プロ野球の監督として最強チームを作りたい 〜断トツの最下位チームを率いる監督が十年前に戻って ドラフトを大成功させます!〜
こちらの短編、プロ野球ドラフト会議に向けて、『超気持ちいい〜ドラフト大成功!!』の物語をどうしても執筆したくなって、勢いで書いた物でございます。
なので、現在連載中の『戦国憑依! 俺はクッキー』と欠片も関係ございませんっ!
ですが、執筆したものを投稿しないのも勿体ないので、短編扱いで投稿しました。
よろしければ、こちらの物語も楽しんで頂ければ幸いです。
儂はプロ野球の監督である。
現役時代は、数々の日本記録を打ち立てたレジェンドであり、現役を引退した数年後には、引退した球団に請われて、その球団の監督になった。
ちなみに、プロ野球のリーグは、セリーグとパリーグがある。
セリーグにある六球団は、東京ビッグ、東京ドリンク、大阪イエロー、広島レッド、神奈川ブルー、愛知ネイビーだ。
その中で、儂は東京ビッグの監督を十年間続けている。
今日は、リーグ戦、最終日……。
今の時間は、午後九時過ぎ。
最後の打者が三振してゲームセットになった。
「「「ボゲー!」」」
「「「監督、辞めろー!」」」
球場には、東京ビッグのファンの怒号が飛び交う。
今年度、東京ビッグは、なんと、断トツの最下位。
今日、負けたことで、リーグ戦での敗戦数最多の日本記録を更新した。
……儂は、この十年間、何をやっていたのだろう。
十年間で、リーグ優勝は一度もしたことがなく、二位が最高の成績。
今年は断トツの最下位だ。
ファンが儂をなじるのは当たり前のことだ。
儂は、思わず涙が零れた。
儂の大好きな栄光ある東京ビッグ。
この球団に、敗戦数最多の日本記録という大きな汚点を残してしまった。
十年間、儂なりに死に物狂いで、チームを強くするために頑張ってきた。
だが、十年間の集大成である今年の結果は、断トツの最下位。
球団の先人たち、そして何よりファンに申し訳ない。
その時、急に胸が苦しくなる。
胸を押さえたまま、前のめりに倒れる。
「か、監督ー!」
「き、救急車を早く!」
目の前が暗くなる。
こ、ここで、死ぬのか……。
連戦連敗のチームを率いる儂に対して、マスコミからは無能な監督と詰られ、心が休まる日がなかった。
心労が祟ったのか。
できる事なら、ファンのためにも、一度で良いから、優勝したかった。
儂は、そのまま意識を失った。
▽
それで……。
なんと、儂は、十年前のドラフト会議の前日に戻っていた。
最初は、これは夢かと思い、頬を強くつねったが、目が覚めなかった。
頬は、強くつねり過ぎて、ジンジンと痛い。
これは、十年前に意識だけ戻ったのか。
訳が分からない。
だが、混乱はしているが、ドラフト会議まであと半日しかない。
時間がないから、この状況を受け入れるしかない。
儂の前には、明日のドラフト会議にかけられる全選手の書類がある。
儂はそれを睨みながら、呟く。
「そうだ……」
思い出した。
この十年前のドラフト、一人、突出した大学卒の投手がいて、十球団が競合することになった。
名前は、古石 朝陽
儂もその選手に惚れ込み、ドラフトで指名し、なんと、くじ引きで当てることができた。
この時は、嬉しさのあまり、ガッツポーズをしたことを覚えている。
その儂の姿が、全スポーツ新聞の一面を飾っていた。
だが、その選手、東京ビッグで数多くのマスコミやファンに注目され、多大なプレッシャーに晒される中で、無意識に無理をしたのか、大事な右肩をルーキーの時に痛め、残念ながら、そのまま引退になってしまった。
この年、儂がドラフトで取った他の選手も、活躍した年はあったものの、全体的に低調な成績で、十年後には全員が引退していた。
翻って、他の球団はどうだ。
この年は、黄金のドラフト年と呼ばれるほど、入団した選手が各球団の四番打者やリードオフマン、エースなどとして育ち、東京ビッグとの戦力格差が著しく広がったドラフトだった。
今、考えると、この年のドラフトの躓きが、ずっと尾を引いていた。
儂は、誰もいない部屋でボソッと呟く。
「そうか……。儂は、誰が活躍するのかを事前に知っている。明日のドラフトで、その選手達を指名すれば良いのか……」
東京ビッグには、慣例がある。
それは、ドラフトで誰を指名するのかは、監督が最終的に決められることだ。
勿論、スカウトの意見は聞くし、球団の意向も踏まえはするが、最終的に誰を選ぶのかは監督の考えになる。
儂は、手元にある名簿を一人ひとり見ていく。
誰を指名すべきか……。
ドラフト一巡目は、くじ引きだが、その後は、完全ウェーバー制だ。
東京ビッグの今年の順位は四位。
二巡目は、最下位のチームから順に指名していくため、儂が指名するまでに、先に指名されてしまう選手もいる。
だから、ある選手が欲しいと思っても、各球団の指名順位を見越して、指名する必要がある。
各球団に誰が何位で指名されたか……。
十年前の記憶のため、ドラフトで指名された全員の順位は明確に覚えていない。
だが、各球団の主力になった選手が何位で指名されたのかは、よく話題になっていたから分かる。
そういえば、十年前だと育成選手制度はまだできていない年だな。
ドラフトの指名のみ考えれば良い。
儂は、誰を何位で指名すべきか、ドラフトの展開を予想して、ウンウンと唸ることになる。
………………
指名する選手が決まった。
考えすぎて、頬だけでなく、頭まで、ズキズキしてきた。
儂は、こめかみを押さえながら、選んだ選手たちの資料を眺める。
まず、指名一位だ。
これは最初から決まっていた。
高校生の投手だ。
三年目からローテに入り、十年目は、20勝3敗の好成績を残す大エースとして、リーグ優勝に貢献した選手だ。
【十年目の成績(投手)】
[名前:金月 匠海]
[年齢:28]
[防御率:1.81]
[勝利数:20]
[敗戦数:3]
[ホールド:0]
[セーブ:0]
※ドラフト外れ一位で、東京ドリンクに入団していた
指名二位は打者。
高校生だ。
入団後、二年目で頭角を現し、五年目から四番に君臨していた。
七年目からずっとホームラン王に耀いている。
【十年目の成績(打者)】
[名前:前花 菊二郎]
[年齢:28]
[打率:.296]
[安打数:166]
[本塁打数:49]
[盗塁数:1]
※ドラフト二位で、神奈川ブルーに入団していた
指名三位も打者。
こちらも高校生。
五年目までは鳴かず飛ばすの成績だったが、六年目に覚醒。
それから安打製造器と呼ばれ、五年連続首位打者になっている。
【十年目の成績(打者)】
[名前:清遠 安三]
[年齢:28]
[打率:.348]
[安打数:209]
[本塁打数:8]
[盗塁数:15]
※ドラフト四位で、広島レッドに入団していた
指名四位は投手。
社会人二年目からの入団だ。
確か、入団一年目は十試合ぐらいの登板だったが、二年目から中継ぎや抑えの役割を完璧にこなし、毎年六十試合以上に登板しても故障なしの身体から、鉄人と言われていた。
【十年目の成績(投手)】
[名前:御子平 詩郎]
[年齢:30]
[防御率:2.28]
[勝利数:1]
[敗戦数:3]
[ホールド:4]
[セーブ:45]
※ドラフト五位で、パリーグの球団である北海道ゴールドに入団していた
指名五位も投手。
高校生だ。
左腕で150キロをこえるストレートを投げる本格派となり、入団五年目から年10勝以上をあげるエースになった。
【十年目の成績(投手)】
[名前:櫻町 倭]
[年齢:28]
[防御率:3.25]
[勝利数:14]
[敗戦数:8]
[ホールド:0]
[セーブ:0]
※ドラフト五位で、愛知ネイビーに入団していた
最後の指名六位は打者。
こちらも高校生。
入団時は、足が早いだけが取り柄の非力な選手だったが、入団してから鍛えられ、リーグ屈指のリードオフマンに成長した。
十年目は、打率3割をこえ、盗塁王になっている。
【十年目の成績(打者)】
[名前:遠入 良吉]
[年齢:28]
[打率:.308]
[安打数:173]
[本塁打数:3]
[盗塁数:48]
※ドラフト七位で、大阪イエローに入団していた
儂は、考えをまとめた名簿を見ながら、不安な気持ちから大きなため息を吐く。
この指名順位で、他球団より先んじて指名できるとは思うが、儂の記憶違いということもある。
もしかしたら、今回行うドラフトでは、儂みたいに突如、指名を変更する球団がでることもあり得る。
正直、明日のドラフトの結果は、どうなるか分からん。
その答えが分かるのは明日。
儂は、作った名簿をずっと眺めていた。
………………
コンコン……。
名簿を眺めていると、小太りの男性がノックをしてから、儂のいる部屋に入ってきた。
「監督、明日のくじ引きはよろしくお願いしますよっ!」
部屋に入るなり、儂に話しかけてきた男性。
彼は、東京ビッグの球団社長だ。
親会社からの出向で、野球のことは詳しくない。
そういえば、球団社長にも既に古石を指名すると伝えていた。
競合になる前提で、儂に話してきたようだ。
儂は、開口一番、頭を下げる。
「社長、すまん。明日の指名は大幅に変える。一巡目は古石の代わりに、金月を指名する」
「え、えええ! あ、あれほど惚れ込んでいた古石を諦めるんですか!?」
球団社長は、仰け反って驚く。
「諦めるんじゃない。この選手より、もっと欲しい選手として金月を選びたくなった」
「な、なんと」
「こんな直前になって、変えてすまん」
「そ、それは監督がそれが良いと言うなら、私は反対しませんが、スカウトの面々にも古石にすると伝えてましたよね? 皆、混乱するのではないですか?」
「スカウトの皆にも儂から頭を下げる」
「は、はあ……。そこまで良い選手なのですか?」
「ああ、球界一の投手になると思っている」
「な、なるほど……」
「社長が許すなら、早速、スカウト全員を集めて儂から話す」
儂は、驚いている社長に、さらに爆弾を投下する。
「それと社長。ドラフトが終わったら、外様のコーチを雇いたい」
「えええ! 東京ビッグは、これまで他球団出身のコーチを雇ったことはありませんよ!?」
「ああ、それは分かっている。だが、これからの時代、閉鎖的な考えはいかん。能力があるコーチは、外様だろうと積極的に雇うべきだ。球団内外で反対意見が出るようなら、儂から説得する」
「そ、そこまで覚悟を決めているなら、わ、私も力になります……」
球団社長は、額の汗を拭きながら、動揺した顔で頷く。
急に色々言ってすまんな……。
このコーチは、本来、東京ドリンクの投手コーチとして雇われ、金月を大投手に育てあげていくことになる。
十年後は、名伯楽と呼ばれるコーチだ。
確か、金月が入団する直前に、一緒に雇われたはずだから、今はフリーだ。
金月をドラフト指名出来たとしても、指導するコーチによって、将来の成績が変わる可能性はある。
ここは、念には念を入れて、このコーチを雇いたい。
そして、将来が変わる可能性があるのは、古石にも当てはまる。
古石は、東京ビッグで肩を痛めたが、プレッシャーの少ない他球団で育成されたら、怪我をしない可能性もあっただろう。
儂は、古石にもプロ野球選手として、成功して欲しい。
そのためには、古石は、東京ビッグに入団しない方が良い。
いずれにしても明日の結果次第だ。
…………そして、このあと、スカウト全員にも、儂の考えを伝え、不満はあるようだが納得してもらった。
監督一年目の儂の言うことを聞いてくれて、皆には感謝している。
▽
ドラフト会議当日。
儂は、会議が開催されるホテルに、二時間以上前に着いた。
ホテル内に入ってすぐ、『プロ野球 ドラフト会議』と書いてある掲示板を目にして、気持ちが昂ぶる。
会場に向かうと、会場入り口には十二球団の旗が掲げられていた。
東京ビッグの旗の前で、儂は軽く頭を下げた。
そのまま、会場に併設された控室に入り、ドラフト会議が始まるのを待つ。
控室は、落ち着いたクラシックの音楽が流れ、ゆったりと心地よい空間になっていたが、儂はずっと胸の高まりが止まらなかった……。
………………
『それでは、これからプロ野球ドラフト会議を始めまぁぁす!』
アナウンサーの張りのある声が部屋に響く。
会場に設置されている大型スクリーンにオープニング映像が流れ、ライトアップの演出で会場が綺羅綺羅と輝く。
部屋には、各球団の関係者の他、ドラフトを間近に見るための観客席の抽選に当たったファンがいる。
ドラフト会議の舞台に用意された十二の丸テーブルと備え付けられた椅子。
その一つに儂は座っていた。
儂の隣には、球団社長が緊張した顔で座っている。
これから、東京ビッグの運命を決めるドラフト会議の開始だ。
『まず、第一巡選択希望選手!』
アナウンサーが、各球団の第一巡選択希望選手を読み上げていく。
会議室内に、緊張が走る。
観客席にいるファンも、各球団が誰を希望するのか、固唾を飲んで見守っている。
『まず、愛知ネイビー、古石 朝陽』
『北海道ゴールド、古石 朝陽』
『広島レッド………』
そして、東京ビッグの番になった。
『東京ビッグ、金月 匠海ぃぃ!』
「「「えええー!」」」
「「「何ぃぃー!」」」
ドラフト会場が騒然となる。
儂は、古石のことを機会がある毎に褒めちぎっていた。
儂が古石を指名することは、公には宣言していないが、誰もが古石を選択希望すると思っていたのだろう。
会場のザワザワが止まらない。
騒然とした雰囲気のまま、各球団の指名が続く。
指名が公表されるたび、観客席から声が上がる。
「おぉぉぉ!」
「また古石!」
「おーこうきたか!」
………………。
…………。
……。
全球団の一巡目の選択希望が終わった。
その結果は…………。
『希望が重複していない球団は、選手が確定しましたぁぁ! 東京ビッグは、金月 匠海選手だぁあ!』
アナウンサーの興奮した声が会場内に響き渡る。
儂は、アナウンサーの確定の声に鳥肌が立った。
よし、よし、よーし!!
儂が絶対に欲しかった金月が取れた。
嬉しくて、この場でガッツポーズをしたくなったが、競合もしていないのに、そこまで派手な動きをするのはおかしい。
大きく頷くことだけをした。
まずは、ホっとした儂は、十二球団の第一巡選択希望選手を眺める。
儂の記憶通り、古石は東京ビッグが希望しなかったことから、九つの球団の競合になった。
どの球団がくじを当てるのか。
儂は、急にドキドキしてきた。
今回のドラフトでは、東京ビッグは古石を希望しなかったが、前回のドラフトでは希望をして東京ビッグの一員になった大切な仲間だ。
どの球団になるのか、気になる。
九つの球団の関係者が抽選の舞台に立ち、運ばれてきた白い箱、この運命の箱の中から、一枚ずつ、抽選のくじを取っていく。
東京ドリンクの監督がくじを取った時、ファンの一人が『残ってるよ!』と大声を上げた。
観客席の一部から笑いが起きる。
東京ドリンクのファンなのだろう。
全球団がくじを受け取り、一列に並ぶと、そこから漂う独特な緊張感が、儂にまで伝わってきた。
一斉にくじを開けた。
『おおーと! くじを引き当てたのは、北海道ゴールドだぁ! 監督が高々と当たりぐしを掲げているぅぅ!』
北海道ゴールドの監督が、興奮した顔で、当たりくじを高らかに揚げたまま、『よっしゃぁぁ!』と叫んだ。
観客席のファンからも悲喜こもごもの叫び声が上がる。
おお、パリーグの北海道ゴールドか!
投手育成に定評がある球団だ。
大事に育ててくれるだろう。
それに、北海道という広い環境も、プレッシャーが少ないだろうし、良い球団に指名してもらえたな。
北海道ゴールドの監督とは、仲が良い。
十分に注意して育成するように伝えておこう。
自分の席に戻った北海道ゴールドの監督は、待ち構えていたゴールドの関係者達と熱い抱擁を交わしている。
よっぽど嬉しかったのだろう。
……その後、古石を外した球団が、次々と新たな選手を希望していく。
外れ一位で重複した選手は再度、くじ引きだ。
儂は心の中で、儂が希望したい選手の名前を呼ばれないことを祈った。
部屋は、空調がしっかり効いて涼しいのに、汗が止まらない。
儂は、何度も水を飲んだ。
『第一巡選択希望選手、終了ぉぉぉ!』
ふぅ……。
儂が希望したい選手は、他の球団から呼ばれなかった……。
ここまでは、予定どおり。
第一巡選択希望選手が確定し、二十分間の休憩を挟むと、第二巡選択希望が始まる。
次の儂の希望は、前花だ。
前花を二位希望で予定しているはずなのは、神奈川ブルーだ。
今年のリーグ戦の成績は三位だ。
四位である東京ビッグの方が先に希望できる。
儂は、緊張しながら、東京ビッグの希望の順番を待つ。
他球団の希望選手の名前が呼ばれる度に、息が苦しくなる。
………………。
…………。
……。
よーし!
前花は、東京ビッグの順番まで呼ばれなかった。
儂は、前花を希望した。
儂が前花を希望すると、神奈川ブルーの関係者がいるテーブルが急に慌ただしくなる。
舌打ちも聞こえてきた。
前花を先に希望されて、予定が狂ったのだろう。
神奈川ブルーは、前花の代わりに誰を希望するのか。
儂は、表面上は気にしていない素振りで、注視する。
……結局、神奈川ブルーは、儂が指名する予定のなかった大学卒のスラッガーを希望した。
前花は取れた。
……次は三位だ。
また、儂が指名する順番が来るまで、胃が痛くなるほどの緊張感が続いていく。
『東京ビッグ、三位でなんと清遠を指名! 三人連続、高校生の指名だぁぁ!』
アナウンサーが驚愕の叫び声を上げている。
場内のざわつきも止まらない。
よし、よし、よし、よーし!!
清遠も取れた。
儂は舞い上がるほど嬉しいが、顔色は変えずに、テーブルの下で、誰にも気付かれないように軽くガッツポーズをした。
続いて、四位、五位、六位と、他球団の動きを注視しながら、選手を希望していく。
『おお〜と! 東京ビッグは、四位で社会人の御子平を指名ぃぃ! これは隠し玉と言っても良いでしょう』
『なんと、なんと、東京ビッグ、五位も高校生だぁあ! 投手の櫻町を指名だ!』
『……東京ビッグの六位は、これまた高校生の遠入でぇぇす! 東京ビッグ、ここで指名終了! 大学生は一人も指名せず! 社会人も一人だけ! これは驚きました……』
やっと六位までの希望が終わった。
ドラフトの結果だが……儂が欲しい選手は、全員指名することができた!
大成功のドラフトだ。
心地良い達成感が心を包む。
それで、指名できた嬉しさもあるが、疲れも凄い。
ここまで、ドラフト指名で疲れたのは初めてだ。
儂が疲れたのは、前回のドラフトで儂が取った古石以外の選手が、今回も他球団に全員指名してもらえるのか、その心配があったことも大きい。
結果、指名下位だった者も含め、全員が他球団に指名された。
安心した……。
皆、他球団でも頑張って欲しい。
儂は、ドラフトが無事に終わり、安堵の顔で、球団社長に頷く、
社長も笑顔で頷きながら、儂と握手をした。
社長からしたら、古石を回避した指名に思うところはあるだろう。
だが、それを微塵も出さずに笑顔で頷いてくれる社長の気持ちが嬉しかった。
……それで、ドラフト後の評価だが、東京ビッグが最悪との評価が多かった。
社会人は一人指名したが、残りは高校生ばかりの指名に疑問符がついた。
古石の競合から逃げた儂のことをボロクソ言う評論家もいる。
だが、そんな評価など、気にもならん。
指名した選手たちは、球界の宝になる選手ばかりだ。
しっかりと育て上げていきたい。
▽
ドラフト会議が終わった次の日。
儂は、意気揚々と球団社長がいる部屋に向かう。
部屋に入ると、儂を見て椅子から立ち上がる社長。
儂は社長に向かって、満面の笑みをしながら言う。
「社長、そう言えば、欲しいメジャーリーガーがいるんだ。3Aで燻っている打者二人と投手二人の計四人だ。是非、雇って欲しい」
この四人、東京ビッグではないセリーグとパリーグの球団と契約して、日本で大活躍する助っ人たちだ。
他球団には悪いが、先に取りたい。
社長は、儂の突飛な意見にまた驚きながらも、『3Aなら、年俸は、それほど高くないですよね……』と呟きながら、頷いてくれた。
儂の第二の監督人生は、始まったばかりだ!
拙作をお読み頂き、ありがとうございます!
ドラフト会議にスポットを当てた物語、お楽しみ頂けましたでしょうか?
それで、執筆のモチベーションアップのためにも、この物語にもブックマークと★★★★★の応援を頂けると、とっても嬉しく、励みになります!
引き続き、『戦国憑依! 俺はクッキー』の執筆、頑張りますので、よろしくお願い致します。
現在連載中の拙作
『戦国憑依! 俺はクッキー』
https://ncode.syosetu.com/n8411iq/