File:004 ドラえもん ギガゾンビの逆襲
今回は1990年9月にエポック社から発売された、
ファミコン用ソフトである『ドラえもん ギガゾンビの逆襲』
について語ります。
この作品は無論のこと、超が付くほどの有名な漫画である
『ドラえもん』を題材にした、スタンダードなタイプのRPGです。
『大長編ドラえもん』と呼ばれるシリーズのいくつかの
世界観やキャラクターが、原作を忠実にした形で登場する
後日譚、アナザーストーリー的な内容となっています。
ボリュームや戦闘バランスなど、『ドラえもん』のキャラクター
ゲームとしては勿論、ファミコンRPGの中でも
なかなかの完成度を誇っているように思えます。
■このゲームに対する、作者の個人的な評価
難易度(バトル):D
難易度(その他):E
面白さ(バトル):C
面白さ(その他):C
スピード感(バトル):C
スピード感(その他):C
多様性(バトル):D
多様性(その他):E
RPGとしては、全体的に無難にまとまっているような
印象ですが、原作である『ドラえもん』の魅力というか
世界観に違和感なく入り込める雰囲気があり、
そういった部分がこの作品の価値を高めていることは、
間違いないでしょう。
とりあえずはレベル(この作品の中では『勇気』)を
充分に上げていけば、これといった戦術などは練らなくても
攻略を進めていくことが可能なため、頭を使うのが
苦手な人や、RPGに不慣れな人などにも
お勧めできる作品です。
①秘密道具
『ドラえもん』と聞けば、必ず連想される言葉の
一つがこれでしょうが、当然の如く、この作品でも
数多くの秘密道具が登場します。
このゲームには、他のRPGによく見られる『魔法』や
『特技』などといった特殊なコマンドは存在せず、
その代わりとばかりに、『秘密道具』を駆使して
戦闘や冒険を有利に進めていくことができます。
『スモールライト』で敵の攻撃力を下げたり、
『お医者さんカバン』で状態異常を回復したり、
『どこでもドア』で一瞬の内に別の場所へ移動したり
…と、秘密道具を有効に活用していくことが
攻略をスムーズに進めるためのカギとなっています。
また、武器や防具などの装備品にも、原作で
秘密道具として登場したものが数多く存在し、
聞いたことがあるなぁ、と感じることも多いでしょう。
ただし、本作では武器や防具といったものに
特殊な効果が存在するものはありません。
(装備したキャラの攻撃力・防御力が上下する
以外の効果は存在しないという意味で、例えば
防御力が上昇するが、攻撃力が減少してしまう
といった特性を持つ装備品は存在します。)
②ストーリーとキャラクター その1
前述した通り、魔法や特技などに該当する
ものが存在しないため、本作におけるキャラクターの
個性というものは、薄くなっているような印象も
ありますが…それでもパラメータにある程度の差異は
感じられますし、例外的にはなりますが、それ以外の
部分においても、キャラの個性を浮き彫りにしている
要素がいくつか存在します。
代表的なものが、ネズミ系の敵キャラに遭遇した際、
ドラえもんが必ず麻痺してしまう現象で、本作を
プレイしたことがある人なら、幾度となくこの現象を
目の当たりにしていることでしょう。
ドラえもんはゲーム開始時からパーティーメンバーとして
行動し、常に戦力の一つとしての役割を担っているため、
この現象は決して軽視できず、攻略難度、及び攻略を
進める上でのスピード感に、大きな支障を与えています。
しかし、それ故にこの仕様は、本作の中でも
インパクトが大きく、この作品における個性の一つとして
プレイヤーの心に色濃く残ります。
こういった『負の要素』が、その作品の存在感を
より高める結果になることは決して珍しくなく、
人間がどれだけ『不完全なもの』に心を惹かれやすい
のかが、よく分かります。
③ストーリーとキャラクター その2
上記のドラえもんとネズミの関係性についても
そうですが、他にも原作をよく知っている人であれば
『こんな場面あったな』とか、『こんな台詞あったな』
と思わせるような部分がいくつもあり、原作のファンで
あればあるほど、本作の魅力を十分に
堪能できることでしょう。
例えば、とあるイベントの際にドラえもんがのび太に
対して発する※1『人間、何か一つは取り柄が
あるもんだね。』といった、原作ではお馴染みの
毒舌ぶりを発揮する場面や、『ネコ型ロボットである
ドラえもんが、タヌキに間違えられる』といった
これまた原作では有名なエピソードが踏襲されている
場面などが見受けられます。
※1 ニュアンスは合っていると思いますが、
正確な台詞ではない可能性があります。
この文章を書いている現在(2023年5月)でも
国民的と呼べる人気と知名度を誇る『ドラえもん』
ですが、本作の発売当時の頃は、更により一層の
存在感を示していたことが予想されます。
だからこそ、ファンが有する原作に対する愛着度
というか、尊敬の念のようなものは凄まじく、
制作スタッフの中にも、そういったものが少なからず
あったのではないかな…という気がします。
④ストーリーとキャラクター その3
前述した通り、本作は『大長編ドラえもん』と
呼ばれるシリーズの世界観を基盤としたものと
なっているのですが、『大長編ドラえもん』自体が
いわゆる『冒険』をテーマの1つとして描かれている
ものがほとんどなので、RPGを創作する上での
土台とするには、持ってこいの逸材と言えます。
本作では、のび太達が暮らし、日常を営んでいる
世界の他に、『魔界』、『海底世界』、『地底世界』、
そして『古代の日本』が冒険の舞台となります。
冒険の目的は、プロローグにおいて時空間に
放り出され、それぞれの世界に散らばってしまった
のび太たち4人を救出することと、それぞれの世界で
巻き起こっている『問題』を解決することです。
プレイヤーは、本作のみに登場するオリジナル
のキャラクター(男女の選択が可能)を主人公、
自分の分身として投影するかたちになります。
多少の台詞は存在するものの、のび太や
ドラえもんなどと比較すると、極めて無難というか
これといった特徴はないキャラクターなので、誰が
プレイをするにしても、没入感は損なわれにくいでしょう。
この辺りで一区切りし、続きはまた別の機会にでも
語ろうかと思います。
よろしければ、この作品についての皆さんの評価や
感想もぜひ、聞かせてください。
それでは、またの機会に。