アルテミシアの目覚め
え? レオの子じゃないって言ってたけど……こんな奴が本当の父親なの? そういえばあの女のことをヒス女とかって呼んでた……
「ふん……」
「かかっ! 知ってたって面じゃねえなぁ。単にどうでもいいってかぁ。アンヌの奴も浮かばれねぇな? どうせ死ぬてめぇにはどうでもいいってかぁ? おらよぉ!」
「があっ!」
ああっ! レオの肩に! あいつの剣が!
「いい様だぜぇ。おらぁ、命乞いしてみろや? 命だけは助けてくださいってよぉ!」
「ふっ……君ごとき……空っぽ頭に言葉が通じるとは思えない……な……」
「バカがぁ!」
いやぁ! 反対の肩まで! 血が! レオ! レオが死んじゃう!
「やめてぇぇ!」
「うぜぇんだよ!」
がふっ、私が飛びかかったぐらいで……何の意味もない……痛いよ……
私が……レオみたいに強ければ……
「アル……ごめん……逃げて……」
バカ! レオのバカ! こんな時なのに!
「へっ、逃がすと思うか? おめぇぶっ殺した後ぁあいつもだからよぉ? おめぇの死体の前でぶち犯してやんぜ? よく見りゃきれぇな顔してやがんしよぉ?」
「ぐっ、ゆるさ……「死んでろや!」んっがぁあーー!」
ああ、レオ! レオが死んじゃう! 私が、私が何とかしないと……でも私が使える魔法なんて点火ぐらいで……
いや、それでもいい……一瞬でも隙ができたら……きっとレオが何とかしてくれる……
「ほぉーら、次ぁその足ぃもらうぜぇ?」
させない!
『点火!』
「なっ!? ぎゃああああぁぁぁーー!」
え?
「ぐあっあじじぃぃぃーー!」
え? 何いまの? 点火どころか業火球……
大男が丸焼きになってる……鎧だって溶けてる……
「あぎゃあああああぉぉおがああぁぁぁーー!」
ばたばたと地面をのたうち回ってる……
「アル、もう一回やってごらん?」
「う、うん……」
『点火』
「ひいぎゃああああぁぁぁぁーーーー!」
「あじぃあじっうぉっぎゃあぁぁーー……」
「びじゃあぎょあ………………」
だんだん声が小さくなって……
やがて動かなくなった……
私が……殺した?
帝国の将軍を?
『快癒』
あ、痛みが……暖かい……いやいや!
「バカ! 自分に使いなさいよ! ほら! 早く!」
「痛てて……ごめんねアル。助かったよ。」
「一体どうなってるのよ! 何が! なんで!?」
「それは後で話すよ。まずはここから出よう。」
「そ、そうね……」
あいつは一人って言ってたけど、帝国の将軍がこんな所にいるんだから……きっと他にもたくさん来る。
「きゃあ!」
外に出て驚いた……巨大な魔物が寝そべっていたから……
「ふふっ、やっぱり僕らはついてるね。さ、アル。乗るよ?」
「はあ!? 乗るって!?」
「いいからいいから。」
「わわっ!」
横抱きにされた……レオのくせに……力強い……
『浮身』
うわっ、浮いてる……そして魔物の背に降りた……嘘……
「さぁて……アル。ここに触れてごらん? そして軽く魔力を流してみて?」
「こ、ここ?」
魔物の皮膚……ざらざらしてる……怖い……
魔力を……
「バオオオオオオオォォォォーーーー!」
「きゃあぁぁ!」
「ふふ、大丈夫だって。よし、後は僕が代わるよ。ほら、立てニーズホック! 立って飛べ!」
「グオオーー」
「と、飛んだ!?」
「びっくりした? こいつの名はニーズホック。あのバカのペットだよ。あ、ワイバーンね。」
「わい、バーン?」
「そうそう。ドラゴンに比べたら子猫みたいなもんだけどさ。こうやって空を飛ぶだけなら役に立つ魔物だよね。」
「全然分からない……」
分かるのは……今向かってる方向が西ってことだけ……もう、大丈夫なんだよね? こんなに空飛んでるんだから帝国も襲ってこないよね……ね?