エンシェントドラゴンの役割
ドラゴンのガキいわく、エンシェントドラゴンは太古から存在する種族であり、成体になると人間の言葉も話せるようになることから高い知能を有する魔物として知られている。
そのため、ある事情から普段は定住地を持たずに、旅をしながら生活をしてるんだそうだ。もちろんそれは、本家の血筋を引く族長一族であるこいつも例外ではない。
そんなこいつの家族は全部で4体。
父はエンシェントドラゴンの上位種・エンシェントロードドラゴンであり、全てのエンシェントドラゴンを束ねる族長でもあるテムジン。
母はエンシェントドラゴン随一の魔法の才能を持ちつつも、誰よりも穏やかな気性をしているパッフィー。
そして、次代族長確実と言われるほど実力を誇り、勇猛さと優しさも兼ね備えた兄・ロイ。
彼らは族長一族ということを差し引いても、全てのドラゴンから一目置かれる一族であり、由緒正しい家柄に生まれたこいつは、落ちこぼれとして劣等感やプレッシャーを感じつつも、一族を誇らしく思い、分け隔てなく注がれる愛情の中で、幸せに暮らしていた。
ところが、約1ヶ月前の年末。こいつの幸せは何の前触れもなく崩壊した。
この日は、年末恒例の会合ということもあり、霊峰ドラゴにはテムジンを始め、多くのエンシェントドラゴンが集まっていた。
会合は滞りなく進み、あとは麓にいるパッフィーが運んでくる獲物で、年越しを盛大に祝うだけ。年に1度の宴に、こいつら幼体のドラゴンはもちろん、大人達も楽しみにしていたことだろう。
そこに1体、和やかな空気に水を差す奴が乱入してきた。
「よう。久しぶりだな。テムジン」
そいつの名はガイム。テムジンの兄貴、すなわちこいつからすりゃ伯父にあたる隻眼のエンシェントドラゴンだ。だが、誰一人として奴を歓迎しようとしない。そのわけは、ガイムとテムジン、2匹の兄弟の確執があった。
そもそも、エンシェントドラゴンが今のような生活しているのは、自分達のような高い知能を持つ魔物が、世界に与える影響を恐れているからであり、彼らは中立の立場として世界情勢を見守るために旅をしている。
そんな生活に、プライドが高く己の力を過信していたガイムは嫌気が差し、やがて『エンシェントドラゴンこそ至高の生物』と考えるようになっただけでなく、自分が族長になった暁には、エンシェントドラゴンによる世界征服をすると言い出した。
これに根っからの穏健派であるテムジンが、真っ向から反対。口論の末、族長の座を賭けた決闘にまで発展した。
死闘の末、勝利したのはテムジン。右目を潰され、完膚なきまでに敗北したガイムは、弟からの温情で命こそ奪われなかったものの、その危険すぎる思想から、一族を追放されることになった。




