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呪われたお正月

作者: 恵梨奈孝彦


 元日、新田タケシが新年の挨拶に来た。まだ28の会社の後輩だ。先輩というだけで上司でもない(まだそんな歳ではない。オレはまだ34だ)俺の家に挨拶に来たのは、単に家が近いからだろう。

 この歳になっても独身のおれと違って、タケシはすでに妻帯者だ(もっと遊べばいいのに)。奴は娘のサヤカを連れてきた。

 お年玉を渡さなきゃならんな。

 サヤカは小さな晴れ着を着て、スーツ姿の父親の大きな体の隣で、うちの狭い玄関に姿勢よく立っている。

 見れば見るほどかわいい子だ。今年で三歳だそうだ。

 奥さんに会ったことはないが、サヤカの大きくてぱっちりした目と隆い鼻が、タケシによく似ている。大きな眼が微妙に垂れている以外は、生き写しと言っていい。タケシもまためったにいないほどのイケメンなのだ。

「かわいいなぁ」

 その後、こんなことを言ってみた。

「おまえにこんなかわいい子どもが生まれるなんて…。本当におまえの子か?」

 まあ、これだけ似ているわけだから、これくらいの冗談は言ってもいいだろう。

こういうことを言れた男は、むきになって否定するのも野暮になるからか、曖昧な返事しかしない。もしかしたらムッとしているのかもしれないが、独身の俺にはそういう気持ちはよくわからない。

「その質問には自分は答えられません」

 しまった。こいつはそういう奴だった。まわりが迷惑するほどキマジメなんだ。

 するとなぜか、サヤカの顔がくしゃっと歪んだ。

「ちがうもん…。サヤカはパパの子だもん! みんな、パパの子じゃないとかいうけど、サヤカはパパにそっくりなんだもん! サヤカは、拾いっ子じゃないもん!」

 サヤカが大声を上げて泣き出した。

 …困った。どうやら、おれが言ったような冗談をあちこちで言われているらしい。誰がどうみても似ているから言える冗談なのだが、子どもには通用しないようだ。

 タケシがサヤカを抱き上げて言っている。

「そうだ! サヤカはパパの子だ! パパとママの子だ!」

 …本当に困った。

「その…すまん」

「いえ、自分に謝られましても」

 …そりゃそうだろうけど、ほかに言いようがあるか? サヤカに「おまえはタケシの子だ!」とか言えばいいのか?

「おまえはタケシの子だ!」

 …泣き止まない。

「今日はここでお暇します。さっきの質問には妻に答えさせますので!」

 質問? などと考えている間に、タケシは泣きじゃくっているサヤカを抱えて去っていった。

 …お年玉を渡せなかったな。

 その夜、一度も会ったことのないタケシの奥さんから電話があった。平謝りする俺に、聞いたこともないような悪口雑言、罵詈雑言で30分以上罵倒してきた。

 …………なんて日だ!

 


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