かえりみち
ちりん、ちりんと鈴が鳴る。
わたしは、ぼくは、おれは、おのれは、ここにいるとでも言うように。
夏の日差しが照り付ける山道を歩くは俺一人。
ちりん、ちりん。
ちりん、ちりん。
登っている筈なのに下っている。
山道とはそういうモノである。
「おにいさん、ぼくも一緒に行っていい?」
声に振り替えれば麦わら帽子を被った少年が一人いた。
「いいぞ。歩き疲れたならおぶってやるからな」
その答えに少年は嬉しそうに笑顔を作る。
ちりん、ちりん。
ちりん、ちりん。
「ねぇ、そこのおにいさんたち?わたしも一緒に行ってもいい?」
しばらく歩いていると今度は半袖短パンの少女がいた。
「いいぞ。では、手をつないでいこう。少年もいいかな?」
「うん!」
三人で手を繋いで山道を歩いていく。
ちりん、ちりん。
ちりん、ちりん。
「おや、いつの間にこんな山の中に?」
再び人に出会った。
年老いた老人だった。
どうやら彼はここが何処か分からないらしい。
「おじいさん、こんにちは。ここはかえりみちですよ。」
「帰り道?儂は寝たきりでこんな外に出る事が出来るような身体でもなければ……。」
「こうして話が出来るような意識もなかった?」
「そうじゃそうじゃ。婆さんに先立たれてしまってのう」
「では、一緒に行きませんか?一人で居るよりも多い人数で居た方が良いですよ」
「ふむ、ではお邪魔させてもらうとするかな」
ご老人がそういうと、少年少女は彼に話を聞きながら歩き始める。
「帰り道はこっちですよ。もうすぐ川が見えてくると思うのですが」
かえりみちはまだまだ長そうだ。