闇に堕ちた古龍
そんな一族きっての鼻つまみ者が姿を見せたのだから、そりゃそうもなる。
「……何しに来たんですか? 兄者」
「何しにって、決まってんじゃねぇか。てめぇらをぶち殺しに来たんだよ」
自分の自業自得のせいで追放されたくせに、逆恨みで復讐しようとする。あの決闘から200年以上は経ってるというのに、反省も進歩もしていないガイムに、ドラゴン達は心から軽蔑する。
なのに、ガイムは全く立腹していない。それどころか、余裕の表情すら浮かべている。
「まぁそう邪険にすんな。こっちも身内とはいえ手ぶらじゃ悪ぃと思ってよ、手土産を持ってきたんだからよ」
「手土産?」
「あぁ。ほらよ」
そう言って、奴が尻尾に巻きつけて見せてきたのは、複数の属性攻撃をくらったせいで、見るも無惨な姿となったパッフィーの死体。いくら温和な性格とはいえ、ガイムの危険性を知っていたパッフィーがこうも容易く殺された現実に、実の子であるこいつはショックを受け、ロイやテムジン達は怒りを露わにする。
「母さんっ!」
「ガイム……貴様ぁっ!」
「グハハ! そうだテムジン! もっと怒れ! 本気のお前を殺さなきゃ、俺も強くなった意味がねぇ!」
まるで楽しんでるかのようにそう言うガイムに、テムジンは何種類もの高位魔法を無詠唱で放った。嵐のような魔法攻撃の一斉射をまともにくらい、ガイムはそこそこの手傷を負ったが、己の強さに自信でもあるのか、態度を崩さない。
「やるねぇ。流石は族長だ。だがな、てめぇらが平和ボケしてる間、こっちもボケーッとしてたわけじゃねぇんだ。その証拠を今から見せてやる」
そう言うとガイムは、乱暴にパッフィーの亡骸を投げ捨てて、自身の気を高めた。そのあまりにも異質な気に、ドラゴン達は一様に狼狽する。
「この気は……! ガイム、まさか!?」
「へへっ、ご名答。魔王の力って奴さ」
「気でも触れたか!? エンシェントドラゴンが魔王に与するなど!」
「知らねぇな! んな化石みてぇな古いしきたり。それに、魔王も精霊の主も関係ねぇ。歯向かう奴は全員ぶっ倒して、俺が支配者になってやる。ドラゴンの王・龍王としてなぁっ!」
そう豪語すると同時に、高まった気が更に膨れ上がり、ガイムの体を漆黒に染め上げ、禍々しい姿へと変えていった。
その姿は、最早こいつらがよく知る同族の姿ではない。闇に染まり、変容したエンシェントドラゴン。エンシェントダークドラゴンに、そいつは変異したんだ。
一片の良心まで捨てたことで得た力からくる強烈なプレッシャーと悍ましい姿。それを前にして戦慄するかつての同族達を見て、ガイムは優越感に浸る。
「いいねぇ。そのツラだ。そのツラをずっと見たかったんだよ。さぁて、見てぇもんも見れたし、そろそろ皆殺しにするか。こいよ。てめぇらの血肉で年越しを祝ってやる」
挑発的な態度をとるガイムに、ロイやテムジン達は闘志を奮い立たせて一斉に攻撃する。ラグナヴェルトと幼い子供達の命を守るために。




