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28話 怖くないの?


「ネムちゃん! 見つけたよ!」

「…………うん」


リリンはネロが言っていた場所に目星のものを見つけたらしい。

手には大きな箱のようなものが握られている。

恐らく金庫のようなものなのだろう。


「あれ、鍵がかかってるみたい…………どうしよ、鍵なんて持ってないよ」

「貸して」

「え、うん」


俺はリリンから箱を受け取る。

特に鍵などは持っていないが、今ならおそらく行けるはずだ。

俺は箱の鍵の部分に思いっきり力をかけた。

すると、箱の鍵はバキィという音を立てて壊れた。


「えっ、なに!? どうやったの!?」


その光景にリリンが驚いていた。

驚くのも無理は無い、なんせつい先程まで非力だった人(人間では無い)がいきなりとんでもない力を発揮したのだ、普通は目を疑うだろう。

俺がこの力に気がついたのはつい先程だ。

リリンを追いかけ2階へと登る時、体が異常に軽かったのだ。

自分の体に何が起こったのかは分からないが、とにかく、ネロを食べてからというものの体に力がみなぎっているのだ。

なぜこうなったのかは分からないが、その力の源についてだけは何となくわかっている。


()()


今までは体の感覚などほぼなかったのだが、ネロを食べ終わってから微弱だが少しだけ体内で何かが動いているような感覚を感じることが出来た。

少し温かく、それでいて気持ちの悪いドロっとした物体が身体中を循環しているのだ。

何故それが明確に血だと分かったのかは分からない。

が、何故か俺にはこれが血だということがはっきりと理解できた。

そして、俺はそれを自在に操ることが出来た。

血というのは元々俺の体の一部である。

普通はその流れをコントロール出来るものでは無い。

しかし、今の俺はそれが出来た。

力を込める所に血を集めると、その部位の力が増す、そんな様な具合のことができるようになっていた。

あの時、ネロを殺した時に使っていた力と同じものだ。

その後、リリンの元へ駆けつける前に少しだけ体を動かしてみて、その後リリンから箱を受け取り、今に至るわけだ。

目の前で砕け散っている鍵を見ると、自分の超人的な力を本当に自分が行使しているんだという事を俺に伝えてきているようであった。


「……あ、もしかして、ネムちゃん進化した!?」

「進化? ……あぁ、あの強くなれるっていう?」

「そうそう! 多分そうだよ!」


進化……そうか、リリンは進化条件などは分かっていないと言っていたためそこまで気にしていなかったが、その線もあるのか。

となると、俺のようなゾンビの進化条件は人を食べるという事か……。

いや、まて、だがそうなるとその進化条件が分かっていないというのはおかしくないか?

ゾンビに食われた人間が一人もいないという訳ではあるまい。


「リリン、ゾンビの進化条件って…………あ……」

「ん? なに?」


いけない、今安易に"ゾンビの進化条件って人を食べることだったりする?"と聞いてしまいそうになった。

リリンのあの顔を見れば、ショックを受けているのは明らかだろう。

なのに、考え無しにその事を思い出させるような発言をするのはダメだ。

その元凶である俺がそういうことを考えるのはリリンに失礼かもしれないが、それでもできる限りリリンには幸せになって欲しいんだ。

…………この話は聞かないでおこう。

リリンは俺の事を不思議そうに見るが、なんでもないと言ってそれ以上は話をしないようにした。


「あ、そうだ、それよりもさ、お金!」


リリンは目を輝かせてそう言った。

顔色は未だ悪いままだ。


そうだった、ここに来たのはこの箱に入っているお金が目的なんだった。


「はい、じゃあリリン、一緒にあけよ?」

「うん!」


リリンは嬉しそうに俺の方へ寄ってきた。

さっきの惨状を見ていたのにも関わらず、一切の躊躇いもなくだ。


「……怖くないの?」

「え? どういうこと?」


リリンは本当に分からないといった様子でキョトンとしていた。


「いや、だってさっき……」

「あー……うん、怖くないよ、ネムちゃんだもん」

「…………そう」


気を遣わせてしまったかもしれないな。

まぁ、リリンが俺の事を嫌いになったりしてはいないというのは心から伝わってきた。


「リリン、ありがと」

「え、急に何? 別に僕何もしてないよ?」

「……いいから、ありがと」

「えー、どういたしまして?」

「うん」


リリンは困惑しながらもそう答えてくれた。


その答えに俺はなんとも言えない気持ちになる。

俺がこんなことを言った所でどうせ自己満になる。

そう分かっていても、言わずにはいられなかったのだ。


「……じゃあ、開けよっか!」

「うん」


リリンが待ちきれないといった様子でそう言ったので、俺もそれに応え、箱に向き直った。

鍵以外には装飾も何も付いていないそのシンプルなデザインの箱の蓋の部分に2人で手をかける。

エリクサーを作るために必要なだけの材料を買える程度のお金が入っているかは分からない。

先程持った時もそこまで重くはなかったし、あまり期待は出来ないかもしれない。

それでも、俺たちはその箱に大きな期待を寄せた。


「…………じゃあ、いくよ……せぇの!」

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