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エピローグ

ワイバーンに乗って空の旅。風が私に向かって吹いてくる。まるで私がいつか見た舞台の主役であるかのように。


「アル。色々と心配かけてごめんね。」


レオが後ろから抱きしめてくれる。背中が暖かい何かで満たされる……


「分からないことだらけだけど……もういいの……もう、何も起こらないよね?」


「そうだね。僕の読みでは帝国の侵攻は止まる。将軍が二人もいなくなった上にかなり消耗してるからね。案外西のギョフノルド帝国にあっさり負けたりするかもね。」


「西……私達が向かってるのもその帝国なの?」


「いや、もっと西。で、少し北かな。ムリーマ山脈の西端を目指しているよ。」


「ムリーマ山脈の西……そこには何て国があるの?」


「うーん……たぶんないよ?」


「え? ないって?」


「人外魔境ってやつかな。大丈夫だよ。アルの魔力があればワイバーンが束になって来たって平気だよ。」


私の魔力……あ、そうだよ! 私の魔力!


「で、レオ? 私に何をしたの? どう考えても私の魔力じゃあ鎧なんか溶かせないよ!」


目を逸らすレオ。もう……こんなところも変わってないのね。何か後ろめたいことがあるとすぐそうやって逃げようとするんだから。


「大丈夫よ。怒ってないから。ちゃんと教えて。ね?」


そのおかげでレオを助けることができたんだし。


「お、怒ってない? 許してくれる?」


「ええ。気にしてないよ。」


中年になってもレオはかわいいなぁ。


「実はね。あの時使った魔法ってね。その、実は……禁術なんだ。」


「きんじゅつ?」


あの大男も何かそんなことを言っていたような。


「そうなんだよ。結構危険な魔法なんだよね。だからつい力を入れすぎちゃったんだ。それで若さだけでなく、僕の魔力までアルにあげちゃったんだよね。だから今のアルは魔将レオと言われた僕と同じぐらい強いよ。」


「ん? 私にレオの魔力が?」


「そうそう。魔法制御とか高速発動とかについてはまだまだ訓練が必要だけどさ。今のアルはラフェストラ帝国随一だった僕と同じ魔力を持ってるってことだね。さすがアルだね!」


よく分からないけど……私は強くなったってことだよね。行き先が人外魔境でもレオを守れるぐらいに。

それより気になるのは……今さらだけど……


「分かったよ。納得した。それよりさ……私はレオ以外の男と手も繋いだことないんだよね……なのにレオは……」


「ち、違う! 違うんだよ! ぼ、僕だって初めてはアルがよかったけど! ち、違うんだよ! 仕方なかったんだよ! ごめん! ごめんって!」


ふふ、あたふたしちゃってかわいい。

男ってそんな奴だったのかな。

私も少しは経験……ううん、してなくてよかった。

私にはレオさえいれば……それでいい。





空を往く二人と一匹の旅路の果てに待つものは……

ワイバーンは嫌そうな顔をしながらも、沈む夕日に向かって飛び続けていた……






















二人は新たな生活の第一歩として、着地した時に最初に見た花『ゼマティ・ロサ・ルゴス』にちなんで家名を『ゼマティス』とした。赤い花びらが咲き乱れており、前途を祝福してくれているように見えたからだ。


魔境での生活は絶えず身の危険に晒されていたがアルテミシアの魔力とレオナルドの知識で難なく過ごせていた。




しかし、それから十五年。


先に逝ったのは、やはりレオナルド……

最期の言葉は……『アル……しばらく来ないでね……』だった。二人の子供もいるのにアルテミシアしか目に入ってないようだった。


その頃のアルテミシアはレオナルドが使えた全ての魔法を使えるようになっており、大魔法使いとしての風格を纏っていた。そしてそれは子供達も同様である。


そんなアルテミシアはいつも子供達に言い聞かせていた……


『いつかこの大陸を統一して、争いのない日常を作るような方が現れるといいわね。その時は私達も協力するわよ』


レオナルドの墓前に咲いた一輪の花の前で。






それから三百年……

一向に争いをやめない戦乱の時代にさらなる脅威が現れた。

遥か北方より現れた『魔王』を名乗る怪異により、南の国々まで滅亡の危機に瀕していた。人類より大きく、肉体も魔力も強く、数も多い異形の魔物達。誰もが絶望する中でどこからともなく一人の若者が現れた。


イチローと名乗る若者は四人の仲間と共に見事魔王の討伐に成功。その上、バラバラだった各国をまとめることにも成功。再び昔の統一王朝のように強い国を作ろうと各国の王達も協力を惜しまなかったのだ。


そして初代国王となったのがイチロー。紫を異常に好むことから『勇者ムラサキ・イチロー』と呼ばれた。


こうして生まれた国が『ローランド王国』である。なおローランドとは、記憶をなくした若き日のイチローを助け、我が子のように面倒を見た老婆の名前である。


ローランド王国の物語はすでに始まっている……

そこには、ローランド王家の魔法指南役として活躍し、時には魔道貴族として恐れられるゼマティスの子孫の姿がある。


アルとレオの子孫は魔王討伐の出番はなかったものの、統一国家ローランド王国の重鎮として末永く力を尽くすことだろう。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

これにてアルテミシアとレオナルドの物語はお終いです。

たくさんの感想をいただきましてありがとうございました。


★★★★★をいただけるとなお嬉しいです!


この作品は自作品『異世界金融』の主人公カースの母親筋の祖先の成り立ちとして書きました。


もし、ご興味が湧くようでしたら下のバナーからローランド王国の物語、異世界金融もお読みいただければ幸いです。

主人公とヒロインだけでなく、様々な愛の形が登場することでしょう。


また、どこかでお目にかかれる日のあらんことを。


2021/4/28 暮伊豆

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同じ大陸での出来事を書いております。
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炎姫と剣奴

― 新着の感想 ―
[良い点]  すっごく素敵なお話でした!  アルとレオの純愛に感動いたしました。〝お互いが、自分より相手が大切〟な関係って、最高ですよね……。 [一言]  物語全体から〝歴史の風〟が感じられるのも、良…
[良い点]  壮大な物語のサブストーリーですね。  寿命を分け与える発想が不惑のテーマに沿っていて面白かったです。 [一言]  読ませて頂きありがとうございました
[良い点] 女性側のモヤモヤに焦る男性 [一言] スピンオフですきなテーマは遥かな過去と遥かな未来。 こんな大事件なのに歴史に残っていないと言うのがとても良かった!
感想一覧
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