File:008 DORAGON QUEST Ⅲ ~そして伝説へ…~
今回は1988年2月にエニックスから発売された、
ファミコン用ソフトである『ドラゴンクエストⅢ ~そして伝説へ…~』
について語ります。
私がプレイしたことがあるのは、リメイク版の1つである
スーパーファミコン用ソフトのものだけなので、評価や感想は
それに伴ったものであることをご了承下さい。
■このゲームに対する、作者の個人的な評価
難易度(バトル):C
難易度(その他):C
面白さ(バトル):B
面白さ(その他):B
スピード感(バトル):B
スピード感(その他):C
多様性(バトル):C
多様性(その他):C
RPGの金字塔の1つである【ドラゴンクエスト】シリーズの
中でも特に有名な作品で、その発売日に店舗へ
殺到している人々の姿などが、いわゆる『時代の象徴』
のように扱われることも少なくありません。
ただし、有名なだけに、ゲームに馴染みのない人が
『初心者向け』というイメージを持つこもあるでしょうが、
はっきり言って、”それはどうかな?”という気がします。
少なくとも、この文章を書いている2023年現在においては、
本作よりも遥かに『初心者向け』と思われる作品が
いくらでも存在しています。
①”前作の過去”の物語
本作のストーリーは、前作であるドラゴンクエストの1、2の
過去を時間軸としています。
ナンバリングとしてはこちらの方が上であるにも関わらず、
前作の未来ではなく、過去の物語。
こういった形式は、別段珍しいものでもないのかも
しれませんが、当時の自分としては革命的というか、
正直な所、いまいちピンときていない感がありました。
やはり時間の感じ方というか、捉え方というものは
歳を重ねるごと、経験を積むごとに変わってくるもの
なのだなぁ…という気がします。
幼いときの自分にとって、”過去”とは異世界そのもので、
”現実とはかけ離れたもの”という感覚がありました。
恐らく昔の自分は、物事を客観的に捉えるという能力に
欠けていたのではないか――という気がします。
そういった能力が備わった人であれば、そういった過去で
あったり、未来であったりというような時間軸の物語も
素直に受け止められるというか、没入できるもの、
しやすいものなのではないでしょうか。
そしてもう一つ、自分と年齢や性別、あるいは性格などに
大きな差異のあるキャラクターには、なかなか感情移入が
できなかった記憶があります。
これも恐らく、主観でしか物事を捉えにくい、当時の
自分の物の見方というか、考え方によるものが
原因なのでは…という気がしています。
②”職業”の概念が追加
ドラゴンクエストが1から2へと進んだとき、様々な
『革命』がありましたが、その中でも特に大きなもの
といえば、”仲間”という概念の追加でしょう。
これにより、戦闘に関してプレイヤーが試行錯誤
すべきことが大幅に増え、また『仲間と共に戦う』
というドラゴンクエストの基本的なイメージの一つが
できあがりました。
そして2から3へと進んだときにも、これまた様々な
変化がありましたが、その中でも注目すべきものが、
”職業”という概念の追加です。
前作の2でも、3人の主要メンバー達にはそれぞれ、
はっきりとした個性、役割というものが感じられましたが、
本作においてはその部分を『職業』というカテゴリー
でしっかりと区分し、このシステムはのちに続く
他のナンバリングの多くにも採用されています。
屈強なパワーとタフネスを誇る『戦士』、回復・補助系
の呪文によるサポートが得意な『僧侶』、攻撃系の呪文で
敵を一掃できる『魔法使い』など、いずれも長所と短所が
はっきりと分かれているため、それぞれが補え合えるような
編成や戦術が、自然と要求されてきます。
また、個性豊かな様々な職業が存在することにより、
主人公である『勇者』の特別感が強調されるように
なったことも、注目すべきポイントだと思います。
『主役』ばかりが登場するRPGというのも、決して
なくはないものだとは思いますが……やはりゲームにせよ、
演劇にせよ、料理にせよ――『主役』を絞り、他のものを
『脇役』にきちんと振り分けることは、美学の一つである
と共に、魅力的な作品を作り上げるための
有力な手法であることは、間違いないでしょう。
③”親近感”の構築
【ドラゴンクエスト】シリーズの特徴の一つとして、RPGの
分野においては群を抜いているといっても過言ではない、
その圧倒的な”親近感”が挙げられると思います。
”親近感”を構築する要素は様々あり、一概に何が
最大の決め手とは断言しにくいものです。
無論のこと、有名であること、”みんなが知っているもの”
であることも、親近感を沸かせる重要な要素の一つです。
本作であれば当然のことながら、鳥山明さんのイラストや
すぎやまこういちさんの音楽、そして堀井雄二さんのシナリオ
といった、各分野におけるスペシャリストの方々の力が
多大に影響していることも間違いありません。
しかし、私があえて注目したポイントは、本作も含めた
RPGの分野内における『移動手段』の違いです。
ドラゴンクエストシリーズでは3から初登場となった、
『ルーラ』という呪文による、移動手段があります。
これは簡単に言えば、唱えた瞬間に特定の町や村などに
移動できる呪文で、要するに呪文を唱えられる状況であれば、
好きな時に”ワープ”ができるということです。
この呪文が加わったことにより、ドラゴンクエストシリーズの
親近感は、飛躍的に上がったように思えます。
”世界全体を自由に行き来できる”という点で考えれば、
他の多くのRPGでも、そういった手段の一つや二つは
あるものですが…”いつでも自由に、これまでに訪れた場所に
瞬時に行くことができる”というのが、ルーラという呪文の
大きな特徴。
言うなれば、新たな町や村を訪れるたびに、『地元』が
一つ増えていくような感覚――とでもいうのでしょうか。
これは、現実世界においては決して有り得ないもので、
正にゲームならではの感覚という気がします。
逆を言えば、その感覚があるということは、『現実世界
と一線を画すものである』とプレイヤーに認識されやすく、
要するに”リアリティ”の喪失に繋がる可能性が
高くなるのでは――と推測することもできます。
これはやはり、そのゲームに何を求めているか、そこで
何を表現したいか、という作品のコンセプトによって、
『そういったもの』を採用するかどうかは分かれてくるのでしょう。
この辺りで一区切りし、続きはまた別の機会にでも
語ろうかと思います。
よろしければ、この作品についての皆さんの評価や
感想もぜひ、聞かせてください。
それでは、またの機会に。