ドラゴンとの対話
「ん、んー……うん? ここは?」
沼野での激闘から6時間半後。長く険しかったアクアティック沼野を抜けた先の水辺で野宿の準備をしていると、ずっと気を失っていたドラゴンが目を覚ました。やはりというべきか、人の姿になると人間の言葉を喋れるようになっている。
「よう。気が付いたか」
「お前、あん時の……って、なんだこりゃ!?」
俺を認識したドラゴンは、その流れで自分の体を見たことで変化に気付き、目を丸くした。まぁ、寝て起きて違う生き物になってたら、誰だってそうなるわな。
「それも含めて説明してやっから、まずは落ち着け」
パニクってるそいつにそう言い聞かせて、ドラゴンの気を静めた俺は、自己紹介と勇者であることを明かしてから、順を追って説明した。
姿を変えてしまったのは不可抗力であり、悪気はなかったこと。
ヒドラ病に関しては無事完治したが、額の×字傷だけは強い思念を受けた勇者の剣の一撃だったせいか、どうしても治らなかったこと。
今はギルディアへ向かう途中であり、一応さっきの戦闘で念願の【ワープ】は覚えたが、1回行ったことのある場所以外は行けないというお決まりの制約があったため、その手前にあるマキナ砂漠という砂漠をどうしても越えねばならず、そこに足を踏み入れる前に、ここで体を休めることになったこと。
等々、謝罪も交えて懇切丁寧に。
おかげで、ドラゴンのガキは冷静さを取り戻し、状況を理解できたようだ。
「……まぁ、お前としてはさっさと元の姿に戻りてぇだろうし、人間なんかと一緒に行きたくねぇと思ってるかもしれねぇが、せめてこの砂漠を越えるまでは我慢してくれ。さっきの戦闘で脇差が使い物にならなくなった俺と、病み上がりのお前がこんなとこで解散なんかしたら、それこそ死にに行くようなもんだ。それを防ぐためにも、な」
俺がこんなガキに配慮して、頼んでるのには理由がある。
ドラゴンの性格なんてのは、どこの世界でもだいたい同じだ。プライドが高くて理知的なくせに、戦闘狂の節がある。俺の世界のドラゴンも確固たる信念や誇りを持ってて、それを傷付けられると怒り狂うし、なんでも力で解決しようとする。
実際、俺も学生時代、そんな感じのドラゴンのチンピラにからまれた経験があるし、『世界の半分をやろう』なんて抜かすラスボスもそういう点でいえば同じだ。おそらくだが、ドラゴンほど交渉相手として難儀な生物はいないだろう。
ましてや相手はガキとはいえ、エンシェントドラゴン。ご大層な名前なだけに、プライドの高さや頭の固さも古代レベルかもしれねぇ以上、『嫌でもついてこい』とは安易に言えない。別れるにしても、円満に別れられるようにしとかねぇと。
と、警戒&気遣いをしていたが、
「わかった。じゃあこれからは、おいらがアニキの背中を守ってやる。それでいいんだよな?」
奴は、こっちが気を揉んでたのがバカらしくなるぐらい即決した。しかもいきなり『アニキ』と呼ぶその口ぶりからして、正式に仲間になる気があるようだ。
これには、俺も拍子抜けして、
「お、おう」
としか、答えられなかったし、ずっと料理をしながら話を聞いていたまーちゃんも耳を疑い、
「本当にいいの?」
と、改めて確認するほど、驚いた様子だった。
「おう! アニキはおいらの命の恩人だし、あいつを倒すためにも、おいらを打ち負かしたアニキについてった方が、もっと強くなれると思う。だから、そっちが嫌だって言ってもついてくぞ」
強く? それに、あいつ? こいつは思った以上に訳ありのようだな。
ということで、気になった俺は、こいつの口からそのあたりの事情を詳しく聞くことにした。
ドラゴンの少年が仲間になった。
脇差を失った。
それにより、物理攻撃力が7、命中が2下がった。




