一族の仇
閃光と粉塵で視界が遮られていたこいつが次に目にした時には、山頂や死体の半数が消失し、焼け焦げた父達の亡骸が転がっていた。その中心に憎きあいつの姿が。
世界誕生の頃より存在する種族・エンシェントドラゴンは、たった1体の同族の反逆によって、新年を待たずして絶滅寸前にまで陥ってしまった。
「グハハハハ! こんな呆気ねぇ死に方をするたぁ、無様だなテムジン!」
父達を殺して高笑いをするガイムを見て、こいつは悔しさと怒りから唸り声を上げる。
「ん? へー、まだ生きてやがってたのか。クソガキ。チビすぎて見えてなかったわ」
ガイムはそう言うと、こちらに向かって近付いてくる。殺されると思ったこいつは、恐怖で震えながらも、自己防衛と仇を討つために戦おうと睨みつけた。
だが、ガイムは、そんな小さな戦士を無視して、素通りしていった。やり合うつもりでいたこいつは、理解できずに振り向く。
「……なんだぁ? もしかして、相手をしてもらえると思ってたのか?」
ガイムにそう聞かれて、こいつは肯定する。
「図に乗んな。てめぇみてぇなガキ、殺したところで何の自慢にもなんねぇ。遊んでやるだけ時間の無駄だ。わかったらそこで一生泣いてろ。殺す価値もねぇ蛇が」
それだけ言うと、ガイムは空の彼方へと飛び立っていった。
親を、兄を、親戚を惨殺され、ドラゴンとして徹底抗戦しようとする自分を『蛇』と嘲り、去って行った仇敵・ガイム。その姿が見えなくなると、様々な感情に苛まれたこいつは、天を仰いで咆哮した。それが怒りでも悲しみでも憎しみでも、返事をしてくれる仲間はいない。木霊だけがこいつの虚しい咆哮を繰り返すだけだった。
それでも、落ち込んではいられない。敵はわかっている。やるべきこともわかってる。けど、仇を討とうにも今の自分にはそれを成す力がない。自分の弱さを改めて知ったこいつは、まずは己を鍛えるべく武者修行の旅に出ることにした…………




