File:020 【特集】『街』と『428』、2つのゲームを比較してみる
今回は1999年1月にチュンソフトから発売された、
PlayStation用ソフトである『街 ~運命の交差点~』――
そして、2008年12月にセガから発売された、
Wii用ソフトである【428 ~封鎖された渋谷で~】
という二つの作品について語ります。
これらの作品は、”サウンドノベルという形式”、”実写による
映像をゲーム画面の主軸としている”、”渋谷を舞台とした物語”、
”複数の主人公が存在する”などの共通点があり――公式に明言は
されていないものの、『【428】は【街】の続編である』という認識が、
プレイヤーの間では浸透しているようです。
そして2025年の4月28日、この『第3作目』に該当するであろう
作品を創作するための”渋谷実写アドベンチャープロジェクト”が
始動したことを知り――それを記念する意味でも、こういった文章を
書いてみたくなった次第です。
以下の文章は、もともと【428 ~封鎖された渋谷で~】をプレイした
感想として書いていたものがベースとなっており、文の中にある
『本作』とは、【428】のことを指しています。
全体的に【街】の方を支持し、【428】の方をけなしているような
文面に見えるかもしれませんので、【428】が好きな人には
不快な思いをさせてしまうかもしれませんが…それぞれのゲームを
プレイしたときの自分の感覚を、なるべく素直に、前面に出して
書いたつもりです。
ちなみに、★で評価するとしたら――【街】の方は4.6点、【428】の方は
4.2~4.3点…といったところでしょうか。 ”どちらも、高い評価を受けて
当然の作品”という気持ちがあることには、違いありません。
①ゲーム開始から、これまでの気持ちの移り変わり
本作は、以前に私が紹介した【街 ~運命の交差点~】
と同様のシステムが基盤としてあり、世界観も
”それから、10年後の渋谷”であることが推察されます。
【街】が大好きな作品であるがゆえに、期待と共に
不安も色々とあったため、なかなか手を付けなかった
作品でしたが――ついにプレイし始めました。
そして、冒頭から小一時間ほどプレイしたときの
自分の心境としましては…正直、微妙でした。
『よく出来ている』、『洗練されている』という印象を
抱くと同時に、【街】をプレイしているときに感じていた
あの独特の感覚は、ほんの僅かしか生まれず――
不満と物足りなさを感じずにはいられませんでした。
こんな感じのスタートであったため、それからはあまり
プレイしようという気にはなれず、気が向いた時に少しずつ
やっていくような感覚で、ゲームを進めていきました。
しかし、ある程度ストーリーが進んだところで、多少の
心境の変化が訪れます。 それは、メインキャラクターの
一人である【タマ】の登場です。 彼女のストーリーにある
ユーモアに溢れた雰囲気は、それまで本作をプレイしている
間にはあまり感じ取れなかったもので――個人的に、
このゲームに不足しているもののように感じていました。
少しやる気を取り戻した私でした…――が、残念なことに
それもそう長くは続かず、またプレイするのが億劫な時期に
突入してしまいます。 それでもどうにか、気が向いたときに
コツコツと話を進めていくわけですが…。
ある程度ストーリーが進んだところで、再びやる気が
湧き上がります。 物語の軸となっている『事件』の輪郭が
少しずつ浮かび上がり――その影響が、それまで直接的な
関りのなかったキャラクター達にも及びはじめたのです。
【街】にも全くなかったものではありませんでしたが、本作で
感じられた、その”空気の変貌”は甚大で――プレイヤーを
一気にその世界へと引きずり込むような力を感じさせるものでした。
そこでようやく、私は気付きました。
”このゲームは、【街】とは違う作品と考えてプレイするべきだ”
――ということに。
②2つの作品の比較と対比
ゲームを開始してまず”おっ”となったのは、冒頭の部分の
ストーリーが、チュートリアルと共に進められることでした。
その頃の作品としては珍しいことでもないのかもしれませんが、
【街】ではそういったものはなく――いきなり8人もの主人公の中から
1人を選ばなければいけない点を踏まえても、”大した説明も
ないまま、放り出された”ような感覚が強かった記憶があります。
こうしたチュートリアルのあり、なし、にはお互いに長所と
短所があります。 『あり』の方は当然のことながら、ゲームの
システムや操作方法について、より分かりやすく、実感的に
理解してもらうことが出来ることが利点です。
しかし、同じタイプのゲームでありながら、『なし』の方を
プレイしたことがある私としましては、あの突き放されている
というか…”誰かの管理下に置かれていないもの”を踏破
しているような感覚が、割と好きだったりします。
例えるなら、博物館を訪れて展示品を見たときに覚える
ような感覚と、特にこれといった情報もないような場所で
地面を掘り起こし、『何か』を発見したときに覚えるような
感覚の違い…といったところでしょうか。
『未踏のもの』に触れている感の違い――ともいえそうです。
これがまず、冒頭から感じた【428】と【街】の違いの一つ。
そして、冒頭から感じた”違い”をもう一つ挙げるのであれば、
同じ『刑事』という役職にありながら、全く異なる雰囲気を持つ
2人の主人公――本作に登場する【加納】と、【街】に登場する
【雨宮桂馬】の、2人の対比です。
真面目で勤勉、誠実で正義感に溢れ、恋人と結婚するために
その父親に理解を求めようとする加納の姿は、いかにも
刑事ドラマで、若手の二枚目俳優が担当するようなタイプ。
一方の桂馬は、オタクでゲーム好き、正義感に溢れる一面が
あるところは共通しているが、パトロールなど普段の勤務態度に
関しては、とてもじゃないが真面目にこなしているとは言い難い。
いわゆる、『クセは強いけど、いざという時は…』なタイプである。
【街】の続編みたいなもの、という感覚でプレイし始めた私としては、
まずどうしても、この2人を比較してしまいました。
そしてこれは無論のこと、各々の好みの差にもよるでしょうが…
私的には、『個人』として面白いのは、間違いなく桂馬の方に感じます。
加納はオーソドックスでありがち、プレイヤーが”はぁ?”と
思うような言動をすることは滅多にない、良くも悪くも意外性の少ない、
安定感のあるキャラクターといえるでしょう。
とはいえ、どちらが上とか下とか言うつもりは、一切ありません。
『意外性の有無』とはすなわち、クセの強さ。 特性の一つ。
素材としての優劣があるわけはないし、また、『料理』を作る上では
それぞれに違った役割が充てられるのが当然です。
まぁ、あえて一つ言うのであれば、桂馬よりも加納の方が
”扱いやすいキャラ”であることは確かでしょう。
そしてそれは、加納だけに限った話ではなく――【428】に登場する
多くのキャラクターには、そういった印象があります。
良く言えば、一体感があり、マイルドな味わい。
悪く言うと、個々の印象が薄いというか、『物語』の中から
はみ出ようとするかのような…何と言いますか――『底知れなさ』
のようなものが感じられない。
この『底知れなさ』が、【街】をプレイしている際には、
随所に感じられたように思います。
不気味さ、危うさ、得体の知れなさ…”この先に何が待ち受ける?”
と思わせるような、何か。
それは、【428】でいうところの『黒幕』や『真相』といった類の
ものとはまた違った――もっと計り知れないような、何か。
何十年も連載が続き、ほのぼのとした雰囲気が常に漂うような
作品の中で、突如として凄惨な殺人事件が描かれるかのような
――極めて異質な『裏切り』。
そんなものが待ち構えているのではないか…という。
そういう感覚が、【街】をプレイしているときにはあったのです。
物語を構成し、成立させるための『駒』でしかないはずの
キャラクター達が、その『枠』から外れ、それ以上の”何か”に
変化してしまう…。 そんな雰囲気が、感じ取れたのです。
語り続けると止まらなさそうなので、とりあえずはこの辺りで
一区切りとさせていただきます。
冒頭にも同じようなことを述べましたが、全体的に【街】の方を
賞賛するような文面となっているように思えたかもしれませんが…
”【428】の方は駄作”などといった感覚は、全くありません。
むしろ【街】と共に、未来永劫、『名作』として語り継いで欲しい
作品の一つであるという想いを、しっかりと抱いていますし…
もしも私が、この二つの作品を他の誰かに紹介する際に、
”【街】の方が面白いよ”なんて言い方は、絶対にしないでしょう。
言わずもがな、ゲームなどといったものは、その作品をプレイした
時期や環境――そして何より、”どちらの作品に先に触れたか”など
という要素によって、評価や印象は、大きく異なってくるものです。
それでもやはり、『好み』というものはどうしても、そういった要素が
絡む中でこそ形成されていくものであり…絶対的な程に『客観的な視点』
で見て、作品を評価できるような人は、この世に存在しないはずです。
それはつまり、”一人の意見や感想”だけで、その作品の全容を
掴むことは、100%不可能であるとも言い換えられます。
その作品が持つ『力』をより深く知りたいというのであれば、自分が感じた
『想い』をしっかりと尊重しつつも、より多くの人――より多くの意見や感想を
募るということが、大事なのでしょう。




