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29話 白金貨


箱を開けると中に入っていた金貨が光を浴びてきらりと光った。


「すごい! 金貨がこんなに沢山!」


リリンが言った通り、そこには何枚もの金貨が入っていた。

しかし……。


「これじゃ、足りない?」


この前リリンに聞いた話では、金貨は少なくとも3000枚は必要だそうだ。

どう見てもこの中にそれほどの量の金貨が入っているようには思えない。

あったとしても100枚…………おそらくそれよりも少ないだろう。

これじゃあどんなことをしたってエリクサーを作る材料を買い集めることはできそうにも無さそうだ。


「いや、待って!」


リリンは箱の中の金貨の中を念入りに見る。

何かあるのだろうか?


「ネムちゃん………これ!」


リリンは俺の目の前に何枚かの硬貨を掲げた。

硬貨はちょうど光のよく当たる位置に持ってこられたからか、リリンが硬貨を持ち明けまた瞬間、きらりと白く輝いた。


「これってもしかして………」

「うん……これ、白金貨だよ!」

「……おー」


俺は心の中で踊り狂った。

白金貨は金貨の1000倍の価値を持つ貨幣だ、それがリリンの手の中には何枚も握られている。

あの野郎、こんな大金を隠し持っていやがったのか…………複雑な心境だ。


「これでエリクサーの材料は買い集められそう?」

「うん! 一応さ、失敗しちゃったりとかも考えたら2回分くらい欲しかったんだけど………これならその分を買っても余るくらいだよ!」

「…………良かった」


これからどうやって金策を練ろうかと考えていたが、それが全て解決してしまった。

レインがどれほどもってくれるかも分からなかったので、これは僥倖だ。

白金貨を持ったリリンは笑顔のまま目から涙を流し始める。


「良かった……良かったよぉ! これで、レインを治せる……!」

「…………そうだね」

「うわぁん、ネムちゃん!」

「………ゎ」


リリンはその状態のまま俺に体当たり…………ではなく、抱きついてくる。

以前はこうなると簡単に吹き飛ばされていたが、進化した今は体幹も強くなったのか、この程度ではビクともしなくなっていた。

やはり、感覚が無いからか、リリンの体温を感じる事は出来ないが、それでもその涙の温かさは何となく伝わってくる。

リリンがくれたこの可愛らしい服が、他でもないリリンの涙によって少し濡れた。

俺は微笑ましい気持ちになってリリンの頭を優しく撫でた。

力が強くなっているため、本当に本当に優しくだ。


その後は、とりあえずネロの家にある食料で今日明日で食べるものと、保存が効きそうな物をピックアップして鞄の中に詰め込んだ。

これで暫くはもつだろう。

他の家のものも取った方が良いかと思ったが、良く考えたらここは襲われたばかりの土地だ、これから何が現れるかも分からない。

現状、足りる分だけの物資は揃ったんだ、これ以上欲張ってもいいことは無いだろう。

リリンもそれには納得していた。

というかまず、リリンは他の人の家の物を盗むことを良しとしていなかった。

あんな生活を続けているって言うのに、こんないい子に育つなんて、どういうことなんだろうか。


そんなこんなで、とりあえず俺たちは元いた家まで帰ってきた。

帰ってきた頃はもう日が落ち、当たりが暗くなっていたのだが、上機嫌なリリンを見ているとなんだかそれらも全部明るくなっていくような気がした。


「それで、こっからどうするの?」


手伝う手伝うとは言ったものの、実際のところ何をすればいいのか具体的なプランを分かっていない俺はとりあえずリリンに今後の計画を聞くことにした。


「えっと、実はね…………僕じゃ多分まだエリクサーを作ることは出来ないと思うんだ」

「……なんで?」

「エリクサーを作るのってすっごく難しいらしいんだ、それを作る為に膨大な量の魔力を使ったりもするし、それを操る力も必要なんだ。だけど、まだ僕には無いから…………修行かな!」


ふむふむ、そうか…………。

つまり、今お金が手に入ったところで何の意味も無かったというわけか……。

今回の件でほぼ全ての障害が無くなったかのようなつもりでいたため、少々ショックが大きい。


「け、けど大丈夫! 私これでも結構な期間修行してきたからさ! これからお金の心配もなくなる訳だし、前までそれに使ってた時間も修行に費やせたら多分大丈夫だよ!」


まぁ、リリンがそういうのならそうなのだろう。

というか、エリクサーを作るのにそんな難しい工程があるなんて初耳だぞ。

元々難しいとは聞いていたけれど、ここまでとは……。

だが、意気込んでいるリリンを見ていると、思いのほかなんとかなるのかもしれない。

…………もう、ここまで来たら一蓮托生だ、最後まで付き合うさ。


「…………頑張ろーえいえい」

「んえ?」

「ん?」


唐突だったから反応できなかったのか、それともそんな文化はこの世界には無いのか、分からないが、とりあえずリリンに耳打ちをする。


「じゃあ、いくよ?」

「う、うん」

「頑張るぞーえいえい」

「「おー!」」


…………俺から始めた割に俺はほとんど声が出ていなかった。

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