魔物を変える力
と、悔しさを滲ませたその時、ドラゴンの体が発光し、鱗に付着していた血が霧散した。
死んだと思っていたドラゴンの身に突然起こった異変。俺とまーちゃんは訳がわからず当惑するが、そんなリアクションなど無視して、光は広場の大半を覆うほど拡大していく。
その中心では、ドラゴンの体から赤く煌めく美しい鱗が花びらのように抜け落ちていき、それに合わせて、サイズが見る見るうちに小さくなっていく。
やがて、ドラゴンの影すら見えなくなると、光もスーッと消えていき、見慣れた沼地の景色へと戻っていった。
しかし、そこにエンシェントドラゴンの幼体はいない。代わりにいたのは、同じような尻尾と角と翼を生やし、燃えるような赤髪とドラゴン特有の手足をしてはいるが、屈強さなど微塵もない華奢な体をした小学校低学年ぐらいのボウズだけだった。
額に×字の傷がついてることや、状況から察するに、素っ裸で倒れてるこいつが、さっきのドラゴンだと考えるのが自然なんだろうが、そうだとしても、あまりにもぶっ飛んだ展開すぎて、現実味や実感が湧かない。
「どういうこった? これは……」
俺は戸惑いからそう漏らす。
一方で、まーちゃんは何かを思い出したらしく、驚きつつも納得したような顔をしている。
「噂は本当だったんですね」
「噂?」
「はい。私も祖父から聞かされただけなので、はっきりとは言えませんが、勇者には稀に倒した魔物を人に変え、手懐ける力があるそうなんです。歴代の勇者も、そうして魔物を仲間に加えていたらしく、特に最初に魔王を討った勇者と先代勇者は、多くの魔物を手懐けていたという逸話があります」
マジか。魔物を仲間にすんのはベタ中のベタだし、そういうのは個人的にウェルカムなんだけど、まさか仲間になる魔物が人になるなんて、思ってもみなかった。
って、勇者の特性に軽くカルチャーショックを受けていると、ドラゴンだったガキが、
「ん~……ムニャムニャ」
と言いながら、反対側へと寝返りを打った。ったく、あんだけ派手に暴れてたくせに、間の抜けた顔して寝やがって。まぁでも、それだけグッスリ眠れるってことは、薬の効果はあったってことだよな。とりあえず一命は取り留めたとわかった俺は、心から安堵する。




