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ちらし寿司の日

作者: 山村

 玄関の鍵を開け靴を脱いだところでグッドタイミング。炊飯器から炊き上がった旨を知らせるシンプルな音が聞こえた。すぐに開けたいけど我慢我慢。

 とりあえず買い物袋を台所に下ろして、背をっていたリュックを自室へ置いてくる。しっかりと手を洗いエプロンを身に着け袖を捲くれば準備完了、調理開始だ。

 帰路がてらスーバーで購入した値引きシールが貼られた刺身の盛り合わせと、絹さやとボイルエビ、その他必要な材料を袋から取り出して、他の物は冷蔵庫へ。

 まず先にするべくは土台の準備である。炊飯器のスイッチを切りふたを開ければ炊き立て特有の良い香りが鼻腔を通って肺いっぱいに満たされる。お腹すいた。

 中の釜を取り出し、今日買ってきた箱の中から袋を取り出す。世の中は着実と便利になっている。炊きあがった米に“ちらし寿しの友”をかけて混ぜるだけで具入りの酢飯が出来てしまうのだから。テレビショッピングの如くあっという間に土台が出来上がってしまった。冷めるまでの間に具材の準備だ。

 絹さや用に片手鍋に水を入れて火にかけておき、沸騰するまでの間に筋を取っておく。本当に細かい下処理だがこれをしておくのとおかないのでは食べ易さに結構な差が出るのだ。それが終わっても未だ湯は沸騰はしておらず。他の作業へ。

 生卵を2つ、ボウルに割り溶いて砂糖小さじ2と塩を少々入れてよく混ぜる。ちなみに“一つまみ”は親指と人差し指の先で摘まむ量のことで、“少々”より量はやや多めらしい。この間ネットで調べたらそう書いてあった。閑話休題。弱火で熱した卵焼き用フライパンに油をひいて卵液の三分の一程を入れて薄くなるよう手早く傾ける。

 箸で縁をちょいちょいと捲って片面が焼けたのを確認した後にこれをひっくり返すのだがこれが中々難易度が高めである。余りにも端を持ちすぎると卵の重みで千切れてしまうし、かと言って真ん中から持ち上げるのは熱くて至難。理想はクレープ屋のような綺麗な出来栄えだが、残念ならが我が家には縁の無い鉄板もスパチュラも無い。間違っているとは自覚しつつも箸を持っていない左手も使って勢いでひっくり返してしまうことが多い。今回もそうだ、少しシワが出来てしまったがこれくらいならば及第点だろう。裏面も焼けたらオッケー、皿に移してあと二枚分同じ工程を繰り返す。

 横で鍋が沸騰し始めたので絹さやをほんの数分茹でてザルにあけて冷ましておく。

 それから薄焼き卵を三枚焼き終えたらある程度温度が下がるまで放置。その間ボイルエビの殻を剥き終えたら刺身共々小さく切る。ついでに絹さやも半分に切っておく。

 ベランダにあるプランターから大葉を数枚収穫し、水洗いしてキッチンペーペーで水気を切ってから縦に半分に切ってか横にして千切りに。

 錦糸卵も良い感じに温度が下がったので縦に半分に切り、後は横向きにして千切りに。卵焼き用のフライパンを使っているので均一の錦糸卵が出来るである。

 そうこうして具材が用意できたので二人分のお皿を用意して酢飯をよそう。彼女はちらし寿司が好きだから、気持ち多めに。その上に錦糸卵を敷き詰めて、刺身、ボイルエビ、絹さやを文字通り散らしていく。最後に千切り大葉を乗せればちらし寿司の完成だ。

 みそ汁は今朝作ったのを温めなおしている時にタイミング良く彼女が帰ってくた。


「ただいまー。あーっ! ちらし寿司!」

「おかえり~。今日はちらし寿しの日だから頑張りました!」

「やったー。ちらし寿司好き~」

「僕は?」

「大好き」

「……」


 自分から訊いておいて照れてしまった。僕の奥さん躊躇というものが無さすぎる。まぁそこも惚れた理由の一つなのだけれど。


「あ、照れてる。可愛いー」

「……さっさと着替えておいで」

「はーい」


 仕事着姿の彼女が自室へ入って行くのを見送って冷蔵庫から麦茶ポットを取り出し頬に当てたらすごく冷たくて。顔の熱も直ぐに引ける気がした。

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