元いた豪邸へと帰っていく。

こんな夜中に月明かりだけを頼りになにか物を探すなんて無謀にも程がある。

別にご飯などが必要な訳でも無いし、このままさっきのベットの所で日が昇るまでダラダラしていればいい。

働かないために働くなんてあの会社にいる時と同じじゃないか、そうだ、俺は決意したんだ。

働かないと!


俺はゆったりとした足取りで元いた家まで戻り、ベットへとダイブした。

そのまま深く息を吐くと一気に疲労感が襲ってくる。

このゾンビの体だと肉体的な疲労感というものは一切無い。

だが、精神的なものは別だ。

これだけ探して成果ゼロとなると嫌でも心にくるもんだ。

そのままゴロゴロとしながら心を癒す。

眠ることは出来ていないけど、まぁ、及第点と言った所だろう。

その調子で俺は朝を迎えようとしていた。


……しかし、それから数時間の時がたった時、異変が起こった。

何やら、遠くから足音のようなものが聞こえる。

初めはまたネズミかなにかが居たのだろうと思っていたのだが、その音は明らかにそれよりも大きな何かの歩く音だった。

俺はなるべく物音を立てないようにして布団の中に体を隠した。

そして少しだけ隙間を空け、扉の方を監視する。

外から聞こえて来たその音は次第に大きくなっていき、遂にはこの家の中に入ってきたのか、反響した音が不気味に鳴り響いた。

……もしかして家主か?

いや、こんなボロボロなところに住んでるなんて有り得ないはずだ…………。

まぁ、俺は住んでるんだが、それはゾンビだからという言い訳を使って考えない事にしよう。

となると、泥棒かなにかの可能性があるだろう。

パッと見豪華そうな家だ、何やら良からぬ輩がきてもおかしくは無い。

そんなことを考えている間にもその足跡はどんどんとこの部屋へと近づいてくる。

すると、それに伴って1人の女性の声が聞こえた。


「あー、疲れたぁー」


その声の主はその声とともにこの部屋の扉をガチャりと開ける。

瞬間的にまずいと思い、布団を飛び出るかそれとも隠れ続けるか、どちらがいいか脳内でシミュレーションをした。

だが、そんなことを考えているうちにも時間は進んでいるわけで、声の主は着替えでもしているのか、布が擦れる音が聞こえてきた。

そして、次の瞬間…………俺の体に圧力がかかった。


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