水色の町 3
「すごいっ。色が変わったよ。」
「あんなにへんな色だったのに、きれいな色。」
目をまんまるにする灰色の子どもたちに、水色の少女は「でしょう。」と笑うと、着ているワンピースのすそをちょいとつまんでみせました。
「私の服も、お母さんが染めてくれたのよ。何度も何度も、ていねいにね。」
そうしてくるりと一回転。その拍子に、服の中に隠れていたネックレスがきらりと光りながら出てきました。
「あら、出てきちゃった。」
「きれいな石だね。それも水色なの。」
水色の少女がつまんだネックレスの先についた石を見て、灰色の男の子は「わあっ」と歓声を上げました。
「ううん。これはちがう色。お父さんにもらったの。」
「それは、何色っていうんだ。」
水色の少女から少し離れていた黒い男も興味津々で尋ねます。少女はまた首を横に振りました。
「知らないわ。この色を持ってる人は見たことないもの。」
つるつるとしたまあるい石は、水色よりもっと深い色で、色の濃いところや薄いところがあって、ところどころ星空のようにきらきらと光が入った不思議な色をしています。
「私のお父さんもね、昔旅をしていたのよ。いろんな町をめぐって、虹色の街にも行って。いろんな色を見ているうちに偶然、この水色の町に帰ってきてお母さんと再会したの。それで、お父さんはお母さんと一緒に水色の町に住むことを決めたんですって。すてきでしょう。」
石を眺めながら、水色の少女はにっこりと笑いました。
「私が小さい頃にお父さんの宝物箱を開けちゃって、この石を見つけたの。ちょうだいって言ったら最初は渋い顔をしていたのだけれど、ふだんは見えないようにしておくならいいよって言ってくれたの。それでお母さんにネックレスにしてもらったのよ。でもお父さん、この色の名前は教えてくれないの。」
「ふーん、どうしてだろう。」
灰色の男の子は首をひねりました。灰色の少年が黒い男を見上げると、男は黙って目をそらしました。
「わかんない。」
と、水色の少女はため息をつきました。
「この町にはいろんな色の人やものが集まるから、お父さんが話してくれなくても分かるかもしれないと思ったのだけど、この色のことを知っている人にはまだ会ったことないの。」
言いながら水色の少女はネックレスをまた服の中にしまいました。
そのときです。リーンゴーン…リーンゴーン…と時計塔の鐘が鳴りました。灰色の町でも馴染みのある、お昼を知らせる鐘の音です。
「いけない。そろそろ帰らないと、お母さんには怒られちゃう。」
水色の少女は舌を出しました。
「じゃあね。染めたものもいろいろ売ってるから、私のお店来てねっ。」
そう言って手を振った水色の少女は走り去って行きました。同じように手を振って見送った灰色の少年は、はっとしたように灰色の男の子の方に振り向きました。
「僕たちもそろそろ戻ろう。」
「ほんとだっ、もうお昼だね、急ごう。」
灰色の男の子もあわてたようすで走り出そうとします。ちがう方向に行こうとする男の子の首ねっこをつかみ、もと来た道の方へ向かわせながら、黒い男は首をひねりました。
「きみたちがそんなにあわてるの、めずらしいな。」
灰色の男の子はもう走り出しています。あとを追いかけようとする灰色の少年は、ちょっとだけ渋い顔を浮かべます。
「うん、起きてはほしいんだけど、僕たちがいない間に起きてたら…うん。」
そう言って走っていく後ろを、やっぱり首をひねりながら黒い男は追いかけました。
---
「ねえ。どこ行ってたの。」
部屋に戻ると、ふくれっ面の女の子が腕組みをして待っていました。
「私を置いて、どこに行ってたの。」
ふくれっ面だけならまだいいのですが、目がうるんで今にも涙がこぼれそうです。
ヤバい。灰色の子どもたちはオロオロと女の子をなだめます。幼馴染の彼らは、女の子が泣き出してしまうととっても大変なことをよく知っていました。おばさんがそのようすを「あらあら」と笑って眺めます。
「元気そうで、良かった。」
それを知らない黒い男は、子どもたちのいつも通りのやりとりに胸をなでおろしました。男のほっとした笑顔を見て、心配をかけていたとわかった灰色の女の子は、男に「心配かけてごめんなさい」としおらしく言いました。
涙は引っ込みましたが、女の子の機嫌は直りません。灰色の男の子たちにむくれながら文句を言います。男の子たちが一生懸命、女の子の機嫌を直そうとしているのを横目におばさんと話していた黒い男は子どもたちに言いました。
「お昼ごはんを食べたら、買出しに行こう。」




