古龍が滅びた日
しかし、勇猛果敢に戦う彼らを待っていたのは、惨劇という言葉すら生温いと感じさせるほど凄惨な地獄絵図だった。
ガイムは四方八方から飛んでくる攻撃をものともせず、1体ずつ虫ケラのように殺していく。そのターゲットは大人だけじゃない。戦闘開始と同時に逃げ惑ったり、ビクビク震えていた幼体も、大半が巻き添えをくらう形で次々と餌食になっていった。
そうして霊峰ドラゴの頂上が鮮血と死体で埋め尽くされた頃には、生き残った幼体は皆、山を下って逃げ去り、残ったのは満身創痍のテムジンとその子供の3体だけとなった。
「おーおー、頑張るねぇ。てめぇの体を張ってガキ共を守る。まさに族長の鑑だよ。おめぇも、おめぇのガキも」
「ぐっ……ガイム……」
「だが、それだけだ。くだらねぇ使命感と正義感を持ったせいで、てめぇらは無駄に命を落とすことになる。それを身を以て知るんだな」
ガイムはそう言うと、闇が混ざったことで黒くなった電気を帯電しだした。あれが放たれれば全滅しかねない。直感的にそう思ったロイは、幼いこいつを守るようにサッと前に立ち、
「父さん」
「あぁ。今こそ命の炎を燃やす時だ」
「はい」
とだけ言って、全身にありったけのエネルギーを纏った。これで奴を倒せるとは思えない。せめてガイムの攻撃を相殺し、父の魔法を詠唱する時間さえ稼げれば……兄として、族長の息子として、ロイはそういったことを覚悟していたに違いない。
「うおーっ!」
ロイは咆哮と共に、ガイムに特攻をかける。決死の突撃からの噛みつきをくらえば、いくら魔王の力を得た奴でも怯むはず。
そう思い、食らいついたが、電気の勢いは収まるどころか増していき、ガイム自身も首を噛まれてるというのに、平然としている。
「どうした? おい。効きゃしねぇぞ? 甘噛みのつもりか?」
「くっ!」
「てめぇの牙は所詮その程度ってこった。噛み砕くっつーのはな……こうやるんだ。【ガイアイーター】!」
ガイムがそう言った直後、ロイの足下に岩でできたドラゴンの顎のようなものが形成され、逃げる間もなくそれに挟まれた彼の体は、粉々に砕け散った。
大好きだった兄が肉片に変えられる様を目撃したこいつは、ショックと悲しみから泣き叫ぶ。
その傍らでテムジンは唯一残った息子を守り、死んでいった者達の仇を討とうと、
「光の星々よ。創世の光となり、邪を抹……」
と、必死に詠唱した。が、
「残念。時間切れだ。【ヘルサンダー】!」
無情にも、ガイムの方が一足早かった。ずっと貯め続けていた電気が、黒い雷となって爆発的に周囲に放射され、衝撃波と共に山を抉っていく。
破滅の雷光が迫る中、テムジンはせめて息子だけでもと、こいつを突き飛ばし、我が身を盾にした。
「……すまん息子よ。どうか生き……」
それが父の最後の言葉であり、息子に見せた最後の後ろ姿だった。その声も背中も、最後まで息子の目や耳に届くことはなく、雷にかき消されてしまう……
テムジンとロイとパッフィーのステータスに関しては、まともな戦闘シーンも無いということで、ここでは見送らせていただきます。




