24話 お世話
数時間そこら辺を探し続けるとある程度の量の食べ物は集め終わった。
この位なら明日の分もありそうだ。
しかし、2人がかりで探しまくってこの程度の量なので、そう考えるとかなり量は少ないと言えるだろう。
そう考えると安定して食料を確保することが出来たから、騙されているかもしれないとしてもネロの元に通っている方がいいのかもしれない。
ここものちのち解決していかなくてはならないな。
もっと稼ぎのいい場所を見つけたとしても、リリンの健康を害してしまえば意味が無いからな。
道中、俺はそこら辺の毒草をつまんでいた。
やはりその時には特に体に異常があったようには感じなかった。
その毒のいずれもだいたい体にダメージを与えたり気持ち悪くしたりするものだったので、感じていないだけなのかもしれない。
昨日食べていた麻痺の毒草を食べた後には体が動きにくくなるような感覚もあったので、やはり効いていない訳では無いのだろう。
ただ、やはり毒耐性があるのか、リリンの本に書いてあるレベルの効果は出ていなかった。
もしかしたらそもそもその毒というものが本に書いているよりも弱いものなのかもしれないとも考えたが、対照実験を行う相手がいないため、なんとも言えなかった。
まぁ、食べれている以上そこまで深く考えることでもないだろう。
リリンは持ってきたリュックの中にいっぱい詰まった木の実や果実を見てホクホク顔であった。
「んー、あんま食べたことない味かも!」
「美味しい?」
「うん! ネムちゃんも食べる?」
「いい、どうせ味わかんないから」
「…………ねぇ、やっぱり舌治そうよ」
「いい」
自分が美味しい果実に齧り付いている時に俺が横でもそもそと草を食っているのがいたたまれないのか、そんな提案をしてきた。
ごめんよ、リリン、必要なことなんだ、我慢しておくれ。
そこからは昨日のルーティーンと同じであった。
そこで1つ、罪滅ぼしとしても薬草のお世話を手伝う事にした。
「んー、えっとね、この白いお花はね、ここんところにぐーってやって、ここにうぉーっ! ってやるの!」
「…………わかんない」
そうだった、リリンは教えるのが非常に下手なんだった。
恐らくリリン自身もろくに人に物を教わったという経験がない故だろう。
そうやっていてもどうにもならないので、とりあえずその薬草のお世話のために使っている本を見せてもらうことにした。
「…………あれ、もしかしてこの挿絵書いたのってリリン?」
「うん、そうだよ! 言葉ばっかりじゃ僕覚えられないからさぁ」
本を見るとびっくりした。
もちろん文字は一切読めないのだが、その横に描いている小さな挿絵がどうやってお世話すればいいのかとても分かりやすく描かれていたのだ。
とても可愛らしいタッチだが、その植物の特徴をしっかりと捉えた絵で、どこになにをすれば良いのか何となくわかってくる。
「凄いね、絵、上手」
「ふっふー、でしょ!」
「うん、えらいえらい」
リリンがドヤ顔になっていたので素直に褒めちぎると、逆に少し照れた様子になってしまった。
そんな様子に癒されつつも、俺はその本を見て、時折リリンに確認を取りながら薬草のお世話を手伝った。
そこまでの助けにはなっていなかったかもしれないが、それでも猫の手程度にはなれたんじゃないかと思う。
多少は覚えたし、明日からは今日よりもしっかりと仕事ができそうだ。
「あれ、もう終わったの? やっぱり二人でやると早いね!」
「うん、これからは私も手伝うから。」
「ほんと!? 助かるよ!」
前までのリリンは夜遅くまでこの作業をやっていたみたいだし、それによって睡眠時間が削られていたのだろう。
眠りたくても眠れない辛さは身をもって実感している。
しかも、リリンは生理的欲求にも抗いながらの作業だ、そのつらさは計り知れない。
これからは俺もこの作業を手伝ってあげよう。
そうすれば、多少は寝る時間も増やすことが出来るだろう。
それが終わって、今日はそのまま床についた。
今日は外に出かけたりせずに、リリンの抱き枕になる事を甘んじて受け入れることにした。
まぁ、幸せそうなので、おーけーです。
俺も眠りたいが、それは一連の騒動が解決してだ。
今日見た本の中には人間が眠っている絵のようなものも載っていたので、睡眠薬があるのは聞かなくてもほぼ確定だろう。
…………さて、一人の時間ができてしまったわけだ。
こうなると出来ることは何か考え事をすることぐらいしかないだろう。
とりあえず明日の計画を確認しようと思う。
明日はもう一度ネロの居る街へ行ってみるのがいいだろう。
リリンは嗅覚が良いのか、少し遠くの匂いまで嗅ぐことが出来た。
少し面倒かもしれないが、明日もう一度あの場所へ赴き、もう一度匂いを嗅いでもらい、危険ではなさそうなら行ってみよう。
なにか良くない事が起こっていたとしても、1日経てばある程度収まっているはずだ。
リリンを危険な目に合わせたくは無いし、ここの所は慎重にやっていかなければならないな。




