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水色の町 1

    ぐにゃり


「あっ町だよ。」


 灰色の男の子は後ろを向いて勢いよく言いました。


「うん、そうだな。ほら、町に着いたぞ。」

「んーーー…」


 頷いた黒い男は、背中に向かって声をかけます。男におんぶされた灰色の女の子は、ぐずるような声をあげました。


 赤い町を出発してから何日も歩きましたが、これまでまったく他の町に出会わなかったのです。男はよくあることだと平然としていましたし、暑くも寒くもないちょうど良い気候だったので、夜は男が持っていた毛布でみんなで寝ました。が、そのうち女の子が体調を崩してしまったのです。


 男のリュックと真っ黒い大きなカバンを担いだ灰色の少年も、心配そうに女の子を見上げました。


 三人分の灰色のカバンやらリュックを持った男の子は、走り出しそうになるのを我慢しながらちょっとだけ前を歩きます。そうして、四人はそろって町の門をくぐりました。


 さぁーっと世界に色がついて、無色だった町を彩ります。


「わあ」

「おっと…」


    ぴしゃっ


 子どもたちは思わず歓声を上げました。黒い男もきょろきょろしながら一歩踏み出そうとして、慌てて足を引っ込めました。


 町並みは、灰色の町や赤い町とあまり変わりません。しかし、他の町ではほとんど見かけなかった水路がいくつも町を流れていて、あちこちから湧き出す水が石畳の道をうすくぬらしています。町に広がる水と水路からはじけた水滴が空の色を反射して、町全体がきらきら輝いて見えました。


「すごいね。」

「うん。きれいな色だね。」


 興奮気味に話しかけた男の子に相づちを打ちながら、灰色の少年もお皿のようにまんまるな目で町を見渡しました。


「もしかしてここが水色の町かな。」


 黒い男も足下に注意して歩きながら言いました。


「来たことがあるの。…うわっ」


    びしゃり


「来たことはないけど、話を聞いたことはある。水色の町はけっこう有名なんだ。」


 きょろきょろして水たまりに片足を突っ込んだ灰色の男の子に、黒い男は笑いを堪えながら答えます。


「へえ。」


 どんな話か気になりましたが、灰色の男の子は口を押さえました。こういう話はみんなで聞かないと、あとで灰色の女の子が怒るのです。




 黒い男が言ったとおり、ここは水色の町でした。時計塔で事情を話すと、管理人の水色の女性は快く泊まるところを紹介してくれ、赤い石と水色の町のお金を交換してくれました。


 宿に着き、女の子を寝かせてからご飯を食べると、一気に眠気がやってきました。やっぱり疲れていたのです。そろって舟をこぎ出した子どもたちに苦笑しながら、男は二人をベッドに寝かせました。


 その晩、四人はぐっすり眠りました。




「この子のことは私たちがみとくから、町を見ておいで」


 次の日の朝、まだぐっすりと眠っている女の子の横によっこいしょ、と椅子を置いておばさんが言いました。窓に張りつくようにして外を眺める灰色の男の子たちをにこにこと見ています。


「いえ、でも…」


 黒い男はもごもごとしながら女の子と男の子を交互に見ました。たっぷり眠って元気いっぱいの灰色の男の子たちも、期待に目をきらきらとさせながらも心配そうに女の子の方を見つめました。


「大丈夫、きっと昼頃には起きてくるよ。それまでには戻っておいで。」


 おばさんは女の子のようすを見ながら太鼓判を押しました。確かに、ずいぶん顔色は良くなって気持ち良さそうに眠っています。


「じゃあ…いってきます。よろしくお願いします。」

「お願いします。」


 ぺこりと頭を下げた男にならって、灰色の男の子たちも一緒にぺこりとお辞儀をしました。


 やったーと叫びたくなるのをぐっと堪えて、灰色の男の子たちは黒い男と水色の町へくり出しました。


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