私の母の筑前煮
私の母はあまり料理をしない人です。
正直、オムレツと、豚肉のケチャップ炒め、カレイの素揚げ、マヨネーズサラダ、そして筑前煮。それ以外を作っているところを見た記憶がありません。
家には家政婦さんがいるので、大抵は彼女が作って行ってくれたものを家族3人で頂いていました。
父が自称料理が得意なので、母よりは父の手料理のほうがたくさん記憶に残っています。
私が大学生になってからは、私が帰省した時にはほとんど私が料理をしていました。家政婦さんの仕事がひとつ減りました。
それほど料理をしない人ながら、母の作っていたメニューは今、すべて私も好んで作るものばかりです(あ、カレイの素揚げ除く)
特に母の作る筑前煮は昔から大好きで、なんとか同じ味にしようと努力……はあんまりしなかったけど、盗みました。
その筑前煮の作り方と魅力を紹介しようと思います。
母と私の性格は一部分、とてもよく似ています。
2人ともかなりいい加減で、テキトーで、めんどくさがりな性格をしています。
悪いところを受け継いでしまったなあ、と思っていますが、まぁ、親子の印かな、と。
たとえ実の親子でなかったとしても、私が橋の下で拾われた子だったとしても、一緒に暮らしていれば似るもんだなぁ、と。
さて母の筑前煮は個性的です。
何がかというと、具材をとことんまで小さく刻むのです。
パチンコ玉より少し小さいぐらいの大きさに切り揃えます。
チャーハンの具ぐらいと言っても過言ではありません。
レンコンやタケノコ、ニンジン、シイタケはまだいいとしても、コンニャクや鶏肉といった柔らかいものをその大きさに刻むのは結構大変です。
料理は私のほうが上手な自信があるのですが(ただしテキトーっぷりは大差なし)、母の包丁さばきは凄いです。
テキトーさがいい方向に出て、とにかく早く切り刻んでしまいたいんだと思います。そしてそれが出来る能力が元々備わっている。すべては才能の力という気がします。
私はこの筑前煮を真似するために包丁さばきを練習しまくりましたが、それでもいまだに母の速切りスキルは会得できません。私が刃物が怖いこともあり、まったく比べ物になりません。
キャベツの千切りを一瞬で、しかも葉をとらずに丸ごと一玉刻んでしまうあの神速の技を持ちながら、なんでこの人は料理を滅多にしないんだろう?と首を傾げます。
さて作り方ですが、具材をとことんまで小さく切り刻む以外は普通です。
まずは切った具材をフライパンで炒めます。
熱が通ったら、別の雪平鍋などに移してもいいですが、私はそのままフライパンにだし汁を注ぎます(ちなみに母は大きな雪平鍋で炒め、そのまま注ぎます)。量は具材が3分の2程度浸かるぐらいです。
火にかけながら、砂糖をお好みで入れ(なくても構いません)、醤油と酒を同量ずつ、テキトーに入れます。入れすぎるよりは足りないぐらいがいいです、あとで調整できるので。
煮汁が少なくなって来たかな? というところでみりんを入れます。これも醤油と同量ぐらいでテキトーです。
『酒とみりんは同じものだろ』という人がいますが、私は別のものと思うので、醤油と酒のあとにみりんも入れます。
火にかけてほっといてもいいですが、私は何度も忘れて焦げ焦げにしてしまったので、何度か気をつけて見に行きます。
煮汁が鍋底でぐつぐついうぐらい少なくなったら出来上がりです。
出来上がりをすぐ食べても美味しいですが、なんといっても冷蔵庫で1日寝かせたものが絶品です。みりんがいい具合に固まって、ぷるんぷるんした煮汁が具材にまとわりついて、たまらないです。
さてこの母の筑前煮、小鉢とかに入れると食べにくいです。何しろ切り刻み方が細かいので、お箸ではいっぺんに取れないのです。
正しい食べ方としては、スプーンでごっそり取って、ご飯にかけます。
これだけで昔はご飯3杯行けました(今も?)
味噌汁と漬物(茄子の漬物かたくあん推奨)があればなおよしです。
おかずをつけるならお勧めは断然メンチカツです。
興味があれば、お試しを。