メイドさんと暖炉の魔人
小説家になろうラジオ大賞5 参加作品。
テーマは「暖炉」です。
2作品目です。
貧しい下級貴族出身の私は、生計のために伯爵家へ奉公にでてました。
厳格な伯爵様には叱責され、令夫人には小言を言われる毎日。
それでも掃除の好きな私は、なんとか毎日のお勤めをこなすのでした。
そんなある日のこと。
旦那様から別荘の清掃を言い渡されました。
3日の間に別荘の隅々まで清掃しておくこと。そして暖炉だけには近づくな。そこは掃除しなくてもよい。
との仰せでした。
1人広大な別荘を清掃する私。
それにしても……この暖炉。
とても立派なのですが、あまりにも手入れがされてなくて埃や煤だらけ。
そこでつい出来心で、掃除をしてしまったのでした。
すっかり綺麗になった暖炉。
その途端、煙が立ち込めて、大きな魔人が現れたのでした!?
「よくぞ暖炉を清めてくれた。俺は暖炉の魔人、なんでも願いを3つ叶えてやろう」
「あぁ、なんてことを……せっかく綺麗にしたのに」
「さあ言うがいい」
「私はメイド。ご主人様にお仕えする身。主を差し置いて、願いなどもってのほかです」
「何か一つくらいあるだろ?」
「無いです」
「困るんだよ。ノルマがあってだな」
「私も清掃のノルマが」
「なら、この屋敷を綺麗に」
「それは私の責務。他人の力など頼りません」
「めんどくせー奴だな」
「突然願い事と言われましても」
「例えば、この屋敷の持ち主。あれは俺の魔法で出世したんだぜ。一つ目が宮殿で次が財宝で最後は女だったな」
「分かりました。では私は……
広大な領地と宮殿を……」
「土地と建物と?」
「所有される優しく聡明な御方で……」
「男と?」
「財政状況も豊で……」
「膨大な財宝、でいいんだな?」
「お給料の良い、食事と寝る場所のある環境で奉仕したいです」
「あ?」
「今も不満ではないのですが、いささか賃金の面で……」
「その願い……面倒臭いから、王族と結婚する、の一つで全部叶うんじゃね?」
こうして私は、面倒臭がりな魔人の力によって王子様と結婚することになったのでした。
王子様はとても聡明でお優しい方なのですが……
「次はどこを掃除しましょう?」
「掃除はね、メイドに任せなさい。君の仕事じゃないんだよ」
「すみません。つい昔の癖が」
私に掃除をさせてくれません。
「おーい、ご主人様よー」
「私は主人ではありませんよ」
「俺にとってはご主人様なんだよ」
しかも、暖炉の魔人も私と共に引っ越してきたのでした。
「願い事、まだ1つしか叶えてないんだよ。早く次を言ってくれよ」
「私、今のままで十分幸せですよ」